仲間へ、折り鶴に私の気持ちを託す
あの日、胸がいっぱいになったのに、言葉にできない瞬間を、私ははっきりと覚えている。
留学を始めたばかりの私は、英語もろくに話せず、文化の違いにも適応できずにホームステイ先の家族との関係もぎくしゃくしていた。
朝起きると、緊張と不安で胸がいっぱいになり、夜寝る前には孤独感と寂しさが押し寄せる。本当はもっと話したいのに、自分の思いを伝えたいのに、慣れない言語で言葉が出てこないもどかしさ。言葉が通じないせいで、ちょっとした誤解が大きく感じられ、家の中の空気はいつも少し張り詰めていた。
留学1週間目くらいのことだった。だんだん生活に慣れてきて、「朝5時から勉強しよう」と思った私は、静かにシャワーを浴びていた。日本では当たり前だった生活のリズムを、そのまま続けようとしただけだった。ところが、ホストマザーに「家には他の人もいるんだから、ちゃんと他の人のことを考えて」と注意されてしまった。
それまでにも何度か小さな衝突があった。そして、私は、それらは全て、ただ自分なりに頑張ろうとしていただけなのに、毎回、ホストマザーとの衝突になってしまうことが、すごく悔しくて悲しかった。別に怒らせようと思ったわけじゃないのに――その気持ちが胸の中で渦巻き、言葉にできず、ただ涙がこぼれそうだった。
ベッドに横になって、日本のことを思い出しながら、家族から留学を応援する手紙を読んでいた。わざわざ、私の留学のために作ってくれたのだ。文字を追うたびに、日本での生活の、あの温かい気持ちが胸にじんわりと広がるのを感じた。友達と笑ったり、家族と過ごした何気ない時間の中で、言葉にしなくても通じ合えていたあの日々。ここでは毎日、言いたいことをどう伝えられるのか途方に暮れていた自分を思い出す。
その手紙を読みながら、ふと、ひらめいた。ホストマザーに、形にして伝えたらどうだろう。心の中の気持ちを、何か具体的なかたちにして届けられたら――そう思った瞬間、目に入ったのは机の上の折り紙だった。
日本の伝統である折り紙なら、手元にあるもので、気持ちを表すことができる。早速一枚取り、鶴を折りながら心の中の気持ちを整理していった。そして羽根の部分に「友達になろう」と短く書いた。渡す前に、ふぅ、と一息つき、鶴を持っている手に願いを込めた。言葉ではうまく伝えられない私の気持ちを、小さな鶴に託した瞬間だった。
最初は驚いた表情を見せたホストマザーだったが、ふっと微笑み、私の気持ちを受け止めるように鶴を手にしてくれた。その瞬間、ぎくしゃくしていた空気が柔らかくなり、胸の奥にじんわり温かい感覚が広がった――言葉ではうまく説明できなかったけれど、心が通じた瞬間だった。
でも、今の私は、あの気持ちをなんていうか私は知っている。私はあれを、
小さな奇跡、つながり、そして、仲間
と呼ぶ。
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