メンバー目線で考える「理想の上司」
「何を言ってもハラスメントになる時代だから、もう何も言えない」
最近、そんな声をよく耳にします。マネージャー職を敬遠する人が増えているという話も、決して他人事ではありません。
確かに難しい時代です。
強く言えば萎縮させてしまうかもしれない。指摘すれば傷つけてしまうかもしれない。
その結果、「黙る」「触れない」という選択肢を選び、波風の立たない「無難で安全なコミュニケーション」ばかりが増えていく。
でも、メンバーの立場で考えたとき、本当にそれが「理想の上司」なのでしょうか。
私は、そうは思いません。
忘れられない「助けてくれ」の一言
かつて、社内が極めて困難な状況に陥ったとき、私は「火消し役」として指名されたことがありました。正直、プレッシャーで押しつぶされそうでした。
そのとき、普段は厳しいことで有名な上司が、真正面から私に頭を下げてこう言ったのです。
「助けてくれ」
それは命令でも、押し付けでもなく、心からのお願いでした。
その一言で、私の腹は決まりました。「やらされている」のではなく「託された」のだと感じたからです。期待されていること、頼られていること。その重みが、何よりも嬉しかった。
厳しい上司でしたが、あの瞬間に私は、その人を心から信頼しました。
理想の上司とは、決して「完璧な人」でも「強い人」でもありません。
自分の弱さを見せられる人、そして本気で人を頼れる人なのだと知りました。
畳みかけられた、あの日の記憶
一方で、忘れられない苦い経験もあります。
心身ともに疲弊していた時期、密室で数時間にわたり「できていないこと」を指摘され続けたことがありました。
言われている内容がすべて間違っていたわけではありません。事実も含まれていました。
でも、そこには「タイミング」も「分量」も、そして相手を思いやる「余白」もなかった。
指摘は、いわば「刃物」のようなものです。必要なときに、適切な力加減で使えば、それは現状を改善する「外科手術」になります。しかし、弱っている相手に畳みかければ、それはただの「凶器」となり、深い傷を残すだけです。
あのとき感じたのは、「成長を願ってくれている」という安心感ではなく、「追い詰められている」という絶望感でした。
「厳しさ」と「攻撃」は、似て非なるもの。
これは、私が身をもって学んだ教訓です。
理想の上司を定義するなら
メンバーの視点に立ったとき、理想の上司は単なる「優しい人」でも「何も言わない人」でもありません。
期待を言葉にして伝えてくれる
本気で自分に向き合ってくれる
人格を否定せず、事実と向き合う
失敗したとき、一緒に「次」を考えてくれる
成長のためには、厳しいフィードバックも不可欠です。
しかし、その言葉が「相手の未来」を見ているかどうかで、受け取り手の心への響き方は180度変わります。
「なんでできないんだ」と詰めるのではなく、「どうすればできるようになるか、一緒に考えよう」と手を差し伸べる。
この差が、信頼関係の根幹を成すのだと思います。
マネージャーだからこそ味わえる景色
今、多くのマネージャーが悩んでいます。
伝え方の正解が分からない。どこまで踏み込んでいいか迷う。傷つけたくないけれど、成長もしてほしい。
本当に、難しい役割です。
でも、難しいからこそ、マネージャーにしか味わえない喜びがあります。
メンバーが壁を乗り越えた瞬間。
自信に満ちた表情で発言できるようになった姿。
数年後、「あのとき言ってもらえて良かったです」と感謝されたとき。
これらは、誰かの人生の成長にコミットした人だけが受け取れる、最高の報酬です。
ハラスメントを恐れて口を閉ざすのは簡単です。
しかし、「成長のきっかけ」を設計してくれる上司は、必ず感謝されます。
そして、そのプロセスを通じて、上司自身もまた大きく成長していくのです。
マネージャーの皆さんへ
責任は重く、評価はシビアで、正解もない。マネージャーを避ける風潮があるのも理解できます。
それでもやっぱり、「人の成長に本気で関われる仕事はおもしろい」って言い切れる!
厳しさと攻撃を混同しない。優しさと放置を混同しない。
相手の未来を信じて、言葉を選ぶ。
それができたとき、マネージャーという役割は単なる「管理職」を超えて、最高の「支援職」になります。
道は険しいですが、その先にあるやりがいは本物です。
全国のマネージャーの皆さん、共にがんばりましょう。
【募集】
もしあなたが、かつて上司に言われて救われた「忘れられない一言」があれば、ぜひコメントで教えてください。
あなたの経験が、今悩んでいる誰かのヒントになるかもしれません。
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