仏種②
前回、「仏種」の思想と成長マインドセット には、人間の可能性に対する肯定的な視点において共通点が見られます、と書きました。今回はその続きです。
それら「仏種」と成長マインドセットの考え方には、脳科学の研究が示す、脳の可塑性ということも関わってくるようにも思えます。
脳の可塑性(neuroplasticityまたはbrain plasticity)とは、脳が経験や学習、環境の変化に応じて、その構造や機能を変化させる能力のことだそうです。
言い換えれば、脳は固定されたものではなく、まるで粘土のように、生涯にわたって変化し続けるということです。この可塑性のおかげで、私たちは新しいことを学んだり、記憶を作ったり、環境の変化に適応したりすることができるとされています。
脳の可塑性には、以下のような様々なレベルのものがあるそうです。
・分子メカニズム:シナプス伝達に関わる神経伝達物質の放出量の変化、受容体の数の変化、細胞内シグナル伝達経路の変化など。
・細胞メカニズム:シナプスの構造変化(スパインの形成・消失、シナプスサイズの変化)、樹状突起や軸索の成長・退縮、神経新生など。
・回路メカニズム:神経回路の接続パターンの変化、神経活動の同期性の変化など。
・システムメカニズム:脳全体の機能ネットワークの変化、異なる脳領域間の相互作用の変化など。
以上のような事柄は、成長マインドセット という概念の根拠となり得るように思います。そして、「仏種」という考え方を、この脳の可塑性、つまり人間の学習能力や変化の可能性を象徴するものとして捉えることもできるようです。
以上のような肯定的な事柄がありながらも、今なお社会には、戦争や犯罪や不正など無数の問題があります。
そこには、人間の利己性や感情、集団への帰属意識や認知バイアスといったことなどが関わっていて、それらが負の方向へと向かってしまうことが原因の一つとして考えられると思います。
それは換言すれば、「人間の限界」ということなのでしょう。ですから、「人は誰もが仏性を持っている」とか「人は仏種を持つことができる」とかいうことだけで終わりにはなりません。そこから先、どのようにして「人間の限界」を克服するのか、あるいは折り合ってゆくのか、といっことを考え続けなければなりません。
おそらくそのためには、宗教、哲学、心理学
脳科学などといった学問が、それぞれ自分の分野だけの研究をしていればいいのではなく、問題の解決を軸として、学際的な協力をすることが重要なのでしょう。
その協力体制を構築するための、社会や行政の仕組みが必要なのかもしれません。その仕組みが一体どのようなものなのか、今の私にはわかりませんが、いつかそれが実現することを願っています。
