『神々のブラックカンパニー』第2話:終わらない“残業構文”
終わらない“残業構文”
──午後6時。
定時の鐘は鳴ったはずだった。
しかし、誰ひとりとして席を立たない。
いや──立てなかった。
ゼウス(総務部長)は、雷のような声で叫ぶ。
「ここからが本番だ! “アフター定時会議”を始める!!」
アマテラスは机に突っ伏し、
「……やっと光が戻ると思ったのに……」
と、光輪を消しかけていた。
一方、営業部のインドラは電話を握りしめる。
「お客様! “雨乞い契約”はまだ残っております!
あと三件!あと三件で私の心も土砂降りです!」
窓の外は、豪雨で街が水没し始めていた。
開発部のオーディンは片目を閉じ、深いため息をつく。
「……バグは夜に増殖する。
すなわち、この残業こそが“終末の詩”……」
その横で、経理部のトト神は青ざめた顔で叫んだ。
「決算書が……動かない!
Excelの呪文が“無限ループ”に陥ったぁぁ!!」
そして、コピー機の上で丸まっていたバステトだけが、
ごろりと寝返りを打ち、ひと言。
「にゃー(訳:残業代、出ない)」
🐈⬛──こうして神々は、またしても「定時」という幻を追い続けるのであった。
──時刻は、すでに午後10時。
外の街灯は沈黙し、オフィスだけが不気味に光っていた。
◆残業の呪縛
アマテラス(広報部)は、机に突っ伏したままつぶやく。
「……私の光……もう“残業灯”としてしか扱われない……」
ゼウスは稲妻を走らせ、社員に喝を入れる。
「今日こそ“雷のKPI”を達成するぞ!」
会議室の壁に貼られたホワイトボードには、
赤字でこう書かれていた。
【定時退社率:0%】
◆終電を賭けた戦い
オーディン(開発部)は片目を閉じ、キーボードに手を置く。
「……今夜中にバグを直さねば、明日の朝刊に“システム神話崩壊”と載る……」
だがその手元、画面に映ったのは。
「エラー404:運命が見つかりません」
「……運命すら、バグるのか」
◆豪雨営業
インドラ(営業部)は客先へ電話をかけ続ける。
「ええ、今なら“豪雨割”がつきます!
オプションで“落雷サービス”も!」
窓の外では、スーツ姿の彼が呼んだ豪雨で街全体が洪水寸前。
同僚たちはデスクの上に避難していた。
◆経理の青き死
経理部のトト神はパピルス帳簿を握りしめ、叫んだ。
「まただ! 青い画面だ! “ブルースクリーン・オブ・冥界”だぁぁ!」
再起動するたびにExcelのセルが冥界文字に変換されていく。
「ここに書かれているのは……我らの残業時間!? 無限……だと……!?」
◆猫は知っている
コピー機の上で寝ていたバステトは、ゆっくりと目を開ける。
「にゃー(訳:人間は帰れると思ってるの?)」
その瞬間、時計の針が“午前0時”を指した。
🐈⬛──神々よ。
なぜそこまで働くのか。
その問いに答えられる者は、まだいない。
🐈⬛──神々は本来、奇跡を起こす存在であった。
だがこの会社では──
奇跡は「定時退社」に置き換わる。
雷も、太陽も、雨も、叡智も、
そして猫の癒しも──
すべては“業務効率”の名の下に使い潰されていく。
神々が求めるのは、もはや神話の栄光ではない。
ただ「退勤ボタン」を押す、その一瞬の自由であった。
🌙次回予告
──午前2時。
会議室に貼られた紙には、恐怖の文字が躍っていた。
「※翌朝までに“神話的提案資料”を仕上げろ」
眠気に勝てず崩れ落ちるアマテラス。
雷をコピー機に誤爆して書類を焼き尽くすゼウス。
そして開発部では、オーディンがとうとう“禁断のGit神話”に手を出す……!?
次回、『神々のブラックカンパニー』
第3話:無限に続く“資料地獄構文”
──プレゼンとは、神話以上に残酷である。
