連載恋愛小説『彼女にまた会うために、エゴたちが会議を始めた』②
第2章「返信という最初の試練」
①「すぐ返すな」派 vs「待たせるな」派
円卓に、再び集結するエゴたち。
【👑 議長型エゴ】が開口一番、言い放つ。
「本題だ。返信は“今すぐ”か、“時間を置く”か」
するとすぐに、両サイドから怒号の応酬が巻き起こった。
【💨 即レス正義型エゴ】
「スピードは誠意! 今すぐ返すべき! “会いたい”と言ってくれたんだぞ!?」
【🧊 余裕型エゴ】
「いやいや、焦りすぎは逆効果。“すぐ返ってきた=暇”と誤解されるぞ。じっくり構えろ」
【🔥 恋愛ファンタジー暴走型エゴ】
「3分後に返信! そして3分後に既読! これは運命だあああ!!」
【😤 対人戦略型エゴ】
「やめろ、落ち着け。3日ルールを守れ。主導権は、こっちが握るんだよ!」
……どの意見にも一理ある。どれも、ちょっと間違ってる気もする。
主人格である僕は、再びスマホを置き、コーヒーをすする。
気づけばもう2時間経っていた。
② 文面案、過去最多記録を更新
エゴたちが次にとりかかったのは、“返信の文面案”。
【📚 過去ログ照合型エゴ】が過去のLINE履歴を開く。
「あの時、こんな文面使ってたぞ。“こちらこそ、お久しぶりです”だな」
【🎩 スマート風エゴ】がノートを取り出し、メモしながら言う。
「“こちらこそ”を冒頭に。距離感を縮めすぎず、でも壁を作らない」
【🧠 校正ガチ勢型エゴ】
「句読点は? “です。”と“ます。”が混ざってる!トーンがブレてる!」
【🫣 過去トラウマエゴ】
「いや、そもそも文面よりも……なんか返信した瞬間に“あ、思ってたのと違った”ってなる未来が怖い……」
すると突如、メモアプリが文面案で埋め尽くされる。
パターンA:仕事帰りっぽい大人風
パターンB:懐かしさ強め“当時の雰囲気”をにじませる型
パターンC:ちょっとだけ距離を保った様子見返信
パターンD:素直な気持ちをストレートに伝える感情型
……メモのスクロールが止まらない。
③ ちょっと大人の余裕風案、爆誕
【😎 絶妙バランス型エゴ】が言う。
「これだ。
“お久しぶりです。連絡、ありがとうございます。ぜひ、お話しできたら嬉しいです”」
エゴたちが一斉にざわつく。
【📏 フォーマル重視型エゴ】
「丁寧だけど重くない! しかも、“会う”じゃなく“話す”で、プレッシャーを避けてる。天才か?」
【💘 回想美化型エゴ】
「でも……なんかよそよそしくない? これ、他人行儀って思われないかな?」
【🤹♂️ キャラ崩壊警戒エゴ】
「“嬉しいです”がクセじゃない? 俺たち、そんな表現ふだん使う?“ありがたいです”のほうがリアルじゃね?」
案の定、完璧文面も一巡して、全否定の嵐にさらされる。
【👑 議長型エゴ】
「……わかった。保留だ。一晩寝かせる。それが、我々の今の“最適解”だ」
スマホを閉じた僕の胸には、謎の達成感と、少しのモヤモヤが残った。
④「ご無沙汰してます。」が不自然に見えてくる病
深夜1時。メモアプリに、返信文案が20パターン以上並んだ。
そのうちの7割に使われていたのが、冒頭の一文。
「ご無沙汰してます。」
【🔍 逐語解剖型エゴ】が言う。
「“ご無沙汰”って……ちょっと堅くない? ビジネスメールみたいじゃない?」
【📚 過去ログ照合型エゴ】がデータを確認する。
「最後のLINEは10年前。“久しぶり!”って感じで終わってる。ギャップ大きすぎかもな」
【🧠 校正ガチ勢型エゴ】
「“ご無沙汰”を“お久しぶりです”に変えて、“です。”の前に読点入れよう。“お久しぶりです、。”」
【😵💫 ループ思考型エゴ】
「“お久しぶりです。”って、そもそもどのぐらい久しぶりのときに使うの? 1ヶ月? 1年? 10年!?」
【🔥 ファンタジー暴走型エゴ】
「“10年ぶりだね、君は変わらないね”って詩的に始めようよ!!」
【🤐 妥協できない型エゴ】
「何が正解か、わからなくなった」
気づけば、冒頭1行だけで1時間が過ぎた。
“たった一言”が、どうしてこんなにも重いんだ。
⑤ エゴたち、推敲中に人格崩壊
午前2時。
もはや誰が主人格かわからない。
「“ご連絡ありがとうございます”って入れると、“え? そんなにかしこまる?”って思われそう」
「“ぜひ、お話できれば嬉しいです”が媚びすぎてない?」
「“お会いできたら光栄です”……なんで、皇族相手みたいになってんだ俺?」
どこかのエゴが叫ぶ。
「もう、敬語そのものが不自然に思えてきた!!」
「『はい』って返すだけでよくない?」
「いや逆に、『俺だよ』でいけ!」
「むしろスタンプだけ送ろう!」
理性と混乱が渦巻く中、【🧠 冷静モード型エゴ】が呟く。
「本当は、伝えたいことなんて決まってるんだよね。“また会えて、うれしい”って。ただ、それが怖いだけだよね」
その言葉が空気を変えた。
一瞬、エゴたちが静まり返る。
誰も、何も言えなくなった。
⑥ 主人格「もう返せねぇ…」と白旗
スマホを手にして、何度目かわからないため息。
画面には、文案の断片だけが並んでいる。
「ご無沙汰してます」→削除
「ご連絡ありがとうございます」→削除
「ぜひ」→削除
「お話できれば幸いです」→削除
そのたびに、自己否定の刃が心を削っていく。
言葉って、こんなに難しかったっけ。
いや、伝えたい気持ちが本気だからこそ、怖いのか。
「もう、返せねぇ……」
口に出してみると、自分の声が思いのほか弱かった。
エゴたちの会議は、再び沈黙に包まれる。
【🧘♂️ 静観型エゴ】だけが、深く息を吐いた。
「よし、今日は寝よう。なにかを決めるには、静けさが必要だ」
ベッドに倒れ込んだ僕の耳に、LINEの通知音が鳴った。
一瞬で心臓が跳ねる。
でもそれは――ニュースアプリの通知だった。
「……寝よ」
静かな夜が、またひとつ、過ぎていった。
⑦ 救世主エゴ「三日寝かせ案」を提唱
翌朝。
昨夜の文案たちがスマホのメモに散乱したまま、僕はぼんやりと目を覚ました。
コーヒーをいれながら、エゴたちが再集合する。
【🧘♂️ 静観型エゴ】が口火を切る。
「ここまできたら、“熟成”させよう」
【👑 議長型エゴ】が頷く。
「つまり、“三日寝かせ案”か」
【🔥 ファンタジー暴走型エゴ】
「その間に彼女から追加連絡来たら!? “返信ないのは興味ないってことか…”って思われたら!?」
【🤓 誠実系エゴ】
「でも、焦って返すのは違う。“ちゃんと考えてます”っていう姿勢も伝わると思う」
【😶🌫️ 気にしすぎ型エゴ】
「既読ついてるからこそ、こっちの一挙手一投足が重いよね…」
結論はこうだった。
“三日間、返信はしない。だけど、その間に“いちばん自然な一通”をつくる”
エゴたちが静かに同意する中、僕はうなずいた。
「……この沈黙も、大事にしよう」
⑧ 返信ボタンが、まるで人生の分岐点
三日が経った。
不思議と、気持ちは落ち着いていた。
最終案は、たった三行だった。
「ご連絡ありがとう。驚いたけど、嬉しかったです。
久しぶりにお会いできたら、こちらこそ嬉しいです。」
装飾もない。
駆け引きもない。
それが、今の僕の“等身大”だった。
円卓に集うエゴたちは、誰も口を開かなかった。
ただ、静かに見守っていた。
送信ボタンに、指をかける。
鼓動が一拍、跳ねる。
「……これで、いいよな」
送信。
たった0.1秒のタップ。
だけど、それは“10年ぶりの物語”を始める音だった。
⑨ 送信後の「やっちまった感」
数分後。
スマホを放り投げた僕は、床に寝転んで天井を見ていた。
【😫 自己否定型エゴ】
「なんか、雑じゃなかった? “こちらこそ”の使い方、変じゃなかった?」
【🤔 冷静型エゴ】
「“ありがとう”が軽すぎたかもしれない……って今さら!?」
【🌀 反芻ループ型エゴ】
「“ご連絡ありがとう”がカジュアルすぎた。“ご連絡ありがとうございます”にすべきだったんじゃ……!」
【🗯️ 暴走停止型エゴ】
「落ち着け!! もう送った!!!!!」
自分で決めた文面なのに、直後のこの後悔。
“いちばん良い”返信なんて、たぶん存在しない。
だからこそ、これが“いちばんマシ”な一通だった――
そう信じるしかない。
なのに、スマホを見るのが怖い。
既読は? 返信は? 未読スルー? 既読スルー?
「なにしてんだろ、俺……」
でも、エゴたちが小さく言った。
「……これで、よかったよ」
⑩ そして、彼女からの「了解です」
その日の夕方。
何気なくスマホを開くと、LINEに通知がひとつ。
『既読 19:24』
そして、その下に
「了解です」
2文字、4音節。
短すぎる返信。
【💥 妄想爆発型エゴ】
「えっ!?これだけ!?!?」
【🥶 拒絶恐怖型エゴ】
「もう、会う気ないじゃん! “了解”って、業務連絡かよ!!」
【🤔 冷静型エゴ】
「でも、“OK”って意味だよ。否定はされてない」
【🌙 静かな核心型エゴ】
「……たぶん、彼女も迷ってるんだと思う。言葉を選んでる最中なんだよ」
この一通が、再会を約束するものなのか。
それとも、ただの社交辞令なのか。
僕には、まだわからなかった。
でも――
小さく、確かに思った。
「嬉しい」
再び円卓に静けさが戻る。
エゴたちの会議は、
また次の議題へと向かおうとしていた。
第1章は、こちらです⏬
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