チップを巡るエピソード
海外旅行に行くと、チップをいくらあげたらいいのかと頭を悩ます。日本でもかつては結婚式の披露宴、葬儀、旅館などでお世話になったスタッフに渡す「心付け」があったが、現在はサービス料に含まれているため、この習慣はすたれてきているという。
チップは外国では当然であり、時には給料に匹敵するほどの大事な収入源になる。ただし一部のレストランでは勘定書きにサービス料込みと印字してある場合があるので、二重に支払わないように気をつけなければいけない。それを知らずに「10%のチップ」を置いて帰る日本人観光客は多いように思う。
ウエイターやウエイトレスの他に、日本にはないが、トイレで利用者にぺーパーを渡す女性が座っていて、日本円なら50円ぐらい渡すサービスもある。空港で荷物を運ぶポーター、ホテルのドアマン、部屋までスーツケースを運ぶベルボーイや客室係に1、2ドルぐらい渡す。渡すのを忘れると、ベルボーイはいつまでも待っている。
タクシー運転手にも、チップのかわりに「お釣りは取っておいてください」と言うことがある。当たり前だが、断られることは決してない。
欧米の映画やドラマで、情報をもらう時いくらか渡す場面をよく見るが、あれもチップの一種のようだ。日本でこの場面を見ることはまずないが、おおっぴらにやっていないだけなのだろうか。

ポルトガルのリスボンのホテルに3日滞在したときのこと。出かける時、帰った時に、ドアマンにスペインのあいさつ、“Holaオラ”を言っても、ドアを開けてはくれるが、返事がなく目をそむける。地下鉄駅で切符を買う時も、女性の駅員が無言で目をそむけたし、そういえば、1時間乗ったタクシー運転手も無言だった。
ドアマンは3日目に、やっとにっこりしてくれた。スペインとポルトガルは隣同士の国で同じラテン系なのに、陽気なスペイン人と違って、ポルトガル人は内気なのだと気がついた。親しみを感じるまでに、時間がかかるようだ。
出発の朝タクシーに乗るときに、お世話になったマネージャーにチップをそっと手渡すと、人にはわからないぐらい手際よくすっと受け取ったので、「慣れてるなあ」と思ったのと同時に、受け取るマナーに感心した。
ここ15年はよく夫とアジア圏を旅している。ホテルのメイドには毎朝100円程度をベッドわきのテーブルに置いておく。いつの間にかなくなっていることもあるし、そのままになっていることもある。でもとりあえず置いておく。私物を取られないためだと言う人もいる。


バリ島のコテージ風ホテルに三日間滞在したときに、ちょうど私の誕生日の日があった。観光から帰ると、部屋にバースデーカードにチョコレートケーキとプルメリアの花が添えられていたので、とても感激した。
そういえば、部屋に入る前に、廊下で3人のメイドがこちらの様子をうかがっていたのは、私の反応を知りたかったのだと後で分かった。チェックアウトの日に、感謝の気持ちを書いたカードを置き、当然「心付け」をはずんだ。
だがチップが不要な国もある。フランスでは料金にサービス料が含まれているので、基本的には義務ではなく、オマーン、イエメンなどチップの習慣がない国もあり、特に何かを頼んだときに「心付け」としていくらか渡せばいいのだという。でも日本人には、その「いくらか」が良く分からないから、困ったものだ。
