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掌編│私のどんなとこ好き?

「私のどんなとこ好き?」

彼女が聞いた。

僕は少し考えてから答え始めた。

「まず、コンビニで会計終わったあと、必ず店員さんに“ありがとうございます”って言うところ」

彼女は少し笑った。

僕は続けた。

「それから、レストランで水をこぼしたとき、店員さんが来る前に自分のハンカチ出して拭こうとするところ」

彼女は黙って聞いていた。

「あと、道で子どもが転んだとき、反射的にしゃがんで“痛かったね”って言ったところ」

僕は少し考える。

「電車でお年寄りに席を譲るとき、周りに気づかれないように立つところ」

彼女はずっと微笑んでいた。

僕は続ける。

「僕が仕事で落ち込んでるとき、“大丈夫?”って聞くんじゃなくて、“ご飯食べよ”って言ったところ」

「それから、猫見つけると必ずしゃがむところ」

「あと、映画見て泣いたあと、恥ずかしそうに“泣いてないよ”って言うところ」

「それから、僕のくだらない話でも、ちゃんと最後まで聞くところ」

「それから、怒ってるときでも“ちゃんと話そう”って言うところ」

「それから、僕が風邪ひいたとき、ポカリとゼリーとプリンを全部買ってきたところ」

「それから、駅の階段で前の人が重そうなスーツケース持ってると、黙って持つの手伝うところ」

「それから、僕の誕生日に、去年僕が“この本面白そう”って言ったの覚えてて買ってきたところ」

僕はまだ続けた。

「それから、笑うとき右目が先に細くなるところ」

「それから、怒ると敬語になるところ」

「それから、真剣に考えるとき、左の眉だけ少し上がるところ」

彼女はずっと、嬉しそうに聞いていた。

本当に嬉しそうに。

僕はまだ言った。

「あと、今」

「僕の話を途中で止めないで、ずっと嬉しそうに聞いてるところ」


僕が言い終わると、彼女は少し笑った。

そして言った。

「そんなふうに、私のことを一生懸命観察してるところ」

「そういうとこ、好き」

彼女が、少しからかうように笑って聞いた。

「嫌いなところは?」

僕は少し考えてから言った。

「まだ見つからない」

彼女は少し笑った。

僕は続けた。

「もし見つかったら、そのときも本音で話す」

「約束する」


彼女は少し黙ってから笑った。

「まだ覚えてることあるの?」

僕はうなずいた。

少し考えてから言う。

「たくさん、あるよ」

「家着いたら言う」

彼女は笑った。


あとがき


好きだから観察する。

観察したことが本音だと思う。

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