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『内側の住人ーお前は、もう、喰われているー④』

第4章 赤い部屋のドア

 

その夢の中に、毎晩のように現れるようになった。
白い廊下。冷たい空気。奥へ奥へと続く通路。
そして、その先に――真っ赤なドアが立っている。

近づくと、心臓がやけにうるさく鳴る。
ドアの前に立つと、吐く息が白くなった。
ドアノブに手をかけようとすると、金属がじりじりと熱を持っていた。

まるで、「開けるな」と言われているみたいだった。

 

ある晩、ついに俺はそのドアを開けた。

中は真っ暗だった。
……と思ったのは最初だけ。
奥に、何かが“立って”いた。

赤いワンピースを着た、小さな少女。
顔は影になっていて見えない。
ただ、こちらをじっと見つめていた。

 

「あなたは、“わたし”を閉じた」

 

少女が、そう言った。
その瞬間、部屋の壁が一斉に赤く染まり、叫び声が響いた。

「あなたは、わたしを見殺しにした」
「あなたは、あのとき――」

少女の声が、何重にも重なって、耳を塞ぎたくなる。
その声の中に、ひとつだけ、はっきり聞こえた言葉があった。

 

「わたしの名前、覚えてる?」

 

そこで、目が覚めた。

汗びっしょりだった。
ベッドの下から、冷たい風が吹いていた。
そして――部屋のドアの外から、「コン、コン」とノックの音がした。

時計は午前3時3分。
ドアを開ける勇気は、やはりなかった。

 

だが、あの赤いドアは、夢の中だけのものではなくなりつつあった。
俺の“現実”にも、何かが侵食してきている。

 

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