見出し画像

記事制作CLAUDE.md配布中:6年間、3500本の記事制作の現場からうまれた、AIと人が協働するワークフロー

私はテック系記事の編集記者をしつつ、編集プロダクション・Web制作を手掛ける企業・アンジーを経営しています。

1969年生まれなので、2029年には還暦を迎えます。日々、老いを感じていますので、AIなどテクノロジー仕事に組み入れて、負担をかけないようにしています。

還暦まであと数年というジジイが「AIで若返った」とまではいいませんが、仕事内容自体は成長している実感があるのです。

たとえば、2020年に97本だった記事制作本数が、2025年には590本になりました。私一人で、です。しかも取材記事が7割。インタビューして、文字起こして、構成して、書いて、直して——その工程をくりかえす。取材記者・編集者・記者として現場を歩んできた人間が、会社を経営しながらAIを試し続けてきた結果です。

この記事は、その6年間を振り返ったものです。

※インタビューや講演レポート記事作成のClaude.mdを無償配布しています。本シリーズではその中身を解説していきます。


まず、AI以前の現実から

ビフォーAI、人力だけの取材記事制作は、1本あたり7〜8時間かかっていました。企画・準備・インタビュー・文字起こし・構成・執筆・編集を合計すると、それくらいになる。

当時、「取材記事を年間300本やります」という人がいたら、「信じられないな」と思っていたでしょう。計算上、営業日数が足りません。ジジイだったら徹夜するなどの無理もできません。品質が著しく低下し、寿命も短くなあってしまうでしょう。


数字が示す6年間

アンジーが関わったコンテンツの年間制作本数の推移です。

  • 2020年:全体185本 / 森担当97本(52%)

  • 2021年:全体613本 / 森担当418本(68%)

  • 2022年:全体744本 / 森担当347本(47%)

  • 2023年:全体724本 / 森担当452本(62%)

  • 2024年:全体670本 / 森担当465本(69%)

  • 2025年:全体750本 / 森担当590本(79%)

2020年から2021年にかけて本数が3倍以上に跳ね上がっており、2025年には内製化率が8割にまで上がっているのがわかります。何があったのか。それが、これからお伝えする話です。


第1フェーズ(2020年末〜):ターミナルを叩いてみた

最初の転機は、Amazon Transcribeとの出会いでした。

当時、音声をテキストデータに変換する、AI音声認識サービスが出始めたころでした。私はAWSの事例記事制作も手がけていたことから、同様のサービスをAWSが提供しているか探したところ、Amazon Transcribeの存在を知りました。

これを、Macのターミナルから操作して使い始めたのが2020年終盤。「ターミナル操作」と書くとエンジニアみたいですが、ネット検索して使い方を調べ、コマンドをコピペしていただけです。それでも、60分のインタビューが数分で文字に変わる体験は衝撃でした。クレンジング(誤認識の修正・話者の整理)を含めても1時間以内。それまで2〜3時間かかっていた工程が、です。老体には朗報ですね。

外部のAI音声認識サービスも使ってみましたが、クライアントワークでは機密情報などの取り扱いは厳しいです。それで、自社で管理できるAWSの環境を使おうと考えました。「取材相手の情報は外部サービスに入れない」というルールだけは厳守したいと思っています。これは、取材記者として当たり前の姿勢ですが、AIツールが増えてくると意外とあいまいになりがちな部分ですね。

以来、AWS上の自社プライベート環境(東京リージョン)で処理する基本的な姿勢は変わっていません。


第2フェーズ(2021年〜):英語インタビューが始まって、ツールを作った

2021年から英語でのインタビューをはじめました。海外スタートアップの創業者や外資系企業の幹部へのインタビューです。

たとえば、こういう記事

実は、2018年に英語学習を始めて、2019年にはTOEIC800、2020年に900を超えました。これもスマホアプリのAIを使った学習がメインです。機械の力を借りて、成長するサイボーグジジイが誕生したころでした。英語についてはnoteの別マガジンで経緯をしるしています。

さて、英語インタビューの件ですが、この頃コロナ禍でリモート取材が増えた時期でもあり、英語を使ってできる仕事のひとつでもありました。

ターミナルでAmazon Transcribeを操作して英語文字起こしをするという頻度が高まってきたことから、社内のエンジニアに相談して自分のワークフローを伝え、Webアプリ化しました。社内のコードネームは「Mojio(モジオ)」です。Amazon Transcribeは、英語はかなり高い精度で仕上げてくれるのですが、当時日本語に少し難があったため、アドバンスト・メディア社の音声認識「AmiVoice(アミボイス)」のAPIを活用することにしました。

AmiVoiceのAPIは、提供会社がAIのための学習をしないモードを選ぶことができ、AWS環境のMojioとは暗号化された通信でやりとりします。日本語文字起こしの精度は高く、専門用語変換や誤字脱字、フィラー除去などの修正するクレンジング作業の手間が省けるようになりました。

そして、2020年には185本だった記事制作数は、2021年が終わってみると613本に跳ね上がりました。営業もがんばりましたが、文字起こしというボトルネックが消えると、こんなに変わるのかと自分でも驚きました。外部ライターへの発注も、文字起こし済みのテキストを渡せるようになったので、頼みやすくなりました。編集者仲間からは「取材してきた音声があるから文字起こしやって」と代行することも増えてきました。

編集者・記者として本来の役割——企画・構成・品質——により集中できるようになったのは、この時期からです。


第3フェーズ(2023年〜):ChatGPTが出て、プロンプトを磨きはじめた

2023年からChatGPTが普及しはじめ、Claude.aiも含めてLLMサービスを記事制作業務に組み込み始めました。最初は補助的な使い方——情報収集、構成の叩き台、見出し候補、専門用語の解説などです。

情報を匿名化した上で、草稿作成なども行っていましたが、「そのままだと、使えないなあ」という印象でした。たとえば、「〜です。〜です。〜でした」と文末が単調に並ぶ。常体で書かせているのに途中から敬体に切り替わる。発言の引用でべらんめえ口調がそのまま残る。編集者の目で見ると、直すほうが時間がかかるものが続出しました。

「AIは嘘ばかりつく」とよく言われていた時期でしたが、私は可能性を感じていました。「AIがアホなのではなく、自分の指示の出し方次第で、結果が変わるのではないか」という仮説を立てて、試し続けました。

文体・引用率・口語の変換ルール・発言者の帰属表現——取材記者・編集者として現場で身につけてきた作法を、AIへの指示として書き下ろしていきました。有効だったルールを積み重ねて、汎用プロンプトとしてテキストファイルに書き溜めていきました。これが、のちのCLAUDE.mdの原型です。

情報管理にも相変わらず神経を使っていました。当時はまだ、AIサービス側が「AI学習に利用しない」と明示されたプランが存在せず、情報の取り扱い規約もよくわからなかったので、固有名詞をローカルで匿名化してから入力、仕上がった草稿をローカルで復元するするルールで行っていました。そのくらい手間をかけても、文字起こしと資料、汎用プロンプトを渡して草稿がすぐできるというのは魅力的でした。

振り返ってみると、2022年は744本中5割以上だった外注が、2023年には724本中4割弱となり、内製化率があがっていました。当時はあまり気にしていませんでしたが、データを集めてみると傾向がわかりますね。


第4フェーズ(2025年〜):プライベート環境でAIが本格稼働

そして2025年3月、Claude 3.7 Sonnetのリリースをきっかけに、AWS上のプライベート環境にてClaudeを使える「Amazon Bedrock Claude Chat」を整備しました。

2025年当時のAI利用環境

自社向けのAIチャットのWebアプリで、情報の匿名化処理が不要です。取材資料をそのままAIに渡せる。蓄積してきた汎用プロンプトとの組み合わせで、品質と再現性が一気に安定しました。およそ240分(4時間)かかっていた1つの記事制作の作業が105分(1時間45分)ほどになりました。約56%削減です。

ただ、まだ完全ではありませんでした。1つのチャットセッションで受け入れるデータ容量の上限が決まっていたのです。特にPDFの資料は情報のわりにファイルサイズが大きく、上限を超えてチャットが動かなくなることが多かった。容量オーバーになるとそれまでのコンテキストが無駄になり、別のチャットからやり直し——ということが続いていました。

公開情報の調査でWebサイトを閲覧・整理する作業も、依然として手作業のままでした。取材資料をAIに渡せるようになった一方で、情報を集めてチャットに渡すまでの準備には手間がかかっていたのです。


第5フェーズ(2026年2月〜):またターミナルに戻ってきた

2026年2月、エンジニアメンバーの勧めもあってClaude Code(AIモデルは東京リージョンのBedrock経由で利用)を導入しました。

ここで、長年書き溜めてきた汎用プロンプトが、記事制作作業のための CLAUDE.mdとして整理されます。インタビュー・イベントレポート、パネルディスカッションのまとめ、文体の硬軟など書き方、ファクトチェック、レビューなどの指示を盛り込んだものです。別々のツールで動かしていた工程がつながりました。

Webサイトの調査と情報整理、PDFファイルの読み込みと分析、文字起こしAPIの呼び出し、クレンジング、草稿生成、人の手による推敲・編集まで——全工程がプライベート環境内で完結するパイプラインです。

第4フェーズで「もう一歩」と感じていた部分が、ここで一気に埋まりました。ターミナルから始まったこのワークフローが、数年を経てまたターミナルへ戻ってきた。でもそこにあるのは、単一工程を手動で動かすツールではありません。

AIとの協働で音声文字おこしや草稿作成の手間を削減

再現性を生んでいるもの——CLAUDE.md

6年間の試行錯誤を経てできあがったのが、CLAUDE.mdです。

AIへの「記事制作業務マニュアル」と思ってもらえればわかりやすいかもしれません。文体・引用率・口語変換ルール——取材記者・編集者として長年の現場で身につけてきた作法を、AIが毎回再現できる形に書き下ろしたもの。このファイルがあることで、同じ品質基準を何度でも再現できます。

ただ、ファイルを渡すだけでは足りません。自社のコンテンツ方針に合わせたカスタマイズ、AIに任せる工程と人が担う工程の設計——人間の判断が必要な部分があります。そこを一緒に設計するのが、記事内製化支援サービス「KIJI Base(記事ベース)」の伴走支援です。

年齢や立場に関係なく、知恵を絞れば仕事のやり方は変えられると思っています。50代ながらAIとともに成長してきたの私がそれを実感してきたからこそ、このやり方を記事制作の作業負担で悩む人たちに届けたいと思っています。


後日談:Claude Codeともう一度、文字起こしツールを作った

この記事を書いている間に、もう一つ「またターミナルに戻った」話が生まれました。

2026年3月、Claude Codeとのペアプログラミング(というか、私はほとんどお願いしてるだけ)で、文字起こしツールをゼロから作り直したのです。2021年に当社のエンジニアに作ってもらったMojioを、今度はMacのローカル環境で動作するPythonスクリプトとして再実装しました。

文字起こしは、レコーダー&クラウド文字起こしサービスのPLAUD.aiも導入して楽だなと思っていたのですが、AmiVoiceのほうが精度が高いし日本企業なので安心感もあります。ある朝、スマホからClaude.aiを開いて「Claude Codeだったら、Mojioの機能をつくれるかな?」と相談したのです。できそうだったので、起きてあらためてMacを起動してClaude Codeに相談して、2時間後には完成していました。数度のエラーはありましたが、すぐできあがりました。

そしてさらに1時間くらいの間に日本語音源(AmiVoice)・英語音源(Amazon Transcribe)・日英混在音源(通訳が入る場合など)の3モードをコマンド一本で切り替えられるようになりました。

音声文字変換>クレンジングのワークフロー

音声ファイルに加え、関連資料のPDF・テキストを渡すと、テキストへの変換だけでなく、固有名詞や専門用語、誤変換を整理したクレンジング済みのテキストが出力される。間違いはほとんどない……感動しました。

そういえば、今使っているMacbook Pro(Apple M1 Pro)は2022年に購入したものです。その前に使っていたMacbook Air(Intel CPU)は、ビデオファイルから音声データを出力する際やビデオファイルの尺を調整するのに時間がかかっていて少々待たされていたので、少し高かったけど買い替えました。

しかし、2026年2月にClaude Codeを使い始めてから、Pythonスクリプトで各種機能を作れるようになり、「コンピューターを使うとはこういうことか!」と強く感じました。いままで、MacBookが持つ力をぜんぜん使えていなかったのです。

還暦目前のジジイが、AIと一緒にツールを作り、やっとコンピューターの凄さを理解した——そんな感覚でした。「いままで何やっていたんだろうか」と反省しつつ、サイボーグへの夢が広がりました。


記事内製化支援サービス「KIJI Base(キジ・ベース)」では、AIと人が協働するAIワークフロー確立の支援を行っています。お問い合わせいただいた方には、当社で使用しているCLAUDE.mdを無償で提供しています。サービスの詳細・お問い合わせはこちらから。


いいなと思ったら応援しよう!

アンジー森(森 英信) 面白い、役にたったと思ったら、応援をおねがいします。手首もげ、老眼、浅い睡眠……ジジイに愛の手を〜