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怖がり|制限速度を超えた世界の恐怖

小学生の頃から色んなスポーツに親しみ、運動神経は鈍くないと思い込んでいましたが、ある日を境に自分自身の意識とは別に、三半規管が感じ取る水平・垂直の平衡感覚があって、これらが一致しない時に事故に至るんだろうなと心に刻める怖い思いをしました。

親友が高速道路で80km/hの速度超過で捕まり、一発90日間免停を喰らった頃の話しです。
彼が所有する車は、国産にしてスポーツカー(ツインカム24バルブ)。最高にクールなエンジン音と走りを体感させてくれる凄い車でした。
当然、彼は毎日のように走りたい。でも辛い免停中。必然的に私がドライバーに成り代わり、彼を助手席に座らせて走る日々が続きました。

深夜の阪奈道路でした。もう目を瞑っても運転できるという位に走り込んだ道のはずでした。
50km/hの制限時速ですが、瞬間的には80km/hを超えていたかも知れません。彼とバカな話題で笑い転げそうになった瞬間。

私の意識は、もう暫く真っすぐ。
しかし、三半規管が捉えたのは、逆バンクの緩やかな右カーブでした。

状況把握と思考のための余裕が全くない恐怖に包まれ、全身が硬直するのが分かりました。まさに、景色が急に近く感じた。そんな瞬間でした。

辛うじて出来たことが、アクセルから足を離せたこと。

もし、1秒に満たない僅かな時間で何もできていなければ、ガードレールに激突か、慌ててハンドルを切ることによる制御不能のスリップに見舞われていたことでしょう。

免停中の親友を乗せて、とんでもない事態になっていたと思います。
今でもあの瞬間の違和感(体の奥で何かが反発し合う感覚)を思い出すと、背筋がゾッとします。

それからです。車内に誰が居ようとも、どんなに愉快に騒ごうとも、ハンドルを握っている間は、決して前方から目を離さない、そして何よりも制限速度を遵守することを徹底するようになりました。

制限速度が50km/hなら、設計速度は安全側の70km/hで道路構造が成りたっているため、どんなに無茶をしても、20km/hオーバーなら遠心力でカーブ外へ弾き飛ばされるような現象が起きないことも学びました(ただし、雨天や降雪時の路面の状態によっては限界値は低くなります)。

人の能力なんて微々たるもの。
慢心、過信など言語道断。物理の法則や自然の力の下で、人が勝ることなんてできないのです。

この一件があってからは、「私は制限速度で走ろう」「どんなに飛ばしても10km/hオーバーまで」「例え前後左右の安全確認の上で調子に乗ったとしても20km/hオーバーまで」を通しています。


あとがき

あの日、私が恐れたのは事故ではなかったのかもしれない。
自分は大丈夫だと思い込んでいた、その慢心だった。

車も道路も私の都合で曲がってはくれない。
遠心力も重力も、私を特別扱いしてはくれない。
人は自然の法則の中で車を運転させてもらっているだけなのだ。

だから今日も私は速度計を見る。
あの日感じた背筋の冷たさを忘れないために。



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