逆転人生裁判 第三話

第三話「審議開始」 

〇ゼルスダム・闘技場内

ヴァーチュ、平野の背後を指さす。

ヴァーチュ「お前が指示したな」

平野の後ろに霊(グレゴリー・ノヴァ{享年49})が出現。

ヴァーチュ「そんなに私に復讐を果たしたいのか」

グレゴリー「復讐ね…違うな。私はただ」

グレゴリー、平野の肩に手を置く。

グレゴリー「彼を死なせたくない。真実を追い求めるものとして」

ヴァーチュ「真実を追い求める?どうやらくだらない妄想に取り憑かれたか」 

グレゴリー「好きなだけ言え」

裁判官「何だかもう開戦していますが…改めてルームKO、開幕します!!」 

観客「うぉぉぉぉぉ!!」 

観客から「平野」コール。 

平野「さぁまずは事件の概要からだ。まずは今回の被害者はグンゼ・フィラリア。被害者はアパートの部屋で首を絞められた状態で発見された。最後に被害者を見たのが夕方6時半。よって犯行は夜7時以降から発見までの時間。台所から睡眠薬が見つかり犯人は被害者が睡眠薬を飲んだ後に殺害したと思われる。依頼人二人とも同じアパートに住んでいる」 

深呼吸するヴァーチュ。 

ヴァーチュ「では私の陳述から述べましょう。あなたの依頼人、被害者の騒音に悩まされていましたよね?大家さんから聞いておりますよ。現に新たな引っ越し先の物件も見ていた話も聞いております。あなたには殺す動機があるのですよ」 

平野「異議あり。動機はあっても依頼人は引きこもりです。他人とのやり取り自体極力避けていた。今回の死因は窒息死です。対話が苦手な依頼人がわざわざ相手の首を絞めて殺す行為は選びません。それに」 

平野、ポケットから睡眠薬を取り出す。

平野「この睡眠薬、あなたの依頼人さんも同様な物持っていますよね?」 

ヴァーチュ「ほう、証拠は?」

平野「近所の薬局で聞いてみたんです。この睡眠薬を最近買いに来ている人は居ませんかって。そしたら殺害に使われたと思われる睡眠薬って近くのクリニックで受診した際に処方される薬ですって。あなたの依頼人はクリニックへ定期受診しています。睡眠薬を手に入れるのも容易ではないですか?」 

ヴァーチュ「きちんと調べているようですが…」 

鼻で笑うヴァーチュ。 

ヴァーチュ「あなたの言う真実を教えますよ」 

ヴァーチュの周りに城が出現する。 

ヴァーチュ「裁きの門。十戒」 

城から矢が出現。 

ヴァーチュ「鳳仙花」

城から矢が降り注ぐ。被弾し出血する平野とメシュード。

平野「ぐぅ!!」

グレゴリー「おい、平野さん!何で避けなかった!!今のも避けられたぞ!!」

平野「依頼人だけ被害に遭わせる訳にはいきません」

城を解除するヴァーチュ。

ヴァーチュ「私の反証といきましょう。先ほど『引きこもりは殺すなら首を絞める行為を選ばない』という話が出ましたが、それってあなたが部屋で『直接』殺す場合に限られませんか?」

平野「どういうことだ?」

ヴァーチュ「別に首を絞める行為は家の中でやらなくても成立するって話です。あなたの依頼人の部屋から紐を発見しました。これは2階の部屋にまで伸ばしても余裕で余る長さです。彼は幻聴が始まると足音を踏み鳴らし、テーブル上にある睡眠薬を飲みます。あなたは階下に居たからこのルーティンをご存知でしょう?その時間に合わせて紐が部屋にあれば彼は紐を掴み首に巻く。そして巻いた瞬間、思いっきり紐を引っ張れば自然と首は絞まり被害者の顔を見なくても殺害可能です」

平野「何を根拠に…」

ヴァーチュ「あなたクリニックで話を聞いていないのですか?薬局で話を聞いて終わらせるなんて詰めが甘いですね。被害者もクリニックの定期受診者です。主治医からの供述では被害者は幻聴を聞くと落ち着かせるためにと丸いものに手を伸ばし、首に巻いてしまう癖があります。おそらく昔、首輪をつけられて育てられた環境が大きいのでしょう。だから被害者の部屋には紐や伸縮性のあるものが置いていないんです。首に巻いて万が一絞まってしまったら大変ですからね。そして階下のメシュードさんはその習性を知っています。なぜか?それは平野さん、いくらあなたでもわかるでしょう?」

平野「主治医の息子だからとでも言う気か?」

ヴァーチュ「ご名答。いくら引きこもり状態でありながらも父にとっては大切な息子です。息子が困っていたら手を差し伸べたくなるでしょう」

平野「異議あり。まずその理論なら父が息子を嵌めるためにわざと習性を教えたことになるだろ?」

ヴァーチュ「えぇ、そうですよ」

平野「…はぁ?何を言ってやがる」

ヴァーチュ「あなたの主張の通り、父親が嵌めたんですよ。だって引きこもりの息子が居るクリニックの受診受けたいですか?自分の息子のメンタルもコントロール出来ていないのに他人のメンタルを回復させられますか?できませんよね?」

平野「さっきから妄想をペラペラと…」

ヴァーチュ「まだ私の主張は終わっていません。被害者はかなりクリニックでも問題行動が多かったんです。だから被害者の処理もどうにかしたかった。そんな矢先に息子からの相談。これは父親にとって都合が良い展開。一気に厄介ごとを二つ片付けられるんですからね」

平野「いい加減にしろ!!」

メシュード「もういい!!」

静まり返る闘技場。メシュード、涙を流す。

メシュード「もういい…もういいんだよ…」

平野「メシュード…」 

ヴァーチュ「これが真実ですよ、平野さん」 

ヴァーチュ、刀を抜く。

平野「これが真実…?」

平野、メシュードを睨む。

平野「お前が折れてどうすんだよ!!」

メシュード「平野…」

平野「お前は俺に言っただろ!殺していないと!やってもない罪を背負うんじゃねぇ!!」

メシュード、涙を流し俯く。

平野「おい、あんた」

ヴァーチュ「なんだ?」

平野「俺はこれが真実とは認めねぇ」

ヴァーチュ「それは…」

平野の首が飛ぶ。

ヴァーチュ「あなたが生きてる時に話しましょうか」

ヴァーチュ、刀を収める。

ヴァーチュ「さぁ、審議はここで…」

ヴァーチュ、左腕を見る。袖から大量の血。

ヴァーチュ「…は?」

平野の声「どうしたんだよ?」

ヴァーチュ、平野を見る。

平野「突然、自分の腕なんか切って?」

ヴァーチュ、跪く。

ヴァーチュ「貴様…何をした!?」

平野「さぁな」

ヴァーチュ、ハッとする。

ヴァーチュ「まさか…一人だけじゃないのか!?」

平野の後ろに現れるグレゴリーとトゥウィッカ・レイゾーン(享年56)。

平野「一つ良いこと教えてやるよ。俺は死者と会話が出来るんだよ。俺がお前と闘うって聞いたらこいつらはさ、自ら協力したいって言ってくれたんだよ」

平野の後ろに無数の霊。嘲笑する平野。

平野「恨まれてる奴って大変だな」

ヴァーチュ「こいつ…!」

平野「さぁ、反証といこうか。あんたの依頼人の話だ。俺の依頼人の部屋から紐が発見された話をしていたよな?それならお前の依頼人の部屋からも紐は見つかっている。それも大量に。普段から変態プレイ用に用意していたんだろうな?一本辺りは短くても繋げれば同様の殺人は可能だ」

ヴァーチュ「うちの依頼人は4階に住んでいる。自分の部屋からの犯行は不可能だ」

平野「その部屋じゃない部屋があるだろ?」

ヴァーチュ「貴様…!!」

平野「調査してんだよ、こっちもよ。そいつは部屋を二つ借りてんだよ。もう一つは借りてるのは被害者の隣の部屋。その部屋からなら被害者の部屋まで届く」

ヴァーチュ「その部屋を犯行当日に使用した証拠など…」

平野「あぁ、あいつは居たよ。そこに嬢を呼んだからな。嬢にも裏を取って確認した。あの日の夜も嬢は訪問している」

肩で息を吸うヴァーチュ。

平野「その時に使ったのは紐だから、こいつにも犯行が可能だ」

ヴァーチュ「だが、俺の依頼人に被害者の習性を知る由は…」

ヴァーチュ、口を紡ぐ。

平野「知らなくてもわかるだろ?だって…」

平野、檻を指さす。

平野「お前の依頼人も同じ症状を治療中なんだからな。そもそもそのクリニックに通う奴はみんなそうだろ?でもよ、わざわざ発作を抑えるために嬢に首を絞めて貰うなんてだいぶ変わっているよな」

ヴァーチュ「主張はよくわかった。だがな、動機がない。被害者を殺す動機がな」

平野「あるだろ?」

ヴァーチュ「そんなもん…」

平野「これだよ」

ヴァーチュ「…これだと?」

平野「不思議に思ったんだよ。依頼人、何度もルームKOに参加してんだろ?そう何度も『グレーゾーン』に該当するなんて有り得るのかって思ったんだよ。だけど、こいつが最初からこれに参加するためにわざと事件を起こし、『グレーゾーン』に該当するよう仕向けたなら話が合うんだよ」

ヴァーチュ「ルームKOに参加するために殺しをしたと?貴様、矛盾した話と理解できないのか?」

平野「勿論、最初から殺す話じゃないことはわかってる。うちの依頼人に犯行してもらうよう仕向けたんだろうが、いつまでも殺人の動機を与えても動かないことに痺れを切らしたあんたの依頼人が殺した、違うか?」

ヴァーチュ「はっ!それなら被害者がいつ発作を起こすかわからないだろ!!誰を使って把握するんだ!!」

平野「そんなの」

平野、不敵に笑う。

平野「大家さんを使えばいい」

ヴァーチュ「大家だと…!」

平野「だってよ、依頼人ってマスターランクだろ?この国にとってマスターランクって一生を保証できるみたいじゃねぇか?ならよ、マスターランクのあんたから依頼されれば情報なんて簡単に売るだろ?」

ヴァーチュ「ふざけるな!!妄想を並べるのもいい加減…」

ブレジャーの声「ヴァーチュさん」

振り返るヴァーチュ。

ブレジャー「私、最期にこんな戦いを見れて幸せでしたわ」

ヴァーチュ「おい!!勝手なこと…」

ブレジャー「私がやりました」

膝から崩れ落ちるヴァーチュ。

裁判官「こんなことが有り得るのでしょうか!!!なんと、ビギナーランクの平野さんがヴァーチュさんを下しました!!勝者は…無所属の平野さん!!」

熱狂に沸く観客。

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