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猫ちゃんを可愛がってたらうちの彼氏が嫉妬したらしい。

保:わぁぁ……! 〇〇くん見て! あそこにも、ここにも猫ちゃんおる!めっちゃ可愛い〜っ!



年上彼女である保乃に連れられてやってきたのは、前々から彼女が「絶対行きたい!」と熱望していた新しくできた猫カフェだった。



店内に入るなり、保乃のテンションは最高潮。



普段は大人っぽくて綺麗なお姉さんなのに、こういう無邪気なところは本当に可愛い。



保:んふふ〜、おいでー。あ、ごはんにする?はい、あーんっ。



保乃が猫用のおやつを取り出すと、瞬く間に猫たちが彼女の周りに群がっていく。


膝の上に乗ってくる猫。背中にすりすりする猫。



……なんだアイツら、めっちゃ距離近いな。


俺の彼女だぞ、そこを退くのだ。



保:あははっ、くすぐったいってばぁ〜。



猫たちに囲まれ、とろけるような笑顔で撫で回す保乃。


幸せそうなのは何よりだが、俺はポツンと取り残されてしまった。


その後も保乃の猫への愛情表現は止まらない。


お店のイベントである、猫ちゃんの爪切り体験コーナーでも、保乃は率先して参加していた。



保:よしよし、怖くないよ〜。ちょっとだけパチンってするだけやからね〜。



保乃は一匹の小さな猫を自分の胸元にギュッと抱き寄せ、優しく声をかけながら爪切りバサミを構える。


……おい、その胸元は俺の特等席のはずなんだが。



『ミャァ〜……』


保:爪切り、やだよね〜。そうだよね〜。



猫が少し嫌がるような声を出しても、保乃は嫌な顔一つせず、母性たっぷりの声でなだめる。


そして無事に爪切りが終わると、猫の頭を両手で包み込んで、自分の頬をすりすりと思い切り擦り付けた。



保:あー!えらいね〜!ヨシヨシっ。よく我慢できたねぇ〜、んちゅっ♡


〇:……。



おいおいおい、嘘だろ。キスまで...。


しかも、あんなに優しく褒めちぎって、頭を撫で回して。



普段、俺が少し甘えようとしても、


保:も〜、〇〇くんはほんまに子供なんやから


と軽くあしらってくるくせに。



あの猫、完全に俺より良い扱い受けてないか?



保:〇〇くんもやってみる?すっごい癒されるで!


〇:……いや、俺は見てるだけでいい。


保:えー? もったいない。ほら猫ちゃん、〇〇くんにもご挨拶して?


『ニャン』


保:んぁ〜...!可愛いっ!!





俺の足元にすり寄ってくる猫。


確かに可愛い。可愛いのは認めるが……。


保乃にこれでもかと甘やかされ、至福の表情を浮かべているこの小さな子猫に対して、俺の中で黒い感情が渦巻いているのを、俺自身どうすることもできなかった。



帰り道。



保:あ〜っ、めっちゃ楽しかったなぁ!


〇:……うん。そうだね。


保:あの子猫、ほんまに可愛かったなぁ〜。ほのの膝の上でスヤスヤ寝ちゃってさぁ。


保:あー、そのまま連れて帰りたかったわ!


〇:……そっか。良かったね。


保:……ん? 〇〇くん、どしたん?さっきから返事そっけないで?


〇:別に。普通だけど。


保:そう?ならええんやけど……。あ、爪切りした子もお利口さんでさぁ……。



保乃のテンションはずっと高いままだったが、俺は生返事を返すだけで、歩くスピードも自然と遅くなっていた。



家に着いてからも、俺のテンションは上がらないままだった。


リビングのソファにドサッと座り込み、無言でテレビをつける。



保:お茶淹れるなー。……って、〇〇くん、ほんまにどうしたん?


〇:だから、なんでもないって。


保:嘘やん。お店出た時からずっと元気ないやんか。体調しんどいん?


〇:しんどくない。


保:ほな、なんでそんなにムスッとしてるん?ほの、なんか怒らせるようなことした?





保乃が心配そうな顔でソファの前にしゃがみ込み、下から俺の顔を覗き込んでくる。


その優しくて大人っぽい顔を見ると、俺の中で燻っていたモヤモヤが思わず口からこぼれてしまった。



〇:……別に怒ってないけど。ただ、猫ばっかり構っててズルいなって思っただけ。


保:……え?ズルい?


〇:だって……あんなに撫でて。ヨシヨシして。


〇:おまけに、あんなに顔近づけてキスまでしてさ……。俺には最近そんなに甘やかしてくれないくせに。


保:っ……!



俺の言葉を聞いた瞬間、保乃は目を丸くして、それから肩を震わせて堪えきれないように笑い出した。


保:もしかして、〇〇くん……猫ちゃんにヤキモチ妬いてたん!?


〇:っ、妬いてない!


保:ふーん、嫉妬してたんや。


〇:......違うし、


保:ほのが猫ちゃん触ってる時、どう思った?


〇:......羨ましかった。


保:それを嫉妬って言うねん。





ニヤニヤと意地悪な笑みを浮かべ、保乃が俺の隣にピタリと座ってきた。


顔を真っ赤にしてそっぽを向く俺を見て、保乃は愛おしそうに目を細めた。



保:もー、〇〇くんはほんまに素直やなくて可愛いんやから。



そう言うと、保乃は少し体勢を崩して、ポンポンと自分の膝を叩いた。



保:おいで?





両手をふわりと広げ、とびきり甘い、まるでお母さんのような優しい声で囁いた。  



〇:っ……。いや、流石にそれは……恥ずかしいし。


保:えー?さっきまで『猫ちゃんばっかりズルイ』って拗ねてたくせに。


保:ほら、ほのの膝の上、空いてるで?遠慮せんと甘えたらええのに。


〇:……。



保乃の底なしに甘い笑顔と、広げられた腕。


それに抗えるわけもなく、俺は恐る恐る体を傾け……保乃の柔らかい太ももの上にコロンと頭を乗せた。



保:んふふ、素直でえらいえらい。


〇:……なんか、子供扱いされてるみたいで嫌だ。


保:ええやんか。今日は特別やで。



保乃の温かい手が、俺の髪を優しく梳き始める。


さっき猫カフェで猫にしていたのと同じ、いや、それ以上に丁寧で、愛情たっぷりの手つきだった。



保:〇〇くん、いつもほののこと大事にしてくれて、えらいえらい!ヨシヨシっ。


〇:ちょ、言い方……完全に猫に対するやつじゃん……っ。



文句を言いつつも、保乃から漂う甘い香りと、頭を撫でられる心地よさに、俺の顔は自然と緩んでしまう。



保:あかん……〇〇くん、可愛すぎ……。





俺が素直に甘え始めたことで、保乃から限界突破した母性が溢れ出しているのが、下から見上げているだけでも分かった。


彼女は俺の頭を両手でギュッと包み込むと、そのまま俺のおでこや頬に、チュッ、チュッと何度も何度も柔らかいキスを落としてくる。



〇:んっ……ちょ、保乃、くすぐったいって……。


保:ええやん、お利口さんへのご褒美!猫ちゃんより、嫉妬して甘えてくる〇〇くんの方が可愛いわっ!


〇:……っ。


保:もー、可愛すぎて食べちゃいたいくらい好き!


〇:……俺も、保乃のこと好きだから。


保:んふふっ、知ってる。


保:……これからはほのがずーっと〇〇くんのこと一番ヨシヨシして甘やかしたるからな?


保:覚悟しときや?

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