夏の学生アルバイトにアイスを配りたい
夏休みに入り、トラックドライバーの夫が働く現場にも学生アルバイトが増え、一気ににぎやかになったそうです。
「これ積んでください!」
「次、これです!」
「これもお願いします!」
元気いっぱいの学生たちは、段取りなどおかまいなし。どんどん荷物をフォークリフトで運んできます。
いっぽう夫は、荷物を降ろす順番を考えながら、「ここに置いて、次はこれを積んで…」と頭の中でパズルを組み立てています。
「まてまて、オレのペースがあるんや」
そう言いながら、必死に対応していたそうです。
人手が増えるのは本当にありがたいこと。でも、積み込みにはドライバーそれぞれの"流儀"があります。
何度説明しても、学生たちは日焼けした顔で走り回るばかり。
その様子を見た夫は、ついにあきらめました。
「もう、好きにおしや」
夫のこういうところ、私は尊敬しています。
「今は言っても伝わらんな」と思えば、無理に注意しません。相手が落ち着いてから、話せるタイミングを待つ。ちゃんと相手を見ているのです。
昭和気質の厳しい人も少なくない運送業の現場で、夫は怒鳴るよりあきらめ顔で笑うタイプ。
そんな雰囲気だからでしょうか。いつの間にか学生アルバイトたちは夫の名前を覚え、気軽に話しかけてくるようになりました。
「オレより、ええの着とるやんか」
夫が指さしたのは、肩甲骨あたりにファンが付いた最新型の空調服。
「2万円近くしたっす!」
学生は誇らしげに笑って答えます。
積み込み作業は、炎天下の中でトラックの排気ガスを浴びながら行う過酷な仕事。荷物を運ぶだけではなく、「どう積めば効率よく荷下ろしできるか」まで考えるのも、ドライバーの大切な役目です。
そんな暑さの中でかわす学生たちとの何気ない会話は、夫にとって束の間の息抜きになっているのかもしれません。
「夫の仕事を手伝ってくれてありがとう。そして、話し相手になってくれてありがとう」
そう思わずにはいられません。
もし現場に行ってもいいのなら、柱の陰から学生たちにアイスを配って歩きたいくらいです。
もっとも、そんなことをしたら、「仕事の邪魔するな!」と夫に真っ先に怒鳴られる気しかしませんが。
どんな味のアイスが好きですかねぇ、今どきの子は。
