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ハンバードハンバード。よさが伝わらない夫

日曜日の午後、私はハンバート ハンバートを聴いていました。テレビモニターには、THE FIRST TAKEで披露された「虎」。あのやわらかな歌声とピアノの響きを、大画面で味わう平和な時間です。

ところが、ソファに寝転がっていた夫が、ぽつりとひとこと。
「なんで、これが聴きたいと思うん? “死んだ魚”とか言うて、どこがええん?」
…その瞬間、私の中のおだやかな湖に、石が投げ込まれました。

うっとりと聴き入っていた私にとって、その寝起きガラガラ声は“雑音”でしかありません。思わず夫の背中をバシッと叩き、「朝ドラの主題歌もやってるし、去年は紅白にも出たんだよ」と、やや早口に説明します。

返ってきたのは、「そーなん」の一言だけ。
まったく興味なし。みごとに響いていません。
本当は、そんな“実績”ではなく、もっと別の言葉で伝えたかったのです。彼らの音楽が持つ、あの世界観や情景を。

けれど頭に思い浮かぶのは、「『徹子の部屋』でも話題になった」とか、「又吉がMVに出ている」とか、どこかで見聞きした浅い情報ばかり。自分の言葉で語れないもどかしさに、すこし情けなくなりました。

私が好きなのは、あの二人の“会話”です。
まるで寝る前に交わすような、山もオチもない、ぽつりぽつりとしたやりとり。何も起きない、でもそれがいい。危険なことはいっさい起こりません、というあの安心感。
二人のとなりで、ただいっしょに過ごしているような感覚になるのです。

THE FIRST TAKEでも、歌の前の何気ない会話につい耳を奪われてしまいます。何度見ても、耳だけで聴いても、「ああ、そうだなあ」と、ふっと心がほどける瞬間があります。
もしこんな人たちが家族だったら…
きっと穏やかな毎日なのだろうな、と想像します。

とはいえ、お子さんは3人。現実はきっと、そんなにのんびりばかりではないはずです。それでも、あの奥様がしっかりと舵を取り、だんな様をふくめて“子どもが4人”のような、にぎやかで愛おしい日常なのかもしれません。

日々の暮らしを、そのままエッセイのように歌うハンバート ハンバート。
もしかして夫にも刺さるのでは…そんな淡い期待もありました。けれど、どうやら今回は届かなかったようです。
好きなものを、自分の言葉で伝える難しさ。
そして、伝わらないもどかしさがありました。

そんな私の横で、リモコンを手にした夫は、すぐさま野球中継に切り替えます。
それぞれが好きなものを楽しむ休日。わが家は、これでいいのかもしれません。

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