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節足動物の進化について、そろそろ知っておこうと思った。


11年前、恐竜図鑑を買ってもらったばかりの私は生命大躍進の特番を見て古生物にハマり、生き物の世界という名のウォータースライダーに乗った。
流れはじめは、節足動物の魅力に惹きこまれた。
自然離れしたメカニックな節々、太古の化石にもはっきり形を残す外骨格、ウミサソリ、アノマロカリス、アースロプレウラ、メガネウラ!
その造形美は、目に映る度に強烈なインパクトを残した。
今でも節足動物は大好きだ。
昆虫も、エビも、カニに至っては食べる度に乾燥標本を作るほどである。
太古のものから現代のものまで様々な節足動物を追求するうち、その始祖について段々と興味が湧いてきた。
ラディオドンタ目が「基盤的な節足動物」とされる理由、「真節足動物門」がある理由、それが知りたくなったのだ。

※この記事では二度目以降に登場するグループの分類階級を「類」、又は無くして省略する場合がある(例:霊長目→霊長類、節足動物門→節足動物)。

いつのまに?節足動物


先カンブリア時代、その中でもエディアカラ紀と呼ばれる時代がある。
今からおよそ6億2000万年前~5億4200万年前の地質年代だ。
この年代を特徴付けるのは他でもなくエディアカラ生物群である。それまでの生命がミクロサイズであったのに対して、彼らは数センチ~数十センチと実に巨大であった。
しかし、彼らの世界において捕食ー被捕食関係は非常に薄く、従って殺傷能力を持った武器やそれから身を守る外骨格などは存在せず至極ふにゃふにゃであった。
分類学上の彼らの明確な位置は未だ分かっておらず、節足動物とされる生物も発見されていない(節足動物のものに似た足跡化石などは発見されているが、確証はない。)。
結局、その多くはバイコヌール小氷河期の到来によって絶滅を迎えた。

エディアカラ紀が終わると、カンブリア紀がやってきた。
その幕開けを飾ったのが、カンブリア爆発である。
生物に視覚が生じ、捕食ー被捕食関係が顕わとなって捕食器や装甲を持つ生物が次々と誕生すると、その数だけ姿形も爆発的に多様化した。
一対の付属肢ふぞくしを持つアノマロカリス、象の鼻ような捕食器を持つオパビニア、海底を這いまわる三葉虫、とげとげしい竹細工のようなハルキゲニア、一筋の紐のようなピカイア、二本足のイカのようなネクトカリス…
実に幅広く、個性的である。
この爆発的な個性の発生をカンブリア爆発と表現したセンスに、脱帽である。

こうした動物群の中で生態系の上位に位置していた生物こそが、節足動物であった。
彼らは硬い装甲を持ち、複雑な関節で構成された捕食器や遊泳器を携えて海中や海底を自在に動き回り、その環境へと見事に適応した。
しかし、いつの間に、であろうか。

汎節足動物はんせっそくどうぶつとは


節足動物の単位は「門」であり、その上位に脱皮動物上門が位置し、中間に汎節足動物という“区画”が設けられている。
“区画”とわざわざ示した理由は、これが分類学上において分類学的な階級を持っていないためである。
分類学上の階級は、大きい順に
生物→ドメイン→界→門→綱→目→科→属→種
である。それぞれの前後に上、亜、下が付属する場合もある(例:上科、亜種、下目)。
汎節足動物という単位は、その階級に当てはまらないものであり、あくまで線引きをする区分なのである。
汎節足動物が示す範囲は、有爪動物ゆうそうどうぶつ緩歩動物かんぽどうぶつ葉足動物ようそくどうぶつ節足動物せっそくどうぶつである。
うち、葉足動物と節足動物の一部が、基盤的な節足動物として区別される。
では、その詳細に迫ろう。

葉足動物ようそくどうぶつとは

葉足動物は全てが絶滅種であり、外骨格を持たず、ミミズの様な胴体からミミズの様な脚が生えた生物で、魚の背骨の様な形をしている。基本的に目、口を持ち、足の先端に爪がある。背中に棘を生やした種や体側面に甲皮を持った種も存在し、これらは捕食者からの防御に役立てた。
一般的には、やはりハルキゲニアが有名であろう。

ハルキゲニア・スパルサHallucigenia.sparsa
筆者画

以上が基本的な葉足動物の特徴である。
彼らは“基盤的な節足動物”に区別されていない。
葉足動物の中でそれに区別されるのはシベリオン目である。
シベリオン目はより進化した葉足動物で、発達した複雑な付属肢や口を持っている。鰭を持つ種も存在しており、その姿は節足動物を彷彿とさせる。

ハルキゲニア・フォルティスH.fortisを捕食するメガディクティオンMegadictyon.haikouensis
筆者画


このメガディクティオンに関しても、やはり進化した特徴が確認できると言えよう。ただ、胴体や付属肢を見ても外骨格の間に生じる関節などは確認できない。しかし、この捕食者としての形態の在り方はまさに後の節足動物へと繋がっていくポテンシャルを秘めている。

恐蟹綱きょうかいこうとは

には、外骨格や複雑な付属肢、高性能な複眼の存在が確認でき、非常に節足動物らしい形質を持つ。
オパビニアやラディオドンタ目などが属する。

アノマロカリスAnomalocaris.canadensis
筆者画

アノマロカリスは、恐蟹綱の中でもラディオドンタ目というグループに属する。
アノマロカリスには節足動物らしい特徴が複数みられる。代表的なのは、やはり付属肢であろう。付属肢には明確な外骨格と関節構造があり、ある程度関節による可動域の制約を受けている。胴体部分に関しても、同じ事が言える。このような外骨格の発達とともに、複雑な神経系や高性能な複眼の存在は、アノマロカリスを節足動物たらしめている要因であろう。

ピカイアPikaia.gracilensを捕食するオパビニアOpabinia.regalis
筆者画。私のお気に入り作品。

オパビニアは、恐蟹綱オパビニア科に属する生物である。
特徴的なのは、一本の付属肢、すなわち吻である(そこだけではないだろうというツッコミもある事とは存ずるが)。柔軟なノズルに外骨格は無く、よって可動域の制約を受けにくい。先端は二股に分かれ、ハエトリグサのように内側に棘を持った捕獲器官が付いている。腹側には円錐形の足を有したと考えられており、これは正しく葉足動物のそれと同じである(爪の有無についてはさておいて)。
頭の後ろに続く外骨格、これは節足動物の特徴と言えよう。
このように、オパビニアはラディオドンタ目より原始的な特徴を残しているところがある。

葉足動物と節足動物の中間とは

メガディクティオンのような進化的な葉足動物、オパビニアのような原始的な節足動物。両者を繋ぐ中間生物とは一体何であろうか。
パンブデルリオンという生物がいる。

パンブデルリオンは腹側の葉足に加えて鰭を持ち、メガディクティオンのそれに似た付属肢や口を持つ。底生性(所謂ベントス)で、海底を葉足で這いまわっては獲物を捕食したと考えられている。
もう一つ、ケリグマケラという生物についても触れることとしよう。

外見上、パンブデルリオンとはさほど相違はないように見える。
しかし、ケリグマケラには遊泳能力があったとされ、その舞台も海中、すなわち遊泳性の捕食者(ネクトン)であったと考えられている。
葉足の存在は今のところなかったと考えられており、移動は鰭に頼っていたと考えられている。

さて、彼らの分類は、多くの場合アノマロカリスやオパビニアと同じ恐蟹類であるが、“$${\textit{Gilled lobopodians}}$$(鰭のある葉足動物)”とされることもある。これは明確な分類階級とは異なり、「基盤的な節足動物」と同じような区画分けである。
広い意味ではオパビニアもこの「鰭のある葉足動物」とされるが、殆どの場合やはり恐蟹類に分類される。
パンブデルリオンやケリグマケラは、葉足動物とも節足動物とも言い難い微妙なラインと言って差し支えなかろう。

節足動物のはじまり

結局、アノマロカリスやオパビニアを含む恐蟹類はデボン紀のラディオドンタ目、シンダーハンネス($${\textit{Schinderhannes.bartelsi}}$$)を最後に絶滅し、葉足動物(本記事で扱った範囲内のもの)も絶滅した。
恐蟹類の絶滅要因はやはり頭足類と魚類の登場であろう。オルドビス紀に入ると直角貝と呼ばれる頭足類が登場し、海中で遊泳性の捕食者の位置を獲得した。更にシルル紀からデボン紀にかけては魚類がさらに優れた鰭による高度な遊泳能力を獲得し、とうとう恐蟹類は絶滅した。
恐蟹類が絶滅してゆくその間、他の節足動物はどのように過ごしていたのか。これこそがまさに節足動物のはじまりと言えよう。
カンブリア紀に誕生した節足動物は、恐蟹綱だけではなかった。鋏角きょうかく亜門三葉虫綱、そして大顎だいがくが誕生した。
カンブリア紀の鋏角類はカンブロピクノゴン$${\textit{Cambropycnogon}}$$に始まり、やがて複雑な付属肢や顎を持ったハベリアやサンクタカリスが登場し、オルドビス紀に入るとペンテコプテルスのようなウミサソリ目(広翼目)が登場し、後の時代ペルム紀に至るまで繫栄した。鋏角類はサソリやカブトガニとなり、現在の地球でも見ることが出来る。また、クモなどは我々にとって最も身近な鋏角類と言えよう。
三葉虫はペルム紀に至るまで様々な姿へと進化しては奇抜な化石を残し、全地球で大繁栄を極めた。
大顎類は地球上で最も種類の多い節足動物である。
カンブリア紀に誕生すると、デボン紀には陸上進出を果たして六脚類となった。やがて石炭紀を迎えると彼らは巨大化し、脊椎動物より先に陸上世界で繁栄を極めた。その後、脊椎動物に主役の座を奪われても尚今でも昆虫類として全地球で繁栄している。彼ら昆虫類は、今や陸上における生態系の主軸となり、地球上に欠かすことのできない生物となっている。
アノマロカリスやオパビニアは、彼らの直接的な祖先というわけではない。しかし、彼らも節足動物の歴史を語る上で欠かせない存在なのである。
節足動物の繁栄は、まだまだ続くことであろう。

出典:Wikipedia、K.U.クラーク/節足動物の生物学


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