ネコ好き集まれ!川村元気『世界から猫が消えたなら』
今日読んだ本。
終始ニコニコしっぱなしの物語だった。
無理やり泣かせにかかる風ではなく、普通にいい話だった。
川村元気『世界から猫が消えたなら』
【装丁・タイトルについて】
なんとまあ、キャッチーなタイトル。猫好きでなくてもドキッとするではないか。
実写版映画公開を告知する全帯(カバー)がついている。全帯を外すと新品同様の本書が出てくる。
この嬉しさわかるかな、わかんねえだろうなあ。ニコニコ。
オリジナルのカバーは物陰から覗くカメラ目線の子猫の写真だ。これはたまらん。猫ちゃんこっちへおいで。ニコニコ。
【内容・目次について】
余命宣告をされた青年が主人公だ。
猫の「キャベツ」と同居している。
映画では佐藤健が演じているそうだ。ああなるほどナイーブな青年ね。
その佐藤健がグレード4の脳腫瘍になったそうだ。
不安感ただよう前兆の描写はない。壮絶な闘病描写もない。鼻白む大げさな絶望シーンもない。
はい!この主人公は脳腫瘍ですからね!グレード4ですからね!余命わずかですからね!
と、初期設定だけ告げられて、物語世界の真ん中に放置された主人公「僕」の物語である。
筒井康隆御大の実験的問題作『虚人たち』を彷彿とさせる投げっぱなし設定だ(実は綿密に計算されている)
目次はこんな感じ。
月曜日 悪魔がやってきた
火曜日 世界から電話が消えたなら
水曜日 世界から映画が消えたなら
木曜日 世界から時計が消えたなら
金曜日 世界から猫が消えたなら
土曜日 世界から僕が消えたなら
日曜日 さようならこの世界
唐突に病名を告げられてから7日間の出来事が描かれている。
どのような出来事かは目次を見ればだいたい見当がつく。
と思ったのが本文に入る前のぼくだ。
実際は違った。目次の時点でうまい事ミスリードしている。筆者は策士。
余命いくばくもない主人公「僕」の前に「悪魔(アロハ)」登場。
悪魔(アロハ)「この世界から『何か』を消す。その代わりにあなたは一日だけ命を得る」だと。
そして世界から『何か』が消えていく。思考実験の匂いにぼくはしびれた。びりびり、そしてニコニコ。
こんなの続きが気になるにきまってらあ。
本文ページ数は219ページ。2時間以内に読み終わる枚数だ。速読で消化はもったいない。
読み落としがないよう一枚一枚ページをゆっくりめくった。一文字一文字丁寧に読んだ。
読み終わるまで3日かかった。
この本は、よむのに、いちばん、時間がかかります。だ。
【読後感。】
面白かった。ニコニコ。
この小説の主要人物には名前がない。
悪魔の呼び名「アロハ」は主人公が勝手につけたあだ名だ。本名ではない。
主人公の親友であるレンタルビデオ屋の店員は「ツタヤ」と呼ばれているがこれもあだ名だ。
唯一名前を持っているのが猫である。『キャベツ』だ。
こんなフレーズが浮かんだ。「吾輩は猫である。名前は『キャベツ』。先代の飼い猫は『レタス』。」
漱石のオマージュか。
この本で好きなシーン。
映画が消える前に最後に観ようとしたDVDをトラブルで観ることができなかった。ここでぼくの目が点になる。
主人公は慌てず『ある写真』を代わりに観た。
それは上映中の映画を長時間露光で撮影した『写真』である。
問題:上映2時間のスクリーンに映写されたすべての光の粒を一枚の写真に重ね合わせたらどうなるか?
答え:光がすべて合わさり、白い横長の長方形にしか見えない。
白い長方形を見つめる主人公は何を思うのか。ぜひ本書を手に取ってお確かめいただきたい。
もし小説の世界に入り込むことができるとしたら、このシーンでぼくはスタンディングオベーション。ブラボー。
この川村元気という作家、本来は映画畑の人だ。
彼の文章は頭の中で瞬時に映像化される。文字を追わずともだ。
なるほど「Don't think. Feel ~考えるな感じろ~」ってやつか。映画畑の収穫は豊作。
と、ここまでさも隠れた名作を発掘したぞう、という体でつらつら駄文を連ねてみたが、
なんと120万部突破のベストセラーだったことを始めて知った。
まるで赤っ恥ではあるが、未来の川村元気愛読者になるかもしれない未読者にこの本を紹介できたと思えば本望よ。
最後にネタバレ
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愛猫家の皆様。「猫」はこの世界から消えません。ご安心ください。
【おまけ】
慢性お小遣い欠乏症に悩むぼくは今回もBOO〇OFFのお世話になった。嬉しいおまけが挟まっていた。
前ユーザーが栞代わりにしていたらしいレシートだ。
良書の余韻にひたりつつレシートを眺め、前ユーザーの人物像・生活に思いを馳せる遊戯に耽る。ニコニコ。
これだから古本買いはやめられない。
【超テキトーレビューの能書き】
※あくまでも個人的な感想です。
