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鍼灸治療院物語Vol.5 最後まで行く

——休息治療院
院長・柳澤学の休日のこと

柳澤学の休日は、静かだ。

施術室の外では、彼はただの一人の人間になる。
午後のひかりがソファに落ちる時間、
鍼を置いて、サブスクの画面を
ぼんやりとスクロールする。
それが、彼なりの「切り替え」だった。

止まったのは、岡田准一の顔だった。

『最後まで行く』(2023年・藤井道人監督)。
予備知識はほとんどなかった。
ただ、綾野剛の名前が並んでいた。
それだけで再生ボタンを押した。

院長満足度★★★★★5
——これは、すごい映画だった。

息をつく暇がない。次々と積み重なるトラブル。
逃げようとするたびに
追い詰められていく主人公。
そして何より、綾野剛が演じる追う側の人間の、
あの止まれなさ。狂気というより、
体ごと突き進んでいくような圧力。

気づいたとき、
柳澤は自分の肩に力が入っていた。

——ああ、体が戦闘モードになってる。

映画を楽しみながら、職業病のように思う。
追い詰められた人間の体は、
交感神経が引っ張られたまま、
降りられなくなる。
スクリーンの中の話なのに、
こちらの体まで引きずられていた。

施術室で何度も感じてきた、あの緊張と同じだ

ストレスが続くと、
体は「戦うモード」から抜け出せなくなる。

交感神経が優位なまま固まった体は、
痛みにも敏感になる。
首が抜けない。肩が重い。
夕方になると顔がぼやける。
——そういった不調を抱えてくる人たちの
体には、たいてい同じ空気が漂っている。
止まりたいのに止まれない、という疲れ。


鍼には、そのスイッチを切り替える力がある。

副交感神経、いわゆる
「お休みモード」へと誘導する。
体全体がゆるむことで、
痛みへの過敏さが和らぎ、
回復しやすい状態へと整っていく。

それだけではない。

鍼が体に刺さると、
脳は「小さな傷ができた」と受け取る。
修復のスイッチが入り、
血流が一気に集まる。
新鮮な酸素と栄養が届き、
老廃物と発痛物質が洗い流されていく。
湿布を貼っても一時的にしか
楽にならないのは、この血流の問題が
解決されていないからだ。

同時に、鍼の刺激は痛みの信号よりも
速く神経を走る。
痛みが脳に届く前に、
そのゲートを先に閉ざしてしまう。
さらに脳内ではエンドルフィンが
分泌され、体はじんわりと
ほぐれていく——
ランナーズハイに近い、あの感覚だ。

鍼は神秘ではない。
体が本来持っている
「治ろうとする力」を、引き出すツールだ。

柳澤はいつも、そう考えている。

エンドロールが流れ始めた。

しばらく、画面を見つめたまま動かなかった。

映画の巧さは、
前半に何気なく置かれた出来事が、
後半で意味を持って
返ってくるところにある。
伏線という言葉が、
これほどはまる映画もそうはない。

体も、似ている。

見えているのは表面の症状だ。
でもその背後には、長い時間をかけて
積み重なってきた何かがある。
姿勢の歪み、睡眠の浅さ、
抜けきれない緊張。
それが体という物語の中で、
静かに伏線として蓄積されていく。

そのノイズに気づいて、
丁寧に解きほぐしていくこと。
それが自分の仕事だ。

窓の外が、少しずつ暗くなっていた。

立ち上がって背伸びをすると、
明日会う顔たちがぼんやりと浮かんできた。

エステを続けても変わらないと言いながら、
それでも諦めずに来てくれた佐藤あかねさん。
「今じゃなくてもいいか」と言い続けて、
ようやく来てくれたみおさん。
夕方になるたびに四角くなるフェイスラインを、
ずっと一人で抱えていた由紀さん。

誰もが、自分の物語の主人公だ。

そしてどの体にも、まだ回収されていない伏線がある。

「さあ、明日はどんな続きが待っているだろうか」

柳澤は電気を消して、栄の夜景に背を向けた。

休息治療院|名古屋・栄の鍼灸・美容鍼

「頑張りすぎている」あなたの体に、
本当の休息を。

なかなか解決しない体のトラブル。
その原因、意外なところに
「伏線」として隠れているかもしれません。

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※この記事に登場するエピソードは、
休息治療院に寄せられるお悩みをもとに
構成した物語です。
実在の人物・施術例とは直接関係ありません。



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