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<授業資料>クマを変えてしまう人間

私はこの教材を読解する諸君が、環境問題の根深さを理解するだけの傍観者ではなく、主体的な行動者となることを強く期待する。
近年、クマの人里への出没が増加し、人身被害は2023年に過去最多を記録するなど、問題が深刻化している。ただしその背景には、人間の活動がクマの生態や行動を変化させているという根本的な要因が存在することを都心部に住まう我々はわすれてはならない。
筆者の主張において、第一段落はクマの生態系における役割と人間の理想とする森林状況の相違。
第二段落は日本のクマの捕獲方法の歴史、有害鳥獣駆除に関する筆者の考え方。また、都市部の住民からはクマの保護を求める声が強く上がる一方で、実際に被害を受ける山間部の住民は駆除の必要性を訴えるなど、害獣駆除にかかる問題は、社会にも深刻な分断をもたらすという実感。
第三段落はクマの出没や駆除をめぐる都市住民からハンターに対する批判と、山間部に住む住民との間の軋轢。加えて都市部の観光客による人為的な餌やりがクマを人里に引き寄せている現状を指摘する。
観光客による安易な餌やり、不適切に廃棄された生ゴミ、収穫されず放置された農作物などは人里にクマを誘引し、人の食べ物の味を覚える。これによりクマは人間を恐れなくなり、食料を求めてより大胆に行動するようになる。最終的には人の安全を脅かす危険な存在として駆除対象とせざるをえない。
このクマとヒトとの対立の矢面に立つのは、駆除を実行する猟友会である。
彼らは行政の要請で危険な任務を遂行しながらも、クマ駆除に対する反対意見のみがソーシャルメディアで増幅され、認知バイアスに影響された感情論に陥りがちとなる。
特に猟銃使用に関して、マスメディアによる実質的な非難や誹謗中傷に晒されているため、猟師は常に訴訟リスクに晒されている。
ほぼ無償のボランティアで行っているにも関わらず、だ。
そのため、一部の猟友会は駆除要請の拒否するなど、その負担は限界に近づいている。
感情的な議論に陥らず、長期的な視点に立ち、クマを含む野生動物との共存を目指したいならば、社会全体の意識改革と具体的な行動が重要なのだ。
したがってクマの生態、人間の活動が与える影響、そして社会的な対立構造のすべてを理解し、科学的知見に基づいた包括的な対策を講じるわけであるが、都市部に住む諸君にとっては自然は身近なもの、ではない。それゆえに、より広範の野生動物の保護をめぐる関心なぞ限定的なものであろう。
例えば知床財団は「餌やりがクマを殺す」という警告文とともに、開設当初からヒグマの適切な管理と人間との共存の必要性を訴える。
しかし都市と山間部が対話したところで、それだけでは問題は解決しない。
都市企業と行政による無秩序な宅地開発や、絶滅危惧種の生息地を脅かす海外資本事業者によって大規模な森林伐採が進んでいる事実を、諸君は知らない。
都市部と山間部の住民間の対話を促進し、互いの立場を理解し尊重すると口でいえど、誰も実際に矢面に立つ猟師になろうとはしない。
真の環境保護とは、現状を打破し、未来を切り開く勇気ある行動そのものである。
それぞれの立場でできることを考え、実行し、持続可能な社会の実現に向けて共に歩んでいくことを切に願う。

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