ミライの小石29.中国の兆しから描く未来~シンプルな一石二鳥でシームレスに生きる~
こんにちは、藤本一輝です。
今回は、中国における生活者の動向を取り扱った変化の兆しを紹介します。
日本メディアの中国に関する報道といえば、安全保障や、経済・先端技術に関するニュースを思い浮かべる人は少なくないかもしれません。
微信(Weibo)や小紅書(RED)といった独自のウェブプラットフォームが浸透していることもあいまって、アンテナを張らない限り中国のトレンドについて知る機会は限定的となります。
未来デザイン・ラボは、ジャンルを固定せずに情報収集するスキャニングを実施しており、本記事では、中国について取り扱った3つの兆しを取り上げてみます。
兆し①電動シェアバイクをモバイルバッテリーのレンタルスタンドに
フードデリバリー事業の運営会社・美団のシェアバイクで、モバイルバッテリーを借りられるようになりました。
利用方法はこれまでと同様で、QR コードをスキャンするだけ。シェアバイクとモバイルバッテリーを同時に借りられるほか、街中のバイクをスタンド代わりとした、バッテリーのみのレンタルも可能です。
今日の命綱でもあるモバイルバッテリーをバイクごと返せるなら、モバイルバッテリーの返却場所を探す必要もありません。
もちろん、この施策は、シェアバイクの利用拡大を促進するでしょう。
未来においては、モビリティは単に「移動手段」ではなく、「エネルギーの充電源の移動や利用」の役割も担うことで、持続可能な社会に貢献することが期待できそうです。
ちなみに、日本総研では、
EV 電池に自然から得た再生可能エネルギーを貯蔵し、地域の交通事業と連携することで、
生活に欠かせないモビリティや災害時の電力利用等に活かす試みを検討しています!
兆し②昼寝のための「変形デスクチェア」
中国の多くの都市では、小中学生の「校内昼寝」が日常的な光景です。しかし、昼寝の際には机に突っ伏して寝る「うつぶせ寝」しかできなかった点がネックでした。
この問題を解決するため、中国の多くの学校では「変形」機能を持つデスクチェアを導入し、授業中は通常のデスクチェアとして使用し、昼休みには快適に横になれる形態に切り替えられるようにしているようです。
より良い昼寝のために中国で導入が進む「変形デスクチェア」は、単なる家具の改良ではなく、「昼の休憩をどうデザインするか」という新しい発想の象徴といえそうです。
軽い昼寝は能率を高めますが、無理な体勢で休もうとすれば、身体には悪影響となります。教育機関のみならず自宅やオフィス、交通機関や公園などの公共空間にも変形デスクチェアが姿を現せば、社会の生産性も少しだけ底上げされるかもしれません。
兆し③ 観光地は「滞在型起業」の舞台になる?
昨年5月、中国の大型連休に、湖南省長沙で風変わりな光景が広がりました。日中に観光を楽しむ観光客が、夜になるとAlipay「芝麻信用(注)」のレンタルサービスを利用し、機材を借りて路上で屋台を始めたり、カメラをレンタルしてストリートフォトを提供したり、楽器や音響機器を借りてリクエスト形式の路上ライブを行っていました。
このような小商いは、旅費を稼ぐためだそうです。
中国の若者の間で広がる「旅をしながら屋台を開く」ライフスタイルは、「観光客=消費者」という従来の枠を超え、「観光客=滞在型・一時的な起業者」として地域が受け入れる新たな可能性を示しています。
似た概念に「アーティスト・イン・レジデンス|美術手帖 (Artist in Residence) 」 がありますが、芸術的な創作ではなく、屋台の立ち上げといった小さな営みによって、地域で軽く起業する―今後は、「旅」と「稼ぐ」が自然に共存するライフスタイルがより広がるかもしれません。
地域住民が観光客からの恩恵を受けたり、観光客どうしでサービスを完結させたりすることで、オーバーツーリズムの影響緩和につながるかもしれません。
さて、ここまで取り上げた兆しは、「一石二鳥」的なるソリューションがシームレスな日常を生むという点で共通しています。
シェアバイクにより、手持ちのデバイスを充電しつつ移動が可能に。
変形デスクチェアにより昼寝を挟みつつ効率的な勉学が可能に。
来街者に開かれた都市空間は、ウェブサービスの利用を前提としながら、昼は観光、夜は小商いするライフスタイルを可能に。
いずれの事例も基盤となるアイデアはシンプルでありながら、生活者がより充実した暮らしを過ごすうえで役立っています。
今回紹介した3つの兆しから、中国社会についてあれこれ論じてみたり、日本も見習うべき、と提言したりするつもりは全くないのですが、中国の生活者に関する情報から、合理性と心豊かな暮らしを両立する未来を営むための示唆を読み取ることもできそうです。
ちなみに、noteでは過去にも中国の兆しを取り上げています。
◎村超(地方発・草の根サッカーリーグ)が大バズりし、ボトムアップ型でスポーツ振興がなされている話
◎ゲーム好きな息子の夢を諦めさせるよう母親がプロゲーマーに依頼したり、大学のカリキュラムに恋愛心理教育を取り入れたりするなど、挫折を「買ってでも」するという話
今後とも、未来の兆しを収集し、「起こるかもしれないし、起こらないかもしれない」未来を思い描いてみます。
(注)芝麻信用
中国にて、電子決済サービスAlipayを運営するアリババグループの関連サービス。芝麻信用は、利用者の属性や決済履歴といったビッグデータを機械学習で分析し、個人単位で「信用スコア」を付与する。スコアが高い群の利用者は、シェアリングサービスの保証金の免除、ローンの金利優遇などの特典を受けることができる。なお、芝麻はゴマの意。
この記事を書いた人 藤本一輝
繁華街の路地裏や川沿いを散歩しながらああでもないと考えを巡らせるのが好き。属性を問わずいろいろな人と交流するのも好きです。
関心…考現学/エスニック料理/国内サッカー/モードファッション/路線バス/文化論
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