誰からも好かれようとしていた、私へ。
「自分を大切にする」を、私自身にも。
「誰からも好かれる人になりましょう」
子どもの頃、そんな言葉を聞いたことはありませんか。
私たちの世代は、学校や家庭の中で、
人に嫌われないこと。
周りと仲良くすること。
相手の気持ちを考えること。
そんな教えを大切にしながら育ってきたように思います。
もちろん、人を思いやることは大切です。
けれど、大人になった今、私は時々考えます。
「誰からも好かれる」とは、どういうことなのだろう。
すべての人の考えに合わせることなのか。
反対意見を言わず、相手が望む自分でいることなのか。
傷つく言葉を向けられても、笑顔で受け止め続けることなのか。
誰からも好かれようとするために、自分の気持ちを後回しにし続けなければならないのだとしたら。
一度、立ち止まって考えてもよいのではないかと思うのです。
誰からも好かれることは、きっと難しい
私はカウンセリングの場でも、
「まずは、自分を大切にできるようになってほしい」
という視点を持ちながら、関わらせていただいています。
そんな中でお伝えすることのひとつが、
誰からも好かれることは難しい
ということです。
人は、それぞれ違う経験をしてきました。
育った環境も、傷ついてきた場所も、大切にしている価値観も違います。
同じ言葉を聞いても、安心する人もいれば、苦しくなる人もいます。
だから、すべての人に同じように理解してもらうことは、簡単ではありません。
もちろん、違う意見に触れたとき、
「自分の考えだけが正しいと思い込んでいないだろうか」
「相手の言葉にも、受け取れる部分があるだろうか」
と、自分を振り返ることは必要だと思います。
相手の考えに耳を傾け、自分の考えを見直す柔軟さも大切です。
けれど、
相手の意見を受け入れることと、
自分を曲げ続けることは、同じではありません。
相手を理解しようとすることと、
一方的に責められる言葉を受け取り続けることも、同じではありません。
違いを受け入れるために自分を小さくし続ければ、いつかこころは疲れてしまいます。
正しさにも、受け取れる時期がある
たとえ、誰かの言葉に正しい部分があったとしても、人にはそれぞれ受け入れられる段階があります。
傷ついたばかりで、言葉を整理できないとき。
頭では分かっていても、気持ちが追いつかないとき。
こころの準備が、まだできていないとき。
人は、正しいことを伝えられたからといって、すぐに受け入れられるわけではありません。
カウンセリングでも、正しい答えを一方的に渡すだけでは、人のこころは動きません。
本人が自分の気持ちに気づき、
「今なら少し考えてみてもよいかもしれない」
と思える時期を待つことも、大切な関わりです。
正しさを持つことと、
相手に正しさを理解するよう迫ることは違います。
「正しいのだから、受け入れるべきだ」
と一方的に求めれば、正しさは時に押しつけへと変わります。
人を大切にするとは、相手を自分の納得する場所まで動かすことではありません。
今は分かり合えない部分を残したまま、少し距離を取ることも、人を大切にする方法のひとつなのだと思います。
答えのない余白を、抱えられるようになった
最近、Amazon Prime Videoで観た『クロエマ』や『ミッドナイトタクシー』が、とても印象に残りました。

私は、まだ物語の続きがあるのだと思っていました。
けれど、私が観たところでは、白黒をつけないまま、人間関係の続きを見る人に委ねるような終わり方だったのです。
正直に言えば、少し歯がゆさが残りました。
「結局、どうなったの?」
「答えを教えてほしい」
以前の私は、曖昧なまま終わることが、あまり得意ではありませんでした。
白か黒か。
正しいか間違いか。
続くのか、終わるのか。
はっきりさせたくなるところがありました。
絶対思考が強かったのだと思います。
けれど今は、
「分からない部分が残っていてもよいのかもしれない」
と思えるようになりました。
答えの出ない歯がゆさを抱えたまま、自分なりに物語を受け取れるようになった。
自分でも、少し成長したものだと思います。
人との関係にも、似たところがあるのかもしれません。
すべてを分かり合わなくてもよい。
相手に自分の考えを理解してもらえないまま、距離を取ることもある。
自分も、相手の考えを完全には理解できないことがある。
答えの出ない部分を無理に埋めず、相手を変えようとせず、分からないまま残しておく。
そんな余白を抱えられることも、自分と相手を大切にすることなのだと思います。
そして今回、私にも、答えを出そうと頑張り続けるのではなく、少し距離を取る必要があると感じる出来事がありました。
私は、自分を大切にできているだろうか
最近、質問箱を通して、たくさんのご相談やご意見をいただきました。
中には、
「そんな考え方もあるのだな」
と学ばせていただくものもありました。
一つひとつ読ませていただき、私なりに考え、見直せるところは見直し、修正できるところは修正してきました。
言葉を届ける仕事をしている以上、受け取ったご意見から学ぶ姿勢は、これからも持ち続けたいと思っています。
一方で、個別の内容について詳しく書くことは控えますが、同じ趣旨の言葉を繰り返し受け取る中で、ふと気づいたことがあります。
私は普段、
「自分を大切にしてください」
とお伝えしています。
それなのに私は、自分自身を大切にできているだろうか。
相手の思いを理解しようとして、必要以上に言葉を抱え込んでいなかっただろうか。
「心理士なのだから受け止めなければ」
「発信しているのだから、どんな言葉にも向き合わなければ」
そんな思いで、自分のこころに生まれたざらつきを、後回しにしていなかっただろうか。
自分に問いかけてみると、少し無理をしていた自分に気づきました。

心理士も、一人の人間です
心理士だから、どんな言葉も受け止め続けなければならない。
私は、そうは思いません。
心理士も、一人の人間です。
こころがあります。
傷つくこともあります。
疲れることもあれば、言葉を受け取る余裕がない日もあります。
相手の思いを受け止めることは大切です。
けれど、何度も繰り返される言葉を、匿名のまま受け取り続けることまで「優しさ」と呼ばなくてもよいのではないかと思っています。
受け取らないと決めること。
距離を置くこと。
やり取りの方法を変えること。
どれも、相手を否定するためではありません。
自分のこころを守りながら、これからも安心して言葉を届け続けるために必要な境界線です。
境界線を引くことは、相手を切り捨てることではありません。
誰かを大切にしたいからこそ、自分がすり減りきってしまう前に立ち止まり、無理のない関わり方を選び直す。
そんな選択もあるのだと思います。

質問箱を、しばらくお休みします
今回、私は自分を大切にすることを優先しようと思います。
そのため、質問箱はしばらくお休みすることにしました。
質問を送ってくださった方や、温かな言葉を届けてくださった方には、こころから感謝しています。
質問箱そのものを否定したいわけではありません。
今の私には、匿名で届くさまざまな言葉を受け取り続ける形よりも、お互いが安心できる方法を選ぶ必要があると感じました。
今後は、公式LINEや個別相談なども活用しながら、
言葉を送る方にとっても、受け取る私にとっても、安心してやり取りできる形を考えていきたいと思っています。
質問箱を閉じることは、誰かとのつながりを閉ざすためではありません。
これからの温かなつながりを、大切に育てていくための選択です。
「自分を大切にする」を、言葉だけにしないために
自分を大切にすることは、
いつも穏やかでいることでも、
嫌なことから目をそらすことでもありません。
自分のこころに生まれた小さな違和感に気づき、
「私は、今どう感じているのだろう」
「何を守りたいと思っているのだろう」
と、自分に問いかけることです。
そして必要なときには、距離を置く。
断る。
今までのやり方を変える。
そんな小さな選択を、自分に許していくことなのだと思います。
私自身も、まだ練習の途中です。
けれど今回、
「自分を大切にしてください」
という言葉を、誰かに届けるだけではなく、私自身にも向けてみることにしました。
誰かを大切にすることと、自分を大切にすることは、どちらか一方を選ぶものではありません。
その両方を大切にできるあり方を、これからも探していきたいと思います。
もし今、誰かの期待に応え続けることに少し疲れているなら。
今日すぐに関係を変えなくても大丈夫です。
まずはこころの中で、ひとつだけ問いかけてみてください。
「私は本当は、どう感じているのだろう」
答えがすぐに見つからなくてもかまいません。
自分の気持ちを置き去りにせず、立ち止まって耳を傾けた瞬間から、
「自分を大切にする」という小さな実践は、もう始まっています。
これからも、どうぞよろしくお願いいたします。
今の自分に合う支え方を探したい方へ
こころの状態によって、必要な支え方は異なります。
今の気持ちを少し整理したい方。
自分の感じ方や考え方の傾向を知りたい方。
医療機関や対面での支援につながる必要がある方。
どれが正しい、間違っているということではありません。
今の自分に合う場所を選ぶことも、自分を大切にする一つの方法です。
🌿 支援の全体像を知りたい方へ
私が大切にしている支援の考え方と、状態に応じたメニューをまとめています。
「読むことから始めたい」
「気持ちを整理したい」
「専門的な相談を受けたい」
という段階に合わせて、ご覧いただけます。
▶︎ お仕事内容・ご利用料金のご案内
🌱 日常の出来事や気持ちを整理したい方へ
気持ちノートアプリを使い、出来事・考え・感情・からだの反応・行動を整理しながら、心理士の視点を受け取る伴走モニターを募集しています。
診断や治療を目的としたものではありませんが、
「一人で考えていると、同じところをぐるぐるしてしまう」
「自分の中で何が起きているのかを整理したい」
という方が、自己理解を始めるための選択肢です。
▶︎ 気持ちノートアプリで始める自己理解の伴走モニター
🕊️ つらさが深く、どこに相談すればよいか迷っている方へ
心身の反応が強いときや、日常生活に大きな影響が出ているときは、アプリや匿名のやり取りだけで抱えず、医療機関や対面の専門的な支援につながることも大切です。
必要な支援の違いについて、こちらの記事にまとめています。
▶︎ 「助けて」という声が、届くべき場所について


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