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なぜ建築士の私は自然素材にこだわったのか|それでも、お客様にはあまり勧めない理由

家づくりを考え始めると、
一度は「自然素材」という言葉が気になりませんか?

木の香り。
無垢の床。
塗り壁。

SNSで見る写真も、とても素敵です。

でも、調べ始めると今度は真逆の情報が出てきます。

「自然素材はメンテナンスが大変。」
「割れる。」
「やめた方がいい。」

営業担当からそんな話を聞いて、
何を信じればいいのか分からなくなった人も多いと思います。

実は私自身、
自宅には自然素材を多く採用しました。

それなのに。

仕事では、お客様へ積極的に自然素材をおすすめすることは、ほとんどありません。

むしろ最初に伝えるのは、
「本当に必要ですか?」という話です。

不思議ですよね。

自分は選んだのに、お客様には勧めない。

この記事では、
自然素材のメリット・デメリットではなく、

「どういう基準で選ぶと後悔しにくいのか」

その考え方をお話ししたいと思います。



自然素材が人気なのには、
もちろん理由があります。

木の温もり。
経年変化。
調湿性能。
健康的なイメージ。

どれも魅力的です。
だからこそ、多くの人が憧れます。

ただ、情報発信ではどうしても「良い部分」が目立ちます。

逆に、
自然素材をあまり扱わない会社では、

「割れますよ。」
「メンテナンスが大変ですよ。」

そんなデメリットばかり伝えられることもあります。

実はどちらも、
間違いではありません。

でも、どちらも自分たちに都合の良い話になりやすいんです。

だから読めば読むほど、
何が正しいのか分からなくなってしまう。

私も仕事をしていて、
そう感じる場面は少なくありません。

そして、多くの人がここで一つ勘違いをしています。

「自然素材を使えば、いい家になる。」

実は、
ここが一番危ない考え方です。

家づくりって、
何かを選ぶことは、
何かを諦めることでもあります。

予算は無限ではありません。

自然素材に100万円かけたら、
その100万円は別の場所には使えない。

断熱性能かもしれません。
収納かもしれません。
耐震かもしれません。

だから私は、
自然素材そのものより、

「なぜ、それを選びたいのか。」

こちらの方が何倍も大事だと思っています。


では、私はなぜ自然素材を選んだのか。


一番大きかったのは、
毎日過ごす空間の心地良さでした。

例えば床です。

一般的によく使われるフローリングは、
木ではなく、木目柄のシートが貼られたものが多くあります。

見た目は木でも、
素足で歩くと少しペタペタした感覚があります。

一方で無垢材は、
何とも言葉にしづらいのですが、

足の裏が自然に馴染むというか、
呼吸できるような感覚があります。

初めて体感したとき、
「あ、全然違う。」

そう思いました。

壁も同じです。

一般的なクロスは、
ビニール素材がほとんど。

もちろん悪いものではありません。

でも私は、
家全体が呼吸しているような空間で暮らしたい。

そう思っていました。

子どもがいるので、
家で過ごす時間も長い。

だから私には、
自然素材という選択が合っていました。

ここで大切なのは、
「自然素材が正解だった。」
という話ではありません。

私には、その優先順位が合っていただけ。
それだけなんです。

でも、だからといって、
「自然素材がおすすめですよ。」
とは、お客様にはあまり言いません。

理由はとてもシンプルです。

私は仕事で、
戸建てのリフォームやマンションのフルリノベーションの設計・施工管理に携わってきました。

その中で、
自然素材の”現実”もたくさん見てきました。

例えば塗り壁。

完成したばかりなのに、
細かな亀裂が入ることがあります。

立地による振動だったり、
乾燥による収縮だったり。
職人さんが悪いわけではなくても、
どうしても避けられないケースがあります。

事前にご説明していても、
完成した家を見た瞬間に
「えっ…もう割れてる。」
と落ち込まれるお客様もいました。

無垢フローリングも同じです。

天然の木なので、
継ぎ目にわずかな段差が出ることもあります。
湿度によって動くこともあります。
施工する職人さんの技術によって、
仕上がりに差が出ることもあります。

もちろん、それも自然素材らしさの一つです。

でも、
「高いお金を払ったのに新品なのに傷や段差がある。」

そう感じる人にとっては、
後悔になってしまいます。

だから私は、

自然素材を採用する前に、
まずデメリットを知ってもらいます。


その上で、
「それでも私はこれが好き。」
と言えるなら、
きっと後悔は少なくなると思うからです。


もう一つ、
あまり知られていないことがあります。


実は自然素材は、
施工する側にとっても難しい建材です。

無垢材も、
塗り壁も、
漆喰も、
珪藻土も。

どれも職人さんの腕で、
仕上がりが大きく変わります。

工期も長くなりやすく、
扱いも簡単ではありません。

一方、新建材は、
品質が安定しています。

誰が施工しても、
一定の仕上がりになりやすい。

だから標準仕様として採用されている会社が多いんです。

つまり、
営業担当さんが自然素材をあまり勧めないのも、

必ずしも「悪いから」ではありません。

会社の施工体制や、
標準仕様との相性も関係しています。

もし自然素材を採用したいなら、
自然素材を得意としている会社なのか。
施工実績は十分あるのか。

そこまで見ておくと、
完成後の満足度は変わってくると思います。



ここまで読むと、

「じゃあ自然素材はやめた方がいいの?」
と思ったかもしれません。

でも、
私はそうは思っていません。

私自身、
自然素材を選んで本当に良かったと思っています。

子どもが床を傷つけても、
「あぁ…。」と思うより、
「これも味かな。」と思える。

汚れも、
新品のピカピカを維持するというより、
暮らしに馴染んでいく感覚があります。

そういう価値観が、
私には合っていました。

だから満足しています。

でも、

もし私が、
「傷一つ許せない。」
「新築の美しさをずっと保ちたい。」
そんなタイプだったら、

同じ家でも評価はまったく違っていたと思います。

つまり、
家が良かったかどうかではなく、

自分の価値観と合っていたか。

そこが一番大きいんです。


だから、もし今、
自然素材が気になっているなら、
一度だけ考えてみてください。

「なぜ自然素材を選びたいんだろう。」

健康のためでしょうか。
見た目が好きだからでしょうか。
木の肌触りでしょうか。

それとも、
SNSで見て憧れたからでしょうか。

理由が分かると、

実は別の方法でも叶えられることがあります。

例えば、

調湿性能を期待して塗り壁を考えていたなら、
亀裂のリスクが少ない別の建材という選択肢もあります。

見た目が好きなら、
自然素材以外でも近い雰囲気を作れることがあります。

「自然素材か、自然素材じゃないか。」

ではなく、

「自分は何を叶えたいのか。」

そこから考え始めると、
情報に振り回されにくくなります。



私が思う家づくりで一番大切なことは、

最初に建材を決めることではありません。

まず決めるべきなのは、

自分たちの優先順位と、その理由。

ここがはっきりすると、

その後の家づくりは驚くほどスムーズになります。

実は私自身も、

自然素材より先に決めていたことがありました。

だから住宅会社選びでも、
ほとんど迷いませんでした。

建築士なのに、
設計事務所でも工務店でもなく、
ハウスメーカーを選んだ理由。


そこにも、
今回と同じ「優先順位」の考え方がつながっています。

その話は、次の記事でお話ししたいと思います。

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