【絵本】100の羽を持つ白鳥
ある村の外れに1羽の白鳥が住んでいました
真っ白で大きな羽根を持つ白鳥の元には毎日多くの鳥が集まってきます
「友達と喧嘩しちゃったんだ」
「高い所から落ちちゃったんだ」
「枝にぶつけちゃったんだ」
皆理由は違うけど、怪我をして飛べなくなってしまいました
ん?僕は元から飛べないって?
そうね、怒らないでニワトリくん
君のトサカだって素敵じゃないか
僕は君のようなトサカが無いのが凄く残念だな〜
白鳥がそう言うとニワトリくんは少し照れた様子で俯きました
白鳥はこの村のお医者さん
怪我をした鳥達はみな白鳥の元へ集まります
しかしこの白鳥は怪我の治療に薬は使いません
使うのは自分の羽根でした
頭が痛い鳥には羽を1枚頭の上へ
足を怪我してしまった鳥には羽を1枚足の上へ
白鳥の羽根を貰った鳥達はたちまち元気になり自由に空を飛び回ります
ある日、いつも見かけない顔の鳥がやって来ました
どうやら白鳥の噂はかなり遠くまで広がっているみたいです
「どこの医者に行ってもこの腰痛が治らないんだ」と、フクロウのおじいさん
「それでわざわざ来られたんですか」
白鳥が答えると「おかげで少し悪化した気がするよ」
とフクロウは力無く笑って答えました
白鳥はいつものように羽根を1枚取りフクロウの腰へと置きました
「おぉ、こりゃすごいありがとう先生」
「いえいえ、お役に立てて何よりです」
「今度村の人達も連れてきていいかい」
「もちろんですとも、鳥の役に立てるならこちらも嬉しです」
そう言ってフクロウを見送りました
それからというもの村の鳥たちだけではなく他の村の鳥たちも来るようになり、白鳥の家の前には毎日行列ができていました
ところがある日、いつもの時間になっても白鳥は店を開けません
どうしたのでしょうか
家の前の行列の鳥たちも次第に怒り出しました
「遠くから来てるんだぞ!」
「いつまで待たせるんだ!」
みんな白鳥が言い返さないことをいいことに好き勝手に暴言を吐きます
「おいこりゃ一体どういうことだ」
そこでやってきたのは2羽のフクロウ達でした
「いつもの時間になってもドアを開けないんだ、参っちゃうよ」
と行列に並んでいた鳥達はフクロウに事情を説明しました
「はて、どうしたのだろうか、ワシが1度話を聞いてみよう」
そう言うとフクロウは窓に1番近い枝に止まり白鳥を呼びます
「おーい、白鳥や、覚えてるかい?この前腰を治してもらったフクロウじゃ」
すると白鳥は少しだけ、窓を開けました
「あぁ、覚えてるよ。また腰が痛くなったのかい?でももう治すことは出来ないんだ」
白鳥は今にも消えそうな声でそう言いました
「もう直せないって、そりゃまたどうして」
「もう全部なくなっちまったんだ」
「無くなったって、何が」
「羽根だよ。私の羽根はもう1枚も残ってないんだ」
そう言うと白鳥はフクロウに向かって手を伸ばしました
フクロウに差し出された手はかつてのフサフサな手では無く羽の1枚も生えていない痩せた手でした
「これじゃ傷を治してあげる事も出来なければ前みたいに大空を飛ぶことだって出来やしない、もうおしまいだ」
とうとう白鳥は泣き出してしまいました
「そういう事だったのか、すまないことをした…ワシがあの時言いふらしさえしなければ…」
フクロウはそう言うと優しく手を握りすまない、すまないと繰り返します
それを見ていた周りの鳥達はもう誰も罵声を発する者はおらず、ただその様子を黙って眺めていました
「俺は悪くない」
そう皆が思っているようです
白鳥はその日からもうずっと家から出てきません
どうしたものか、とフクロウたちは考えました
その時ニワトリの坊やがいい事を思いつきました
ごにょごにょごにょごにょ…
白鳥に聞こえないようにみんなに伝えます
「おぉ、そりゃいい」
「それは名案だ!」
ニワトリの案にみんな大賛成
早速作業に取り掛かります
そして数日たったある日
コンコンコン
フクロウはまた窓の近くから白鳥を呼びかけます
「窓を開けなくてもいい、でも少しだけ聞いてくれないか」
フクロウは窓に向かって呼びかけます
「今まで白鳥は沢山の人を助けてきた、私もその1人だ」
「みんな君に恩返しがしたい、と協力してくれてね、君にあるプレゼントを作ったんだ」
「みんな君に元気になって欲しいんだ、僕たちにしてくれたように」
「少しだけドアを開けてはくれないか」
そう言うとフクロウは窓の傍から立ち去りそっと玄関のそばに降り立ちました
白鳥はしばらくしてゆっくりゆっくりドアが開けます
ドアを開けてみるとそこには数え切れない鳥たちと、そして…
色とりどりで形も少し不格好な大きな大きな羽根が置かれていました
「白鳥のためにって皆で1枚ずつ出し合ったんだ」
「もう皆の傷を癒すことは出来ないかもしれないが、もう一度空は飛ぶ事は出来る」
「皆の感謝の気持ちを込めた羽根なんだ、どうか受け取ってはくれないか」
フクロウはそう言うと白鳥にその羽根を差し出します
白鳥は戸惑いながらもフクロウから羽根を受け取ります
目にいっぱいの涙を浮かべながらじっくりとその羽根を眺め、そして丁寧に腕を通していきます
バサッバサッと動かした後
白鳥はとうとう堪えきれなくなって泣き出してしまいました
ありがとう、ありがとうと言いながらえんえん泣きました
「まだ何か渡したい鳥が居るみたいじゃよ」
フクロウはそう言うと後ろに隠れていた鳥の背中を押してあげました
そこには恥ずかしそうにしているニワトリ君がいました
「ねぇ、少ししゃがんで?」
白鳥は言われた通りにしゃがみました
するとニワトリ君はトサカの羽根を1枚抜き、白鳥の頭の上に乗せました
「先生もなかなか似合ってるよ」
そういうとニワトリ君はまたフクロウの後ろへ隠れます
「ありがとう、みんな、私は今とっても嬉しいよ」
白鳥は深くお辞儀をしたあと大きく羽根を動かし、空へと舞い上がりました
色とりどりの羽根をまとった白鳥は優雅に空を羽ばたきます
その光景はとても美しく、今度は皆の心を癒します
こうして鮮やかな羽をつけた白鳥が生まれました
あ、かっこいいトサカもね
