【シロクマ文芸部】気不味い #レシートに #コメディ #お年頃
レシートに書かれていた商品名を見て、母さんが卒倒した。リビングのソファの上で、器用にヤムチャがやられた時のポーズ。案外余裕だろう。
「あんま聞きたくないけど、どした?」
「あのね?お兄ちゃんのコートのポケットにレシートが入っててね?」
同じ空間で「いい加減クリーニング持ってくよ」と準備していたので、そこまでは分かる。俺のジャケットもハンカチ入れっぱなし!と小言を落とされたばかりだ。何を買ったか知らないが、兄貴もご愁傷さま。
「あの子、彼女いたのね」
「ハァ?」
読んでいた週刊漫画雑誌が落下したが、それどころじゃない。
大学生の兄貴は、ホストみたいな見た目に反して案外堅物なので、容姿に惹かれて勝手に寄ってきた子に「思ってたんと違った」と勝手に幻滅される事がよくある。中身に惹かれてくれる子もいるにはいるが、そういう硬派な男が好きな子は大抵奥手なので、派手な見た目に気後れしてアプローチ出来ないらしい。
結果、モテる部類ではあるのに、一向に彼女が出来ない。それが兄貴だ。そのはずだった。
「ハ? 許さんが?」
「誠くん……」
年齢=彼女なしな息子達へ対する憐れみか、それとも高校生にもなってブラコン拗らせている俺を嘆いてか。母親の生暖かい眼差しが痛い。
「てか何、女子向けのプレゼントでもあった?」
「あ、いや、その」
急に歯切れの悪くなる母に、驚きより疑問が沸く。そもそも、たった1枚の紙切れで「彼女いたんだ」と言わしめる匂わせとは。
「…………避妊は大事よね、うん」
「アッ、ハイ」
兄貴。おい、兄貴。
お前、母親になんてこと言わせるモノ買ってんだ。百歩譲って現物押さえられなかったのは評価してもいいが、レシートなんか残すな。
うっかり親子そろって黙り込んでしまって、沈黙が気不味い。こういう時、小粋なジョークが脊髄反射で出るタイプじゃないんだ。勘弁してくれ。
ーーそんな地獄のような時間を経て。
直後に帰宅した兄貴へ、全力の頭突きをかました俺は悪くない。
以上、801字。こちら参加させて頂きました。
おそらく何かの罰ゲームで買わされただけで、兄貴は無罪。
こちら↓に出てきた兄弟のお話ですが、こちらはがっつりBLなので苦手な方はご注意ください。
