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作家ものまね①

本作は、特定の作家の作風に敬意をもって執筆した「文学的実験」です。登場人物や物語はすべてオリジナルです。

はじめに

同じ短い文章でも、作家ごとにまったく違う表情を見せます。
今回は静月の自虐的な一文を素材に、歴史に名を刻む文豪や現代作家の作風を模してみました。
読者の皆さまには、文体の妙と空気感の違いを楽しんでいただければ幸いです。

静月風(原文)


静月は、今日もまた何も成し遂げられなかった。机に向かい、ただコーヒーを冷ますばかりだ。外の風は春めいているのに、胸の奥はまだ冬のままだ。


芥川龍之介風


机の上のコーヒーは、いつしかその熱を失っていた。外の空気は柔らかく、春の匂いを運んでくる。しかし胸の底には、未だ溶けぬ氷片が沈んでいる。それは彼の過去から離れようとしない。


太宰治風


どうして、こうも何もできないのか。机に向かうたび、ただ冷えきったコーヒーがこちらを見ている。外は春だというのに、私の胸の中には、まだ薄暗い雪が積もっている。


ヘミングウェイ風


コーヒーは冷たくなっていた。窓の外に春の風があった。胸の中には冬があった。それだけだ。


某現代作家風


朝からずっと机に向かっていたが、何も書けなかった。コーヒーは冷め、ジャズのレコードは同じ曲を二回かけ終えていた。外では春の風が吹きはじめていたけれど、僕の胸の中にはまだ小さな冬の町があった。


あとがき


作風というのは、文章の「味付け」や「呼吸」のようなものです。

同じ題材でも、誰が書くかで全く別の景色が立ち上がります。

このシリーズでは、文学の魅力を遊び心たっぷりに再発見しながら、

静月の文芸銀河に新たな星を増やしていきたいと思います。



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