ひとつの物語、三つの笑い①
はじめに
直近で制作した五つの短編小説――ロッキード事件、プリクラ、SNS誹謗中傷、明治維新、フランス革命。
これらは本来、恋愛やホラーなどの異なるジャンルで描かれた物語ですが、今回はその核となるテーマを「笑い」に置き換えてみました。
コント・漫才・落語という三つの形式で、一つの題材がどう変化するのか。
真剣な物語が、軽妙なやり取りや語り口によって別の顔を見せる――そんな創作の化学反応をお楽しみください。
ロッキード事件
① コント
「社長、これが例の契約書です」
「……白紙じゃないか」
「だから裏に書きました」
「表に書け!」
② 漫才
「ロッキード事件ってさ、飛行機の話やろ?」
「そうやけど……」
「ほら、墜落したんか?」
「墜落したのは政治家の信用や!」
③ 落語
「おい、熊さん。ロッキード事件って知ってるか?」
「なんですかそれ、飛行機か何かで?」
「そうだ、飛行機の会社がな、日本の偉い人にお金を渡して……」
「おお、そりゃ景気のいい話だ」
「景気がよかったのは受け取った人だけで、あとは景気悪くなったんだよ」
「へぇ……で、その飛行機はどうなったんです?」
「飛行機は飛んで、政治家は落ちた」
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プリクラ
① コント
「この写真、私じゃないんですけど」
「いやいや、笑ってるのあなたじゃないですか」
「笑ってません、顔が勝手に……」
「プリクラは幽霊対応してません!」
② 漫才
「プリクラってさ、落書きできるやん」
「そうやな」
「彼女の顔に“バカ”って書かれててん」
「別れろ」
③ 落語
「八っつぁん、あんたこれ見なよ」
「お、写真か。……あれ? 女が四人写ってるじゃねぇか」
「そうだよ。だけど撮ったのは三人なんだ」
「へぇ、じゃあこれは幽霊か?」
「違う違う、いじめで顔合成されたんだ」
「そりゃひでぇな」
「でもよ、そいつらプリクラ機の後ろでニヤニヤしてやがって……」
「へぇ、それで?」
「捕まったのは……その笑ってた顔だけだったんだ」
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SNS誹謗中傷
① コント
「お前、SNSで俺のこと悪く書いただろ」
「書いてません。AIが勝手に……」
「便利な時代になったもんだな」
② 漫才
「SNSで誹謗中傷されてんねん」
「無視したらええやん」
「でも“既読”ついてるやん」
「LINEか!」
③ 落語
「ご隠居、このSNSってのは便利ですなぁ」
「便利だが、怖い面もある」
「なんで?」
「ちょっと悪口書くだけで、訴えられることもある」
「へぇ……じゃあ褒めればいいんだ」
「褒めても“嫌味”だと受け取られたら同じだ」
「じゃあ何を書けば?」
「書かないのが一番安全だ」
「……それ、SNSじゃなくて沈黙ですな」
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明治維新
① コント
「お客さん、散切り頭にします?」
「流行ってるのか?」
「はい、町中みんなです」
「じゃあ……やめとく」
② 漫才
「明治維新ってな、文明開化やで」
「ほう」
「髪切って、洋服着て……」
「お前は心まで切り替えろ」
③ 落語
「ご隠居、床屋ってのは昔からあったんですかい?」
「いや、明治になって髷を切るようになってから大繁盛したんだ」
「へぇ、じゃあみんな行列ですな」
「そうだ、散切り頭にするのが粋だとされた」
「でも散切りにしたら女房に逃げられたって話も」
「なんでだ?」
「顔がはっきり見えちまったそうで」
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フランス革命
① コント
「ギロチンの角度、もうちょっと上げます?」
「お前なぁ、人の最期で見栄えとか……」
「じゃあ旗でも持ちます?」
「お前ほんとに処刑人か!?」
② 漫才
「フランス革命てすごいよな。自由・平等・博愛やで!」
「お前、博愛ってわかってるんか?」
「好きな人は全員平等に愛すってことや!」
「それ浮気や!」
③ 落語
「旦那、広場で何かやってますね」
「ああ、処刑だ」
「うわぁ……でも人がいっぱい」
「革命の象徴だそうでな」
「でも、あの台に上がってるのは……」
「昨日まで『自由!平等!』って叫んでたやつだ」
「へぇ……じゃあ今日からは?」
「『博愛!』って叫ぶ暇もなく……」
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