デジタル難民
僕が仕事の前にいつも立ち寄る喫茶店がある。
昭和レトロそのものの内装で、時間が止まってしまったような喫茶店だ。
マスター一人ワンオペで営業している。
マスターは81歳である。
マスターと話をしていると大阪万博の話題になった、
1970年の万博には家族で何回も行ったそうだ。
そして今回の大阪万博に是非行ってみたい、と言う。
僕は,地元(大阪)で開催されるので近いし、めったにないチャンスだから是非行ったらいい、と勧めた。
それを聞いていた常連のお客さんが、「でも、なんかネットでいろいろ登録せなあかんみたいやで。すごい面倒らしいで。」
と話に入ってきた。
マスターは「ひでまるさん、それはそんなに面倒なんか?」と聞いてきた。
僕は「たしかに面倒やで。マスターはスマホでいろいろいれたり出来るんか?」と言うと、マスターは「それは無理や。これは電話や。」と答える。
たしかに、LINEすら使っていない。文字入力は絶対無理だ。
僕が、「それやったら難しいなー」と話すと、マスターが「入場料払ろたら入れてくれるんちゃうんか。それやったら行かれへんなー」と言う。
この会話を聞いて,別の常連のお客さんが「大丈夫や。旅行会社がツアーをやってるから,連れて行ってもろたらええ。面倒なことは全部やってくれる。お金を出せばええんや。」と言う。
マスターは明るい顔になって「それはええ!
お金払ってツアーで行くわ。少々お金がかかってもかまわん。」
そして,僕に「ひでまるさん、駅前茶店で旅行会社の電話の電話番号調べてんか。」と言う。
僕はスマホで○○旅行社のページを探索した。
その店舗の電話番号は載っておらず、来店する場合は予約が必要と出てきた。
そして、予約のページにいくと、またここでもいろいろ入力しなければならないことがわかった。
僕はマスターに「あかん、これもいろいろ入力せなあかんなー」と言って画面を見せた。
マスターはその画面をみて、「やっぱり無理やなー、行くな、ということやな。あきらめるわ。」と言った。すごく残念そうな顔だった。
1970年の万博にマスターも行っていた。
そして、55年前の若かりしマスターはその時、様々な技術が発達して、夢のような便利な世の中になると思っただろう。
まさか、技術の発展で自分が万博に行けなくなるなんて思いもしなかったに違いない。
TVで1970年の万博会場の映像が流れているのを見た。たくさんの来場者が写っていた。
来場者は子供もを連れた人も多く、たぶんあの中にマスターもいたのだろう。
たくさんの来場者が、デジタル難民の群れに見えた。
僕は来週、万博に行く予定だ。
行ってみて楽しければマスターを誘って連れて行こうと思う。(マスターにとってご迷惑でなければ)
技術(デジタル)の発展が壁になって万博にいけないなら、この壁をアナログな「人のつながり」でぶち壊すだけだ。
