トリック・オア・撚り糸|ショートショートお題「Trick or ??」
大学生になった娘に聞かれた
「お母さん あのさ この古いの ずっとあるよね…」
戸棚の上隅は なにげに一年中ハロウィン
幽霊 ・かぼちゃ・魔女の帽子の居場所
「一応 思い出のあれ的な」
「あれってなによ」
「あなたまだ小さい頃 お父さんと大げんかしてさ
ほんと 離婚寸前まで行って」
「出たぁ また 2人大爆発」
「で 5日ぐらい口を聞かないで」
「どっちも自分から謝れない性格」
「5日して それでも お父さんが
すごい変な謝り方をして
そのとき考えたのね もしここでわたし
『は?』ってキレたら
この家 終わるかもなーって…」
「怖いこと 平気で言う」
「そう それで とっさに言った
『わかった、じゃあ糸買ってきて、撚り糸
編んでて足りなくなっちゃった』って
ハロウィン当日の 夜8時とか
けんかからずっとむかむかモヤモヤしてて
いろいろうまくいかなくて 切り替えたくて
唐突に 100均で撚り糸を買って
ハロウィーンのもの 編んでたんだよね」
「それってわたしいくつの時?」
「4歳とかかな だからまだ当日マストじゃなくて
なんであれは完全に自分のためにかな
気持ち鎮めるため 編み物の時間が必要だった
撚り糸が必要だった あの時ぜったいね」
「そういうのにケチつけそうなお父さんだよね」
「わかってるねー 普段は絶対
でもそのときは ぐだぐだ言わず
ただ『わかった』って出てった」
「何か感じたのかね
これ お菓子をくれなきゃイタズラするぞ
どころじゃないやつで…」
「あは そうね
撚り糸くれなきゃ離婚しちゃうぞ!
帰ってきたのは 夜10時前
武蔵小山なし 目黒なし
結局渋谷まで行ったーって
その時には お互い普通にしゃべれて」
「撚り糸が編み込んだ!
うまいこと言ったなわたし」
「ワインついでに話すとさ
この話踏まえて 考えてみて
舞香の生まれたタイミング…あはは!」
「わ!ハロウィーン婚ならぬ ハロウィーン着床」
「いつ誰に話そうかって思ってた
いま不思議にタイミングが降りたな」
「…あれだ わかった あの3体だ
幽霊・かぼちゃ・魔女の帽子
慌てたんだ
『マズイ!』
『捨てられちゃう』
『すごい魔法かけなきゃ』
って
『捨てないで!
じゃなきゃ
言っちゃうぞっ』
って」
「で とりあえず わたしの口から娘に明かさせたかぁ」
「ま 捨てないねー 捨てられないねえ」
「ボクらは魔法で 編み込んじゃうからねっ 家族みんな!」
(本文999文字)
花邑灯火さま、はじめまして✨
「Trick or ??」、参加させていただきます🎃

戸棚上隅にいます、ふっふっふ🎃
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