私の人生の3人の師匠たち ③ ― ボケは、高齢者の特権だ!
私の人生の三人目の師匠は、哲人N師匠です。
この方のギャグには、いつも人生哲学のようなものがにじみ出ています。
ただ人を笑わせるだけではありません。
場の空気が少し重くなった時、誰かが困っている時、皆が真剣になりすぎている時に、ふっと一言を投げかけ、その場の空気を軽くしてくださるのです。
先日のトーナメントでも、N師匠は少し眠そうな顔で試合に臨んでおられました。
それも無理はありません。
前日に日本から帰国されたばかりだったからです。
私は心配になって、
「師匠!少し時差ボケですね。大丈夫ですか?」
と申し上げました。
N師匠は、少しも間を置かず、
「いや、大丈夫。」
と答えられました。
そして続けて、
「大きな問題じゃない。」
と一言。
私は、
「ああ、いつものN師匠だ。」
と安心した、その瞬間でした。
N師匠は、
「俺?
俺は飛行機なんかに乗らなくても、
毎日ボケてるから。」
と付け加えられたのです。
私は不覚にも、座布団を一枚差し上げるタイミングを完全に失ってしまいました。
その場にいた人たちも、一瞬あっけに取られ、そして次の瞬間、大きな笑いに包まれました。
考えてみると、これは単なる冗談ではありません。
年を重ねることを恐れない。
自分自身さえも笑いの対象にしてしまう。
そして、周りの人たちを安心させる。
それは、人生を深く生きてきた人にしかできない、ある種の強さなのです。
三人の師匠たちを見ていて、私は思います。
K師匠は、
人の話をよく聞くことを教えてくださいます。
T師匠は、
失敗を恐れず挑戦することを教えてくださいます。
N師匠は、
自分自身を笑うことのできる心の余裕を教えてくださいます。
この三人の師匠たちは、いつも無料で、超一級の芸を披露してくださいます。
私はその芸を、卓球クラブという小さな劇場で、ありがたく鑑賞している弟子の一人です。
ところで、最後に一つだけ、私自身の話をさせてください。
私は今回のトーナメントについて、最初「1000名ほどが参加する大きな大会」だと思い込み、周りの友達に言いふらしていました。
ところが後になって、それは全く別の大きな大会、
「US Open Senior Tournament」
のことと思い違いしていただけだったことが、分かりました。
つまり私は、80名ほどの大会を、1000名規模の大会だと思い込んでいたわけです。
後になって考えてみると、
「1000名」
という数字の記憶だけは残っていたものの、
その前後関係の記憶は決して
「鮮明」
ではなかったようです。
私は、ようやく気が付きました。
N師匠がおっしゃっていた、
「ボケは、高齢者の特権だ。」という教えを、
私はすでに修行し始めていたのだということを。
私の周りには、こんなにも素晴らしい人生の師匠たちがいるということを。
それは、とても幸せなことなのだと思っています。
そして、今日1日のことを思い出して、にっこり笑いながら、知らないうちに眠りについてしまいました。
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このエッセイは、毎週日曜日の朝に更新しています。
ただ、今回については、特別三部作として、投稿しています。次回は今まで通り、7月12日(日)の朝の投稿となりますので、今後ともよろしくご愛読いただきたいと思います。
