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ストックホルムから羽田へ―遅延と振替から見えた航空システム

国際シミュレーション&ゲーミング学会(ISAGA2026)への参加を終え、6月26日(金)は日本への帰国日でした。

朝6時過ぎ、ウプサラのホテルを出発し、列車でアーランダ中央駅へ向かいました。ストックホルム郊外での数日間を振り返りながら、いよいよ帰国です。

ウプサラ中央駅で空港行きの列車を待つ

アーランダ空港で最初の遅延通知

空港のチェックインカウンターでは、東京までと伝えると、サッカーの試合の話題に。スウェーデンはフランスと対戦、日本はブラジル、といった感じで。揃って決勝T進出できてよかったですね。そんな会話をして保安検査も問題なくすぐに終わりました。

SASラウンジを利用しようかと考えていた頃、最初の遅延通知が届きました。

ストックホルムからウィーンへの便(OS962)の到着が遅れ、ウィーンでの乗り継ぎ時間が約40分になるという知らせでした。

「少し慌ただしいが、まだ間に合うかもしれない。」

そんな印象でした。

ところが、その後さらに遅延の連絡が届きます。

今度は、ウィーンへの新しい到着予定時刻13:30が、もともと乗り継ぐ予定だった成田行きNH6326便の出発時刻13:30と重なってしまいました。

この時点で、自分の中では「乗り継ぎはもはや難しい」という認識に変わりました。

ウィーンで一泊する可能性も考える

ただ、この時点で私は、必ずしも「何としても今日中に帰らなければならない」と考えていたわけではありませんでした。

帰国後の土曜日、日曜日、さらに月曜日にも特別な予定はありませんでした。もしウィーンで乗り継げず、航空会社がホテルを用意し、翌日の便で成田へ帰国することになるなら、それはそれで構わないと思っていました。

むしろ、ウィーンは私にとってまだ訪れたことのない都市でした。ISAGAで長年交流のあるWilly Krizさんはウィーン出身で、今回「帰国便の乗り継ぎで初めてウィーンと伝えると「まだウィーンに来たことがないのか!」という反応をされていたりしました。

もちろん、長旅の途中ですから、体力の温存、電源の確保、インターネット環境の確保は重要です。しかし、ホテルが手配され、翌日便に振り替えられるのであれば、「ウィーンに一泊する」という選択肢にも、どこか前向きな気持ちがありました。


「Your connection is critical」

搭乗口C33へ向かい、係員に状況を確認しました。

すると、

"Your connection is critical."

という説明を受けました。

さらに、

"If you miss the flight, they will rebook you in Vienna."

とも伝えられました。

この時点では、航空会社側もまだ最終的な判断をしている最中であり、「間に合えばそのまま、間に合わなければウィーンで振り替える」という運用になっていたようです。

この一言で、乗客である私は「自分ではどうにもできない部分」と「航空会社のシステムに委ねる部分」とを受け入れることになりました。

ウィーン到着、乗り継ぎできず

ウィーンへ新しい予定どおり13:30に到着すると、案の定、成田便はすでに

Gate Closed

となっていました。

Tokio NRT行きはGate Closedに!

乗り継ぎとはいえ、初めて訪れたウィーンでしたが、滞在を楽しむ余裕はなく、そのままオーストリア航空のサービスカウンターへ向かいました。

番号札を受け取り、順番を待ちます。

しかし、その待ち時間の間に状況は動いていました。

SMSとメールによる自動振替

突然、SMSとメールが届きました。

そこには、

  • ウィーン→フランクフルト(OS213)

  • フランクフルト→羽田(NH224)

への振替が完了したことが記されていました。

さらに、新しい搭乗券も発行されていました。

フランクフルト行きの搭乗券がメールで届く

窓口で手続きを受ける前に、航空会社のシステムが自動的に代替便を確保してくれていたのです。

その結果、

  • 同じ日の午後にウィーンを出発し、

  • フランクフルトで約4時間 乗り継ぎ、

  • 羽田へ向かう

という新しい旅程になりました。

預け手荷物も新しい便へ自動的に積み込まれるとの表示がありました。自分で荷物を受け取り直す必要はありませんでした。

結果的には、ウィーンは予定どおり空港内だけの滞在となりました。それでも、「いつか改めて訪たい場所」として、むしろ印象に残ることになりました。

もともと選べたかもしれない便

フランクフルトへ向かうことになってから、ふと考えました。

この「フランクフルト→羽田」の便は、今年1月にANAで航空券を購入した時点で、選択肢の一つとして存在していたのではないか、ということです。

私にとって、羽田着は成田着よりも圧倒的に便利です。自宅までの移動を考えれば、羽田着のほうがありがたいのは明らかです。

それにもかかわらず、最初に選んだのは、

ストックホルム→ウィーン→成田

という旅程でした。

おそらく、その大きな理由は価格だったと思います。フランクフルト経由で羽田に帰る便は、かなり高かったのではないかと推測されます(今となっては定かではないですが、5万円以上差があるとか)。

しかし、それだけではなかったようにも思います。

私はこれまでオーストリア航空を利用したことがなく(オーストラリアの空港の利用経験がない)、ウィーン経由で日本へ帰るというプランにも惹かれていました。ウィーンから日本へオーストラリア航空を利用できることの楽しみもあったのだと思います。

つまり、当初の旅程は、単に安かったから選んだだけではなく、

  • まだ利用したことのない航空会社に乗ること

  • まだ行ったことのないウィーンを経由すること

  • 新しいルートで帰国すること

への関心も含まれていたのでしょう。

結果的には、そのウィーン経由の成田便には乗れませんでした。その代わり、最初の航空券購入時には価格の面で選ばなかったかもしれないフランクフルト経由・羽田着の便へ、航空会社の判断で振り替えられることになりました。

偶然のようでいて、どこか最初の選択肢に戻ってきたような、不思議な感覚もありました。

フランクフルトで一息

フランクフルト空港では、スターアライアンスラウンジを利用しながら、今回の出来事を振り返りました。

振替によって約7時間の遅れとなりましたが、その一方で到着空港は成田ではなく羽田となり、自宅までの移動時間は1時間以上短縮されました。

時間だけで見れば約6時間の遅れですが、その一日を通して得られた経験や着想は、それ以上の価値があったように思います。

航空システムの中で「包摂」される

今回の経験で印象的だったのは、航空会社が私一人を特別扱いしたのではなく、巨大なネットワーク全体の中で最適化を行っていたということです。

ストックホルムでの遅延。

ウィーンでの乗り継ぎ失敗。

フランクフルト経由への自動振替。

羽田への到着。

これらはすべて、一人の乗客だけではなく、多数の便、多数の乗客、多数の空港を同時に扱う巨大なシステムの中で判断されていたことでしょう。

社会心理学では「集団」を人間同士の関係として考えることが多いですが、今回の経験からは、

「同じ便に乗る人々」

「乗り継ぎ客をどこまで待つのか」

「どの便へ再配置するのか」

といった、航空ネットワークそのものが一つの集団形成・包摂の問題として捉えられるように思えました。

ISAGA2026では「Speaking for the Absent(不在者の声をきく)」について発表しましたが、帰国途中には、その延長線上にある新しい研究課題が生まれました。

一見すると単なるフライトの遅延でしたが、私にとっては、国境を越える巨大な交通システムを社会心理学の視点から考える貴重なフィールドワークになった一日でした。

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