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召人と母のあわい~『十五才の娘のための源氏物語』コラム案

 6/23に拙著『十四才の娘のための源氏物語』がおかげさまで完売になりました。現在、次に何をするかを模索中。

 『十四才の娘のための源氏物語』をそのまま増刷するということは最初から考えていませんでした。まず、誤植が多過ぎます。ちょっと読みにくい点もどうにかしたいです。

 加えて、現代語訳を読んだだけでは面白さが解らないよなぁー、という箇所が何か所もあります。これは、noteの記事を書いていて痛感しました。

 そこで、『十四才の娘のための源氏物語』については、改訂版を出すという方向で考えています。誤植を訂正し、会話文文頭は改行して読みやすくしたうえで、各巻巻末に<コラム>をつけることにします。

 この<コラム>は、その巻の読みどころ解説なのですが、ほぼnoteで書いたものの書き直しになります。

 今、この<コラム>の作成に取り掛かっているのですが、『十四才』の分は書き上がりました。現在、『十五才』の分を執筆中。

 その中から「明石」巻の<コラム>案だけをサンプル的にお見せしようかと思います。実は、「明石」巻にはnoteに適当な記事がなく、ほぼ新規の執筆です。
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<コラムその十三>
 
 「明石」巻を読み進めていくと、なんだかイヤな感じに襲われることがありませんか。

 たとえば、明石入道から娘の話を聞いた後の源氏のリアクション。

 「ご自分からあちらへお渡りになるようなことを、入道の婿になるようで、あるはずのないこととお思いになっています」(『十五才の娘のための源氏物語』

 コイツ、何様のつもりなんだろー?!

 たとえば、入道のセッティングで最初に娘を訪れる場面、

 「娘の住む邸は少し遠く山へ入る所なのでした…恋しい人の御事を思い出し申し上げなさるので、そのまま馬を引いて通り過ぎて上京してしまいそうだとお思いになります」

 ひ、ひどい。これから明石の君に会いに行くのに、紫の上のことしか考えてない。

 そのまま現代人が読んで行くと、源氏は思い上がったプレイボーイのイヤなヤツにしか見えないんですよ。

 これは、現代の我々に身分差の肌感覚がないからと思われます。源氏は今は無位無官となって都落ちしているとはいえ、先帝の最愛の息子です。それに対して、明石の入道は、父親は大臣だったということになっていますが、本人は播磨守という地方官に落ちぶれた末、今現在それさえも辞めて「前播磨守」という立場です。つまり、貴族でさえないのです。

 その娘ということになると、源氏から見たら、せいぜい「召人」にしかならない女ということになるでしょう。

 「召人」とは、主人の愛人となる女房のことで、たとえば、「末摘花」巻に出てくる「中務の君」、「葵」巻に出てくる「中納言の君」。いずれも左大臣邸に仕える女房ですが、源氏の愛人です。

 せいぜい愛人にしかならない身分の女性ですから、源氏は最初から結婚相手として考えていないんです。それで、入道の婿みたいな振る舞いはありえないよー、と考え、その女と会う時も最愛の奥さんのことばかり考えると。

 「明石」巻に始まる明石の君の物語は、そういう「召人」になりそうな身分の女性が、身のほどをわきまえた理性的な振舞いと優れた資質によって源氏の愛を受けて母となり、一時は愛娘を手放す苦しみを経るけれど、最後には源氏の妻妾の一人として扱われるまでになる一種のサクセスストーリーなんです。

 そういう目で見て上げてください。源氏のイヤなところも勘弁できるようになりますから。


 もう少し手を入れることになると思いますが、だいたいこんな感じの<コラム>をつけることになるのではないかと思います。無事、出版という運びになりましたら、また、noteでお知らせします。乞うご期待。

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