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『内側の住人ーお前は、もう、喰われているー⑦』

第7章 封じられた絵日記

 

「この日記、開けない方がいい」

俺にそう言ったのは、古い記憶の中の“誰か”だった。
でも気がつけば、手には古びた絵日記が握られていた。

表紙はボロボロで、水に濡れたように歪んでいた。
最初のページには、クレヨンで描かれた笑顔の少女。
その下に、震えるような文字。

「きょう、パパが わらってくれた」

 

ページをめくるごとに、笑顔が減っていった。
色も、どんどん濁っていく。
ページの端がちぎれていたり、文字が掠れて読めなかったり――

そして、ある日付のページで、手が止まった。

「きょう、パパが いなくなった」
「ずっと、ずっと、まってるのに」
「どこにも、いないのに」
「なんで へいきなかおしてるの?」
「ねえ、ここにいるのに、どうして」

そのあたりから、日記の文字が、すべて赤いクレヨンになっていた。
ページの最後は、ただ一言だけ。

 

「おかえり」

 

日記を閉じた瞬間、背後で“ギィ”と音が鳴った。
赤い部屋のドアが、勝手に開いた。
何かが、こちらを見ていた。

 

俺は思い出した。
忘れていたはずの、あの声を。
あのぬくもりを。
そして、あの日――何があったのかを。

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