『終わりの音を聴いた少年⑦』
第7章 声の主
第三の鐘が鳴ったあと、僕は目を覚ました。
布団の中、呼吸が浅い。
でも、心臓は静かに打っていた。
「……記憶の中の扉を、開けた」
そう思った瞬間、スマホが震えた。
通知はない。ただ、画面にひとことだけ、表示されていた。
「待ってたよ」
僕は凍りついた。
夢と現実が、明らかに繋がっている。
この“声の主”は、まだどこかにいる。
学校。
今日は空気が違っていた。
廊下も、教室も、音が“少しだけ遠い”。
「感じる?」
ミユが廊下の窓から外を見ながら言った。
「え?」
「この世界、少しずつ音が“浮いて”きてる。地に足がついてない感じ」
「……影のせい?」
「それもあるけど、“約束の声”が動き出してる。扉を開けたから」
そのとき、アキラが走ってきた。
「ルイ! ミユ! 聞いて!」
「どうしたの?」
「さっき、昇降口に誰もいなかったのに……
ロッカーの中から、“歌”が聞こえてきたんだ」
「歌?」
「うん。すごく静かな……でも、どこか懐かしい声」
僕は、昨日の夢を思い出した。
「……もしかして、“あの子”の声?」
アキラはこくんと頷いた。
「歌の最後に、“約束、忘れてないよ”って聞こえた」
その言葉を聞いた瞬間、僕の頭の中に、場面が蘇った。
小学校1年生。
放課後、教室の隅。
女の子が、僕に言った。
「来週の金曜日、ピアノの部屋で待ってるね」
「ルイくんが来てくれたら、わたし、勇気出せると思う」
でも僕は――
行けなかった。
忘れてたわけじゃない。
怖くて、行けなかった。
その子は、あの日のまま――
待ち続けていたんだ。
「その子の名前、覚えてる?」
ミユが僕に尋ねた。
僕は唇を噛んだ。
「……わからない。でも……“声”だけは、ずっと覚えてる」
その瞬間、校内放送が鳴った。
いつもと違う音。
でも、聴き覚えのある**“旋律”**。
あの歌――あの子が歌っていたメロディ。
「……呼ばれてる」
「どこに?」
「ピアノの部屋。……もう一度、“約束を果たしに行く”んだ」
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