『靴を売る人』から『靴と人をつなぐ人』として

※2025年9月再編集した記事です。
靴は身体を支える道具です
はじめまして
元シューフィッターのRueです。
私は30年程靴屋で働いていました。
後半はシューフィッターの資格も習得し、
お客様の足に最適な靴を選ぶことに力を注いできました。
私が何より大切にしていたのは、
お客様が納得し 気に入って履ける靴をお勧めすることです。
足にピッタリ合う靴が、必ずしも好みと合うとは限りません。
そのギャップをどう埋めるか――それが販売員としての腕の見せどころであり、難しさでした。
シューフィッターの知識を活かした接客は、一定のお客様から信頼をいただけたと思います。
何故信頼関係を築けたか、それは靴を勧めるよりもお客様の足を、お客様自身を大事にしていたからではないかと思います。
私の中には常に
「靴に対する認識を変えたい」「靴選びに対する意識を高めたい」という想いがありましたから―――
シューフィッターになってしばらくすると、
私の中で、靴を売ることは 二の次になってしまっていました。
「お客様の足の形だとこのメーカーがオススメですよ」なんて店で取扱のないメーカーを勧めてみたりして⋯
誠実に接客すればするほど、靴が売れない
売るために身に着けた知識が、逆に枷になっていく――
そんな葛藤もありました。
販売員としては失格です。
それでも私は人として誠実でありたいと思いました。
そうして、販売員としての幕を下ろしました。
シューフィッターの資格も失いました。
けれど、長い年月の中で身につけた、知識と経験は私の中に残っています。
これからは、それらを発信していきたいと思っています。
履ければいい・カッコ良ければいい・痛くなければいい ――
そんな靴の認識を少しづつ変えていきたい。
この靴を履いていたらどうなるのか?
この靴を選んだらどんな未来が待っているのか?
そうした視点を持って、靴は自身を支える大切な道具なのだと、伝えていきたいです。
まずは、昔話からはじめてみたいと思います。
「シューフィッターって何?」
と、思われる方もいるかもしれません。
靴と足の物語――その プロローグとして、
少しだけお付き合い下さい。
〇 シューフィッターとは
靴専門店や百貨店などの靴売場で、お客様の足型を計測し、足の病気予防の観点から最適な靴の選定をアドバイスし、靴の調整や販売を行う専門家のことです。
足のサイズや形、歩き方の癖などを考慮して、
もっとも履き心地がいい靴を提案する、
靴選びのプロです。
〇 シューフィッターになって
私がシューフィッターになる前は、
どちらかと言うと見た目重視で「好きなデザインに足を合わせる」感じでした。
それがシューフィッターになってからは履き心地重視へ「足にあった物から好みのデザインを選ぶ」方向へ方針を転換。
そして、
シューフィッターになってしばらくすると、
ある事に気付きました。
適当なサイズ選びをしている人の
多いこと、多いこと。
でも、仕方ないんです。
何故かというと、日本人ならどんな人でも靴の選び方は、
『昭和の頃から変わってない』
人が多いから―――
〇 日本人の靴の歴史
日本で現代風の西洋靴を、最初に履いたのは、坂本龍馬と言われています。
とはいえ、一般的に広まり、日常的に履かれるようになったのは戦後のこと。
草履や下駄ではなく︎︎ ︎︎ ︎︎"︎︎靴を履くのがあたりまえ ︎︎ ︎︎"︎︎になったのは、1940~50年代頃からでしょうか。
私の父親世代、いわゆる団塊の世代が靴を習慣として履き始めた最初の世代かもしれません。
働いていた靴店も二代前は商品のほとんどが、下駄や草履でした。
それほど日本人にとって靴の歴史は浅いのです。
それに加えて、私たちは1000年以上、草履や下駄で歩んできた民族です。
靴が習慣化してきた頃の子供が、履いていた靴は足を入れればいいだけのスリッポン。
サイズが合わなくなれば、踵を踏んで靴底に穴があくまで引っ掛けて履き続ける―――
そんな姿もよく見られたようです。
履物は引っ掛けて履く、という感覚が抜けてなかったのか、踵が靴に当たる感覚に慣れなかったのか、それとも外に出るための”仕方ない履き物”だったのか。
いずれにしても、靴の広まり方としてはあまり良いものではなかったように思います。
靴の歴史の浅い日本ですが、
日本製の靴の性能は年々進化してきました。
素材も、つくりも、履き心地も――
世界に誇れるものがたくさんあります。
それでも今なお、
『正しくサイズを選ぶ』『正しく履く』
という意識は、あまり根付いていないように感じます。
この2つの問題は、靴業界にとって、そして靴を履く全ての人にとって、いちばん大きな課題かもしれません。
〇 なぜ正しいサイズを選べないのか?
では、なぜ正しく選べないのでしょうか?
ここからは、私の経験をもとにしたお話になります。
たとえば一つのモデルケースとして―――
洋服や靴など日用品のサイズの選び方は、
基本的には、親から子へ自然と受け継がれていくものですよね。
親に選んでもらって何となく
「こんな感じかな」と身についていく。
そんな中で子供の靴を選ぶ場面でよく耳にしたのは
「どうせすぐ大きくなるから、ピッタリじゃなくて大きいサイズにしとこう」
という声です。
それ自体は間違ってないんです、
ただ問題は”どの程度”大きくするか なんです。
30年位前なら、2センチ以上大きめを購入する方も珍しくありませんでした。
それは、適度な捨て寸に加えて1センチ以上です。
今思えばかなり大きすぎるサイズです。
その当時の私は、
「脱げるようならインソールで調節するか、ストッキングをつま先に詰めるといいですよ」
なんて、言ってました。
「歩いて脱げないならいいよ」
とかね
⋯⋯今考えると、ゾッとします。
現代の子供靴は、メーカー側も「すぐサイズアウトする」ことを前提に作っています。そのため、耐久性より軽さを重視している物が多く、長く履くことはあまり想定されていません。
仮に2センチ大きいのを買ったとして――
きつくなるのは、個人差はありますが、だいたい2年後。
でもその前に、靴は壊れてしまうことがほとんどです。
そうなると、子供は「ぴったりサイズの靴を履く」という感覚を知らずに育っていきます。
実は、私自身もそうでした。
そうやって育った子は、大人になっても捨て寸(爪先のすきま)を多めにとってる状態が、ちょうどいいと勘違いしたままで、靴を選んでしまいがちです。
そして、靴を買う時、とりあえず今まで履いていたサイズと同じサイズをフィッティングして、入ったから良し!痛くないから良し!で購入てしまい、
「何買っても靴が合わないんだよね~」
と言うようになる人もいます。
靴ってそんなもんでしょ?って顔で。
そもそも『ちょうどいいサイズ』の感覚を間違えてるので『サイズが合ってない』とは思わない。
そして、親になり我が子に同じように選ぶ⋯
という悪循環。
さすがに、昔のように大きすぎる靴は選ばなくなりましたが、根本の考え方はさほど変わってません。
だいたい今の4、50代に多いかな⋯と思います。
その間違った靴選びで、足に影響が出始める世代です。
そういった悪循環を断ち切るためには⋯
〇自分の足のサイズを知る
一番の解決方法は、足のサイズを測定することでしょう。
”足を測る”習慣がないから、
靴屋に行って”足を測る”という発想にならない。
シューフィッターになった私は、お客様が来店したら、まずは足の測定をさせてもらっていました。
たいていの人は興味本位で測らせてくれました。
シューフィッターが在籍している店では、シューフィッター専用スケール『フットゲージ』で測るんです。
ちょっと面白いでしょう?
足を測ると、意外なことがわかります。
▪️思っていたサイズと違う
▪️左右のサイズが違う
▪️幅広だと思っていたのに、実は細かった
そんな発見がたくさんあります。
測定することで、足の”今”の状態を知ることができる。
そしてその情報が、靴選びの第一歩になります。
測定結果をもとに、靴の形や素材、履き口の高さなどを考慮して選ぶことで
『履ける靴』ではなく『支えてくれる靴』に出会えるんです。
それが靴を選ぶ時の”当たり前”になっていったら―――
きっと足元から暮らしが変わっていくと思うのです。
正しい靴選びは、今の快適さだけでなく
数年後、数十年後の自分の身体を守るためのもの。
年齢を重ねると、誰にでも訪れる足の変形、膝の痛み、腰の不調――
それらも、靴を正しく履くことで予防したり、軽減したりできるのです。
靴はただの履物ではなく、日々の歩みを支え、未来の自分を守ってくれる大切な道具です。
最後に
長い年月で経験してきたこと、
学んだ知識、それらをひとつずつ、少しづつ発信していけたらと考えています。
難しい話は、
専門の先生方がたくさん発信されています。
だから、私はちょっと意識を変えるだけでできることを。
へぇ!とほんの少し驚いてもらえるようなことを。
靴屋にいた頃には話せなかったことを――
この『靴と足の物語』を書いていきたいです。
足元から暮らしを見つめるような物語を――
どうぞ、ゆっくりお付き合いください。
最後まで読んでいただき有難うございます!
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