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ハイブリッドダム構想は斯くあるべし (2)

ハイブリッドダム構想は斯くあるべし (2)
ダムマイスターコラム 82 号

永山ダム技術啓蒙研究所
永山 功

 本コラム 76 号では,国土交通省が提唱している『ハイブリッドダム構想』は実現性に乏しく,ダム貯水池の運用計画を抜本的に変えなければ,その効果は期待できないことを述べた。少し間が空いたが,本稿ではこの続編として,ダムによる利水開発の仕組みについて解説する。既設ダムを利用して新たに発電を行う場合,どのような条件が必要になるのかを正しく知って欲しい。
 まず,発電を除き,農業・工業・水道用として川から取水することを考える。川の流量は一定ではなく,雨が降れば流量は増え,雨が降らなければ流量は減る。流量が減ると必要となる量の取水ができなくなるが,そのような時にも取水を可能とするのがダムの働きである。
 図ー 1 を使って具体的に説明しよう。最初にダムを造って水を貯める。これが図のスタート位置である。まず,小洪水 (1) が来るが,全量を放流して常時満水位を維持する。大洪水に備えて治水容量を空けておくためである。次に,渇水 (2.1) となる。このとき,貯めておいた利水容量内の水を放流し,必要となる利水流量を確保する。貯水位は低下する。次に,小洪水 (2.2) が来る。これを貯めて貯水位を少し回復させる。再び渇水 (2.3) となり,利水流量を放流して貯水位は低下する。その後,中洪水 (2.4) が来る。これを貯めて貯水位を常時満水位まで回復させる。貯水位が常時満水位になると,流入量に見合った放流を行い,常時満水位を維持する。次に,大渇水 (3.1) となる。利水容量内の水を放流して必要となる利水流量を確保するが,貯水位は最低水位まで低下する。最早,必要となる利水流量は放流できず,流入量と等しい放流になる。渇水時の取水制限である。その後,中洪水 (3.2) が来ると,貯水位は常時満水位まで回復する。

図ー 1  ダムによる利水開発の仕組み(イメージ)

 以上から分かるように,利水容量の使い方は,ダム完成時を除くと,“貯めてから使う” ではなく “使った分を補給する” という形態になる。ハイブリッドダム構想でいう “洪水末期に水を貯めて発電用に使う” という使い方とは大きく異なっていることが分かると思う。
 ここで発電の参入を考える。発電が他の利水と異なる点は,発電とは水を消費するものではなく,水が持つ位置エネルギーを利用するものである。したがって,ダムサイトで発電を行うのであれば,図ー 1 の利水流量,正常流量は発電用水として全て利用できる。これを従属発電という。ハイブリッドダム構想のように治水容量に水を貯めなくても,発電施設を造るだけで発電ができる。
 それでは,ハイブリッドダム構想のように洪水末期時に治水容量に水を貯め込んだ場合,どのような使い道になるのかを考えてみよう。洪水 (1) で治水容量に水を貯め込んでも,既に利水容量内に水が確保されているので,渇水 (2.1) , (2.3) 時には,貯め込んだ水の使い道はない。洪水 (2.4) のように,治水容量に水を貯め込んだすぐ後に大渇水 (3.1) が来ない限り,貯め込んだ水が使われることはないのである。治水容量に水を貯め込んだならば,即,発電に利用できるという訳にはいかないのである。
 それでは,渇水時を待たずに,利水流量を増やして発電量をさらに増やすことを考えるならば,どうであろうか。この場合, 1 年を通して発電ができる訳ではない。治水容量に貯め込んだ水を使い切ったら,それでお終いである。このような 1 回限りの発電のために発電施設を造る投資効果があるだろうか。利水流量を増やしてさらなる発電を計画するのであれば, 1 年を通じて発電ができるように大々的に発電容量を確保しなければならない。これが,コラム 76 号で述べたダム貯水池の運用計画の抜本的な変更ということである。
 ハイブリッドダムによって新たな水力発電が可能となり,これがカーボンニュートラルへと繋がる―国土交通省のお役人が気楽に考えるほど,発電水力開発の仕組みは単純ではないのである。

2024 年 2 月執筆

https://b17d27e9-7563-466f-a88e-3ede574aaf8f.filesusr.com/ugd/b1bf3a_e0445108e64d49b98ffcae6a66fdaafd.pdf


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