ランニング中に出会った素敵な夫妻の話を聞いて欲しい
今日伝えたいことはたったひとつ。
ランニング中にすれ違う人に挨拶をすると、いいことがあるかもしれないよ。
そんな単純で大して深くもないことを
私の体験談を踏まえて紹介したいと思う。
「ランニングと歌声の記憶」
私は毎朝、家の近くの海沿いをランニングしている。
静かな朝の空気の中を、私の足音と波音のアンサンブルがリズムを刻む。
そんな中、いつも仲良くウォーキングしている老夫婦がいる。
ご主人は高田純次似の陽気なおじさん。
そして笑顔が素敵な宮崎美子似の奥様だ。
私は今までランニング中にすれ違う人に挨拶などしたことがなかった。
しかし、ある日奥様がにこやかに声を掛けてくれた。
「おはようございます。いつも頑張ってますね。」
それがきっかけで毎日挨拶を交わすようになった。
あまりコミュ力が高くない僕は、挨拶に天気の話など短い会話を加えるだけだったが、おふたりの明るい性格もあって、少しずつ距離が縮まっていった。
ある朝、ご主人が言った。
「今度の大会は出るの?」
ん?大会?
この地域でマラソンはしばらくないはずだし、なんのことだろう。
「え?あんた◯◯んとこの息子じゃないんか?」
いやちがーーーーーーーう!!!!
人違いだったんかい/(^o^)\なんてこったい/(^o^)\
しかもよくよく話を聞いているとその息子とやらは高校生というではないか。
私は正真正銘30代の既婚男性である。
こんなに若くみられるのなら、ランニングしながらラウワンに入れば学割が使えるのかもしれない。
それにしても今までの会話が全て人違いのまま進んでいたとは、
アンジャッシュもびっくりのすれ違いっぷりである。
しかしそれがふたりとの仲がぐんっと縮まった瞬間であった。
それからしばらくしてこう言われた。
「よかったら、うち近いから遊びに来なよ。」
正直なところ、僕は迷った。
これが絶世の美女であれば迷わずついていくのだが現実にはそんなムフフな話はない。
しかも相手は毎朝会うとはいえ、名字しか知らないようなふたりである。
知らない人の家にはついて行ってはいけないと小学校でも習ったし…
むかし旧友の家に遊びに行ったら宗教の勧誘を受けたこともあるし…
ただ、思考とは逆に、僕は自然に頷いていたのである。
彼らの家は、大きな庭のある昔ながらの一軒家だった。
靴を脱ぐと、祖母の家に遊びに来たかのような安心感がある。
まるで時間がゆっくり流れているようだった。
入れてくれたお茶を飲みながらふとリビングの片隅に目線をやると、ある機械があった。
それは大きな黒くて丸い球体。
…だったらGANTZやないかい。
どっからどう見ても、カラオケの機械であった。
「コロナで飲み会ができないから、買ったんよ。」
家でカラオケをするのは、初めての経験だった。
最初は照れくさかったが、ふたりが盛り上げてくれたので気持ちよく歌えた。
ふたりへの感謝を込めて。マキシマムザホルモンの「ぶっ生き返す」を。
…そろそろしょうもないボケはこの辺にしないと読者が離脱しそうである。
読んでくれている皆様、本当にありがとう。
奥様は僕がマラソンをするからと、
ZARDの「負けないで」をよく歌ってくれる。
プロ並みと言うわけではないがその歌声は本当に温かく、
圧力鍋で煮込んだ大根のように心に深く染み込んできた。
それから何度か、僕はふたりの家に寄るようになった。
ふたりの家での何気ない会話、歌、特別な時間。
あの時挨拶をしていなかったら、こんな幸せで穏やかな時間はなかっただろう。
だから私は、ランニングですれ違う人には必ず挨拶をしている。
私は玄関の前で、そっと深呼吸をした。
そして目を瞑って奥さんの歌う「負けないで」を脳内再生する。
よし、今日もランニング頑張ろう。
いつか絶世の美女とカラオケに行くような展開があると信じて…
