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重力と対話し『美意識』を鍛える「静」と「動」のマインドフルネス【全4回連載 vol.4】

【実践編】山口周著『美意識』その先へ。── ソシュール※1 と丸山圭三郎※2 で解剖する「直感」の正体。

全3回を通じて、私たちは言葉という「記号のナイフ」がいかに世界を切り刻み、私たちを『サイエンスという牢獄』に閉じ込めてきたかを解剖してきました。
しかし、最後に問うべきは「では、どうやってそこから脱獄するか」という実践です。
本記事では、『記号の牢獄』から脱獄するための「身体的実践」を提示します。
私が長年実践してきた「重力との対話」を通じて、言葉(言分け)の呪縛を解き、動物としての直感(身分け)と真の『美意識』を取り戻すための方法を解き明かします。

※1 フェルディナン・ド・ソシュール(1857–1913)は、スイス生まれの言語学者で、「近代言語学の父」と呼ばれる人物です。 彼の思想は、構造主義・記号論・現代思想の出発点となり、レヴィ=ストロース、バルト、ラカン、デリダなど20世紀の思想家に決定的な影響を与えました。
※2 丸山圭三郎(1933–1993)は、日本におけるソシュール研究の第一人者であり、「言葉とは何か」という根源的問いに生涯取り組んだ言語哲学者です。 単なる言語学者ではなく、記号論・哲学・文化論を横断し、言語の深層構造を解き明かした稀有な思想家として知られています。

※本記事で使用している画像は、すべて筆者本人が制作したロックバランシング作品です。


Ⅰ.美術館から出る ── なぜ「重力」と「肉体」なのか

絵を見たり文学を読んだりするアート鑑賞は、実はまだ安全な記号(言分け・ヒト)の内側のゲームに過ぎません。
脳内で組み立てられた近似モデルを諦め、言葉を完全に拒絶する「現実そのもの」に出会うには、地球の絶対的な力である【重力】に、【肉体】を介してエンゲージするしかないのです。

Ⅱ.ロックバランシング ── 「静」のマインドフルネス

ロックバランシングは、極めて「静かなアート」です。
油絵や彫刻とは異なり、川原の石という材料と、重力という接着剤だけで制作されます。
石の選び方から積み方、そしてその刹那を切り取る写真まで、全感覚を研ぎ澄ますことで『美意識』が鍛えられます。
完成しても風速2メートルで崩れ去る ── それは、カオスの中の瞬間のコスモスです。
私自身、この「言葉なき対話」を1,700回以上にわたりInstagramで発信し続けてきました。
石の歪み、重心、摩擦そして風 ……これらはすべて非線形な複雑系です。
頭の中で言葉(過去の後悔や未来の不安=過剰な言分け)が回っているうちは、指先の繊細な「身分け」が働かず、石は絶対に立ちません。
脳のリソースを指先に伝わる重力感覚だけに100%没入させる。
石がピタッと止まるその瞬間、自分と地球の重力が一体化し、言葉は完全に消去されます。
これが、私が実践し続ける「静のマインドフルネス」です。

Ⅲ.ボディメイク ── 「動」のマインドフルネス

一方、筋トレは「生きた彫刻」を造る芸術活動です。
部位を特定し、狙った筋肉に負荷をかける技術は、まさに塑像を制作するプロセスそのもの。
しかし、ウエイトの重さやセット数といった「数字(言分け)」に支配されているうちは、真の筋肉はつきません。
十分な圧縮とストレッチ(筋肉への刺激)、そして日々の体との対話(身分け)が大切なのです。
高重量のバーベルという「牙を剥いた重力」に抗うとき、脳内のお喋りは強制終了されます。
重量や回数といった数字の支配を剥ぎ取り、筋肉の収縮とストレッチいう生々しいリアリティ(純粋経験)に浸る。
己の『美意識』という内なるモノサシに従い、重力を使って肉体というカオスを彫刻していく。
これこそが「動のマインドフルネス」です。

Ⅳ.総括:私たちはこの身で、『美意識』を生きる

『記号の牢獄(現代社会)』に疲弊したなら、目を閉じて言葉を反芻するだけの瞑想ではなく、重力というカオスに肉体を投げ出してください。
そこで言葉は消え、私たちはヒトから動物としての、本当の「身分け」を取り戻します。
論理を捨てる必要はありません。
しかし、論理の限界を超えた先にこそ、真の『美意識』は宿ります。
さあ、言葉というナイフを置きましょう。
世界は、言葉で語るよりも、その身で感じる方が、はるかに鮮烈で、はるかに自由なのです。


【この記事の全体像を確認する】

本記事は、言葉という「記号のナイフ」が世界を切り刻み、「サイエンスという牢獄」に私たちを閉じ込めてきた構造を解剖し、私たちがどう『美意識』を身体化していくべきかを探る全4回シリーズの一つです。他の視点を含めた総論は以下のまとめ記事をご覧ください。

【全4回連載まとめ】山口周著『美意識』のその先へ ── ソシュールと丸山圭三郎で解剖する「直感」の正体

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