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マンションと節税 マンション通達を解説

今回は私の本業である税理士目線の話をひとつさせていただきます。

近年話題となった「マンション節税」についてです。

これは、マンションの相続税評価額と実際の取引価格(時価)との乖離を利用し、相続税を圧縮する手法です。

とくにタワーマンションでは、
市場価格は高額である一方、相続税評価は固定資産税評価額をベースに算定されるため、相対的に低くなりやすい傾向があります。

その結果、
現金をマンションに替えるだけで課税価格が下がるという構図が生まれ、富裕層を中心に広く活用されてきました。

もっとも、この仕組みは「課税の公平性」という観点から問題視されます。

そこで国税庁は、
いわゆるマンション通達を改正し、
令和6年1月1日以降の相続・贈与から新ルールが適用されています。

改正のポイントはシンプルです。
相続税評価額が市場価格の60%未満となる場合、一定の計算により60%程度まで引き上げる(補正する)

つまり、
評価が低すぎる場合は、一定水準まで時価に近づけるという考え方です。

この補正は、
次の4つの要素をもとに計算されます。

  • 築年数

  • 総階数

  • 所在階

  • 敷地持分割合

一般に、
築浅・高層・上階・敷地持分が小さい(タワマンに多い)
といった条件ほど、乖離が大きいと判断される傾向があります。

ここで実務的に見逃せないポイントが2つあります。

① 市場価格は「平成30年ベース」
通達上の市場価格は、コロナ禍の影響を排除するため平成30年を基準にしています。
一方で、マンション価格の上昇は令和に入ってからが本番です。
そのため現状では、
改正後でも一定の乖離が残り得る構造になっています。

② 補正計算に「立地」が入っていない
マンションの価値は本来、エリアや駅距離といった立地要因に大きく左右されます。
しかし、この補正計算には立地が含まれていません。
結果として、都心の人気エリアでは
補正後でもなお評価と時価に差が残る可能性があります。

実際に、マンションの類型別に乖離率を試算した例を見ると、その傾向ははっきりしています。

  • 都心のタワーマンション:5.2

  • 都心のワンルーム:3.3

  • 近郊都市のタワーマンション:3.1

  • ビンテージマンション:2.3

  • リゾートマンション:1.2

例えば乖離率5.0であれば、
1億円の物件が評価額2,000万円程度になるイメージです。

この数字を見ると、

  • 評価の基準が過去(平成30年)にあること

  • 立地が考慮されていないこと

この2点が、現在の乖離を生んでいる要因であることが見えてきます。

税制は単なるルールではなく、
市場とのズレを内包した“ひとつの見方”でもあります。

マンション通達の改正は、そのズレを是正する試みではありますが、
完全に解消したわけではありません。
むしろ視点を変えれば、
どこに歪みが残っているかを示しているとも言えます。

税理士としてこのテーマを見ると、
単なる節税テクニックの話ではなく、
制度と市場のズレが、どのように価格や行動に影響を与えるのかという、もう一段深い構造が見えてきます。

マンションを「資産」として考えるうえで、
こうした視点もひとつの参考になるかもしれません。

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