「せーのっ」とお花をくれた誕生日
「せーのっ
お誕生日、おめでとうー!!」
玄関に行くと、
そこにはお花を持った息子と、
友だちの女の子が立っていた。
----------
その日は、わたしの誕生日。
朝、夫が息子に伝えてくれていた。
「今日はママの誕生日だよ」
でも、息子は何も言わなかった。
自分の誕生日じゃないから、
そんなものだと思った。
息子が学校に行ったあと、
娘はゆっくり起きてきた。
幼稚園はお休み。
娘は、カレンダーを見て言った。
「きょう、なんにち?」
「13日だよ。ママの誕生日だよ」
そう伝えると、娘はパッと振り返って、
驚いたような顔で笑った。
手をたたきながら小さな声で歌ってくれた。
「ハッピーバースデートゥーユ〜♪」
夜のお祝いを楽しみにしているようだった。
-----
娘と2人で過ごしていると、
時計は14時半。
「玄関で待っていてほしい」
そう言っていた息子の言葉を思い出した。
よく晴れた空の下、
扉を大きく開けて帰りを待った。
娘に呼ばれて一度リビングに戻る。
すると、外から声が聞こえてきた。
「あれ?玄関開いとるね?」
「ほんとや!」
急いで向かうと、
息子と息子の友だちの女の子が、
にこにこしながら立っていた。
息子の手には、
帰り道に摘んできたであろうお花。
2人は顔を見合わせて言った。
「せーのっ」
「お誕生日おめでとうー!!」
息子は、手に持っていたお花を
わたしにくれた。

いつもは、わたしが祝う側。
突然のサプライズに、
少し照れながら受けとった。
「うれしい...♡」
わたしは、何回言っただろう。
友だちの女の子も一緒にお祝いしてくれて、
本当にうれしかった。
扉を閉めたあとだった。
息子は、わたしが持つお花を指差しながら
教えてくれた。
「ピンクのは、なかなか咲いてないんだよ」
「これ、めずらしいやつ!」
「ママ、黄色とピンクが好きやけん。
紫もあるよ!」
よく花を摘んで帰ってくれる息子。
でも、ただ摘んできたのではなかった。
「誕生日だから」とママのことを考えて
選んでくれていたことが伝わってきた。
「なんでお花をあげようと思ったん?」
ふと、そう思って聞いてみた。
すると、息子は言った。
「パパが、お花あげる?って言ったけん、思いついた!」
手の中のお花を見ながら、
息子の想いと、夫の想いが重なった。
-----
夕方、夫に電話をしたときに伝えた。
あなたの言葉で、
息子がお花を摘んできてくれたこと。
でも、夫は言った。
「ぼく、言ってないよ」
それを聞いて、
今日は息子が「あげたい」と思って
摘んできてくれたことがわかった。
でも、きっかけは、
きっといつも子どもたちに聞いている夫。
そう思うと、
またうれしくなった。
-----
夜になって、
夫がケーキを持って帰ってきた。
夕食のあと、
いつものように家族でケーキ囲み、
子どもたちが手をたたきながら、
元気に歌ってくれた。
「ハッピーバースデートゥーユ〜♪」
「おいしいね」と言いながら、
ケーキを食べた。
食べ終えたあと、
電話で聞いていたから、
今日はお花はないと思っていた。
でも、夫は用意していた。
2人はパパに呼ばれて玄関へ。
わが家では恒例になっている。
わたしも、
そっと玄関に向かう3人の姿を見ながら、
口を拭き、手を膝において、
ドキドキしながら待っていた。
にこにこしながら近寄ってくる2人。
息子の手には、黄色い花束。
娘の手には、ピンクの花束。
「ママ、おたんじょうび、おめでとう♡」
優しい声で言ってくれた2人。
「ありがとう」と言って、
それぞれからかわいい花束を受けとった。

そして、お花を眺めていると、
後ろで見ていた夫が言った。
「ぼくは言ってないよ」
「2人が“ママにお花あげたいけん、買ってきて”って言ったんよ。
“〇〇(息子)が黄色で、〇〇(娘)はピンクね!”って言われたんよ」
びっくりした。
2人を見ると、
にこにこしながら「うん!」と大きくうなずいていた。
見た目だけではなく、
優しい心も、育っていた。
それがなによりもうれしかった。
そのあと、花束を持って家族写真。
何枚も撮るうちに、
画面いっぱいに4人の顔。
ぎゅーっと集まって、
1人だけ大きく写っていたり、
変な顔になっていたり。
笑いが止まらなかった。
楽しくて、楽しくて、
幸せ感じた。
-----
大切な人に祝ってもらえることは、
こんなにも、うれしいものなんだと、
あらためて知った。
でもそれ以上に、
誰かを想って
選んだり、考えたりするその時間こそが、
こんなにも人の心を満たすのだと気づいた。
この日にもらったのは、
プレゼントだけではなく、
「想う気持ちのかたち」。
今度は、わたしも
目には見えないその時間もいっしょに、
大切な人に手渡していきたい。
そして、家族との時間を、
これからも大切にしていきたい。
息子は、来年も忘れないようにと、
カレンダーに、書いてくれた。
もちろん、パパの誕生日にも。
ありがとう♡
ママは、この子たちのお母さんで、
この人の妻で、
本当に幸せだね。

お読みいただき、
ありがとうございました💐
そして、もうひとつだけ。
誕生日の少し前、
どうしても欲しかったチケットを、
夫がそっと用意してくれていました。

娘とカレーを作りながら、
にんじんを切っていたときに受け取って、
思わず涙がこぼれました。
「玉ねぎじゃなくて、にんじん切ってるのに〜」
と笑いながら。
当日は、夫と2人で。
結婚して10年目、
初めて子どもたちを預けての時間。
同じ景色を並んで見ること。
なめらかに滑る姿や、
しなやかな動きの美しさに
いっしょに感動しながらすごしたひととき。
こうして重ねてきた日々の中で、
大切に想われていること、
そして自分もまた想っていることを、
あらためて感じた時間でした。
