『感情の国ーシロとエモノスたちー⑯』
第16話 心の扉と、もうひとりの僕
色が戻りはじめた世界。
でも、それはほんの“兆し”に過ぎなかった。
本当に変えるには――
もっと深く、“核心”に触れる必要があった。
僕とナミは、「封印の地」と呼ばれる場所を目指した。
それは、感情たちが最後に封じられた場所。
そして、すべての“色の記憶”が眠る場所。
途中、道は閉ざされていた。
あたり一面、灰色の霧に包まれていた。
霧は、“迷い”と“恐れ”からできていた。
近づけば、心がざわめき、足がすくむ。
でも――僕にはもう、風があった。
心の中から吹く、あの風が。
僕は深呼吸して、目を閉じて、風を感じた。
「ここまで来たんだ。
もう逃げない。
僕は、僕を信じる」
すると風が霧を裂いた。
灰色の世界に、一本の道が現れた。
その道の先に、巨大な門が見えた。
「……ここが、心の中心(コア)」
ナミが呟いた。
僕たちはゆっくりと門へと歩いた。
門には、文字が刻まれていた。
《色を望むなら、心を曝け出せ》
そうして、門がゆっくりと開くと――
そこには“誰もいなかった”。
ただひとつ、大きな鏡だけが、立っていた。
その鏡に、僕が映った。
でも、そこに映っていたのは、“もう一人の僕”だった。
無表情で、無感情で、透明な僕。
「……君は、誰?」
僕がそう問いかけると、鏡の中の僕が答えた。
「感情を捨てた“かつての君”だよ」
そうだ――
僕自身が、感情を“封じた”最初の存在だったんだ。
世界の封印は、僕の“拒絶”から始まったのだ。
僕は震えた。
でも、もう逃げない。
「君がいてくれて、ありがとう。
でも、もう大丈夫。
僕は感情と共に、生きていく」
そう言って、鏡にそっと手を伸ばした。
触れた瞬間、透明な僕が静かに微笑んだ。
そして、光の粒になって、僕の中へと戻っていった。
その瞬間、扉の奥から――“すべての色”があふれ出した。
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