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静月最新ニュース小説|第33号(2025/10/11)

ニュース一覧(短編題材)

① ノーベル平和賞、地元ベネズエラではTV報道なし 中南米各国は祝福(出典:朝日新聞デジタル 2025年10月11日21時45分)

② 国民民主・玉木氏「現在の立憲とは組めない」 公明には協議呼びかけ(出典:朝日新聞デジタル 2025年10月11日20時55分)

③ 「政治とカネ」逆風に募った不満 自民と決別、公明の原点回帰なるか(出典:朝日新聞デジタル 2025年10月11日20時36分)

④ 大阪の公明、自民と連携模索 「政治とカネ」問題視 連立離脱(出典:朝日新聞デジタル 2025年10月11日20時00分)

⑤ 北海道のドングリ、広範囲で凶作 ヒグマ目撃は続出「常識通じない」(出典:朝日新聞デジタル 2025年10月11日20時00分)


恋愛短編「無音の祝辞」

(題材・ニュース①)

夜八時、窓は曇り、部屋の温度は湯のみの縁で止まった。リモコンはテーブルの隅で冷え、画面は黒いまま沈黙した。世界のどこかで賞の鐘が鳴り、こちらの部屋では冷蔵庫が低く唸るだけだった。彼女は髪を結い直し、輪ゴムのきしむ音で返事を済ませた。ニュースは祝福と言い、我が家は無音でうなずく。拍手の代わりに湯気が立ち、湯気は天井でほどけた。私は指先を湯に浸け、熱の深さだけを確かめた。

昔、二人で中古のブラウン管を拾った。画面の角は丸く、砂嵐の粒は雨のようにやさしかった。番組が映らない夜は、字幕のない映画ごっこをした。口だけが動いて、意味は各自で補った。あの頃、沈黙は遊びで、今は習慣になった。リモコンの電池を抜いたのはどちらだったか。思い出の匂いは、古いゴムとほこりの混ざり物だった。

彼女は言う。「映さなくても、世界は進むでしょ」。私は頷き、カップの縁で歯を冷やした。遠くの祝辞は届かず、近くの食器が触れて澄んだ音を立てた。勝者の笑顔は想像に任せ、私たちは洗い物の手順を整えた。水はぬるく、泡は音を吸った。沈黙の中で、私はチャンネルを探すふりをやめた。やめると、指は楽になった。

テレビの黒は鏡になり、二人の肩だけを映した。私は祝うべき誰かの名前を忘れ、彼女は台所でタオルを絞った。絞られた布の水が床に落ち、拍手の代用になった。ニュースの明るさは、我が家の無音で薄まった。窓の外の風鈴が一度鳴り、風はそこで止まった。祝福の言葉より、止まった風の方が正直に感じられた。そういう夜だった。

結局、電源は入れなかった。黒い画面は祝辞より深く、私たちの顔色を均一にした。話さないことが会話になり、コップの水位がゆっくり下がった。遠い国の笑顔は見えず、互いの呼吸だけが同じ速度で往復した。世界は賑やかでも、家庭は無音のまま進む。それでも手は触れず、湯気だけが交差した。きっと、あなたも誰かを思い出したでしょう。


ファンタジー短編「立憲と王国のあいだで」

(題材・ニュース②)

午前九時、薄曇り。広場の噴水は止まったまま、王国の旗が無風のまま垂れ下がっていた。城下の人々は、どの陣営にも属さず、パン屋の列に並びながら政治の話を避けた。「立憲とは組めない」と大臣は言ったが、パンの値段は昨日と同じだった。僕は煙草の火をつけるふりをして、風を計った。

昔、空を歩く夢を見た。雲の上で、二つの国が争っていた。片方は理想を掲げ、もう片方は現実を抱えすぎていた。僕はその間に立って、どちらの旗も持てなかった。目が覚めたとき、口の中には灰の味が残っていた。

昼過ぎ、議会の映像が途切れた。画面の中で笑う人々は、まるで人形のように静かだった。マイクが落ちる音が小さく響き、沈黙が拍手のように広がった。「協議を呼びかけます」と誰かが言った。その声が、パン屋の裏の冷気と混ざっていった。

夕方、王都の鐘が三度鳴った。僕は自分の影を見つめていた。影の中には、立憲も公明もなかった。ただ、古びた靴音だけが残っていた。「それでも歩くのだろう」と、誰かが囁いた。

夜、噴水の水がようやく流れ出した。光が石畳に反射して、空の雲を照らした。僕はパンを一口かじりながら、空を見上げた。夢の国も現実の国も、どちらも飢えていた。あなたの国も、まだ夢の途中でしょう。


ホラー短編「沈黙の原点」

(題材・ニュース③)

午後七時、雨。屋根を打つ音が妙に軽く、テレビの音声がときおり歪んでいた。「政治とカネ」という言葉が、家の壁を這うように響いた。指先が冷え、チャンネルを変えるたびに別の顔が笑っていた。その笑いは、どれも同じ声に聞こえた。

若いころ、父が封筒を数えていたのを思い出す。食卓の上に積まれた茶封筒の山。僕はそれを山脈のように眺め、触れてはいけないと思った。父は「これは仕事だ」とだけ言った。夜、封筒の端が風で揺れ、紙の擦れる音がまるで呼吸のようだった。

ニュースの声が再び戻る。「原点回帰」という言葉が、部屋の湿気に吸い込まれた。僕はテレビを消し、暗闇の中で掌を見た。爪の間に黒いインクのようなものがこびりついていた。それが何か、確かめる気にもならなかった。

窓の外では、誰かが笑っていた。風かもしれないし、過去の音かもしれない。僕は耳を塞ぎ、息を止めた。だが、声は頭の内側に入り込んできた。「それでも投票するのだろう」と、誰かが囁いた。

朝、雨は止んでいた。机の上には、父の古い封筒が一枚だけ残っていた。差出人は書かれていない。中を覗くと、鏡のような紙が一枚入っていた。それでも、あなたはリモコンを握るのでしょう。


お仕事短編「連立食堂の午後」

(題材・ニュース④)

午前十一時、曇り。社員食堂のスープが薄く、味噌が沈んだままだった。「政治とカネ」という会話を避けながら、誰もが時計ばかり見ていた。上司が笑いながら「連立離脱らしいぞ」と言った。僕らは箸を止めずに頷いた。

新人の頃、会議室の窓際に座っていた。太陽が眩しすぎて、誰の顔も見えなかった。議題は「効率」と「信頼」。そのどちらも、昼の定食よりも味が薄かった。終わったあと、残った味噌汁を一人で飲み干した。

午後、上司が資料を落とした。コピー機が唸り、紙が詰まった音が部屋を支配した。僕はその音を、少しだけ心地よいと感じた。「仕組みを変えるのは難しい」と彼は言った。その言葉の温度は、冷めかけたコーヒーと同じだった。

夕方、外回りから戻ると、誰もいなかった。机の上に「連立食堂閉店」と書かれたメモ。冷蔵庫の中に昨日の弁当が一つ残っていた。それを温めると、匂いが昔の家を思い出させた。僕は黙って食べた。

夜、残業届にサインをした。ボールペンのインクがかすれていた。指先が冷え、灯りが妙に黄色く見えた。「明日も仕事だろう」と心の中で呟いた。明日も、あなたの席は空いているでしょう。


短編ミステリー「ドングリの常識」

(題材・ニュース⑤)

午前六時、冷気。林の奥でカラスが鳴き、落ち葉が濡れた匂いを放っていた。今年はドングリが少ないと聞いた。ヒグマが出るらしい、と村人が笑った。その笑いが、やけに乾いていた。

昔、祖父が「熊の年は人の嘘が多い」と言った。子どもながらに意味がわからなかった。だが、大人になってから少しわかる気がした。嘘もまた、餌を求めて山を下りるのだ。空腹のまま、誰かの手を噛むように。

町のスーパーで、木の実のポスターを見た。「常識通じないほどの凶作」と書かれていた。僕はレジ袋を開けたまま、立ち尽くした。ポスターの熊の目がこちらを見ていた。そこに、少しだけ自分の顔が重なった。

夜、テレビが熊の特集をしていた。「人間と熊、共存の道は」とアナウンサーが言った。その声が途切れた瞬間、窓の外で何かが動いた。風かと思ったが、ガラスに曇りが残った。掌を当てると、内側から冷たくなった。

朝、森は静かだった。ドングリの殻が一つ、玄関前に落ちていた。中身は空で、誰の仕業かもわからなかった。僕はそれをポケットに入れた。そして今も、森のどこかで見られている気がするのです。


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