『内側の住人 ーお前は、もう、喰われているー②』
第2章 歪んだノート
あれから、僕は“部屋の中の何か”を避けるようになった。
でも、避けられなかった。
朝起きると、机の上にノートが置かれていた。
僕のじゃない。こんなノート、買った覚えもない。
中をめくると、薄い鉛筆の文字で、こう書いてあった。
「また来てくれて、ありがとう」
え?
何のことだ?
ページをめくるたびに、言葉が続いていく。
「きのうの話、面白かった」
「今日も楽しみにしてる」
「やっぱり、君が来ると嬉しいな」
僕はゾッとした。
こんな会話、した覚えはない。
けれどその文字は、僕の字だった。
しかも日付を見ると、昨日も一昨日も――
いや、1ヶ月前から毎日書いていたことになっていた。
でも、記憶がない。
ページの最後に、赤いボールペンでこう書かれていた。
「ねぇ、どうして最近、僕のこと無視するの?」
手が震えて、ノートを閉じた。
そのとき、後ろから風が吹いた。
窓は閉まっていた。
でも、**誰かの“息”**のような風だった。
僕の耳元で、小さく囁いた。
「読んでくれて、ありがとう。明日も、話そうね」
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