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トランプ大統領の「反環境政策」ってサステナブルですか?~わこさんのワイン片手の経済視点~

(第七十三回)自己矛盾の増殖か、トリックスターのショータイムが続くのか

2026年もなんとかワイン講師スタート

前回は、2026年も懲りずにワイン講師をやろうとするわこさんのお話でした。予算制約で苦肉の策でしたが、間違いやすい品種との比較でブルゴーニュのピノ・ノワールのスタイルを浮き彫りにするという、普通はやらないアプローチでした。お出ししたワインは日本であまり知られていない品種もありましたが、結果的になかなか面白い企画になったかな、と自画自賛しております。

今回のお題は「規制緩和」ですが…

で、少しインターバルをいただいたのですが、その間にまた香ばしいお話が流れてきました。
規制緩和が企業活動を活発化させうる、とは良く言われます。ただ、それは規制が経済活動を抑制していることが条件だったりするわけです。では、環境規制の緩和はどうなんでしょう?

「温暖化ガス危険性認定」撤回

2月12日、米EPA(環境保護局)は2009年の「温暖化ガス危険性認定」を撤回しました。これは単なる書類の破棄ではありません。米国の排ガス規制やエネルギー政策の根底にあった「科学的根拠」そのものを法的に無効化する、歴史に残る「規制緩和」です。

除草剤増産で農業の生産性を上げよう!!

さらにその1週間後の18日、トランプ大統領は「国防生産法」を発動し、除草剤グリホサートの増産を命じました。これもある種の規制緩和で、農薬を生産、拡販することで農業分野の生産性を改善しようという狙いです。ただ一方で、バイエル(旧モンサント)社が抱える数兆円規模の健康被害訴訟に対し、政府が「国家安全保障に不可欠」とお墨付きを与えることで、事実上の免責を与えようとしているとも言われています。

MAGAに通じる規制緩和⁉

これらは短期的には、関連企業の収益環境を改善するように見えます。農薬価格が下がり、自動車の排ガス対応コストが消えれば、大規模農家やデトロイトの自動車メーカーにとってプラスの話にはなりえます。アメリカを代表する自動車メーカーや化学メーカーが復活する!!まさにMAGA!!ということでしょうか。

でも、株価は盛り上がりません

しかし、株式市場の反応は驚くほど冷ややかです。

増産しても訴訟がなくなるわけじゃない

グリホサート増産が報じられた際、バイエルの株価は一時的に反発したものの、すぐに失速しました。政府が安全だと言っても、世界中の裁判所と消費者がそれを認めない限り、法的な負債リスク(Liability)は消えないわけですから、当然です。

自動車はEVシフトの往復ビンタ状態

また、米国自動車メーカーは既に一旦ガソリン車の生産からEVへ大きく舵を切りましたが戦線縮小を余儀なくされ、今はEV関連の赤字や減損処理に追われています。排ガス対応の単価が下がってもガソリン車の販売が伸ばせなければ意味がないですよね。今更、排気ガスまき散らす昔懐かしい「アメ車」に乗りたい人がどのくらいいるんでしょうか?目先の不確実なコストダウン(?)よりも、グローバルなトレンドについていけていないことが懸念されているんでしょう。

理想と現実の間の「自己矛盾」

事程左様に、大統領のサイン一つで「過去」へ戻そうとする強引な手法は、今や政権内部の理想と経済・市場の現実の間で、様々な自己矛盾の増殖を引き起こしているようにも見えます。

エネルギー増産とAI投資ブームの齟齬

まず、環境規制緩和の前から、トランプ大統領は化石燃料の増産を後押ししています。それによってエネルギーコストを下げ、インフレを抑えようとしてきました。一方で、AI関連投資がブームとなり、データセンターが急激に増加、そこで使われる電力が爆発的に増えたため、インフレ高止まりの一因になっています。

結果的に企業の脱炭素投資を後押し?

こうした状況を受けて大統領は、「テック企業は自前で電気を調達せよ」と突き放しました。しかし、これは政権の「化石燃料回帰」を自ら否定する行為に他なりません。GoogleやMicrosoftが自前で投資しているのは、トランプ氏が推す石炭火力ではなく、「24時間365日のカーボンフリー」を実現する次世代再エネや小型核炉です。大統領の「自分でなんとかしろ」という投げ出しが、結果として民間企業の脱炭素投資を後押ししてたりします。ねえ。

健康被害リスクとMAHAの矛盾

さらに深刻なのが、政権の看板の1人であるケネディ厚生長官が進める「MAHA(Make America Healthy Again)」運動との衝突です。「子供たちの健康を取り戻す」と叫びながら、発がん性の疑いがあるグリホサートを増産する――。さらに言うまでもなく、EPAの撤回で自動車の排ガス規制や工場の排出ガスの環境規制が連邦レベルで緩和されるということなら、大気汚染が深刻化して健康被害リスクが高まります。

企業の利益と国民の健康、どっちが大事?

この支離滅裂な構図は、健康を重視する支持層にとって「最悪の裏切り」になりえます。中間選挙を前に、政権は「産業界への利益供与」と「支持層の健康」という、決して両立しない二兎を追っているように見えます。あとは国民がどちらを重視するかにかかってきます。

気候変動はワインの生育環境には間違いなく悪影響

GHG(地球温暖化ガス)排出増加と気候変動や地球温暖化が、因果関係なのか相関関係なのかには深入りしませんが、気候変動はワインの生育環境に間違いなく悪影響を及ぼしています。カリフォルニアでは、山火事が毎年のように起きてブドウの生育というよりも畑そのものに危険をもたらしています。

水の問題も深刻化

さらに、水の問題が深刻化しています。カリフォルニアの郡(County)レベルでは、かつてないほど「水の私有化」への制裁が強まっています。例えばパソロブレスを擁するサンルイスオビスポ郡などでは、2026年の地下水管理法(SGMA)に基づき、農業用井戸の流量制限に違反した農家に対し、高額な罰金と汲み上げ停止措置が断行されることになっています。

気候変動対策=生き残り努力

ブドウ農家にとって、ワシントンの「温暖化ガスは危険ではない」という宣言は、目の前の「枯れた井戸」と「迫りくる山火事」の前では何の役にも立ちません。彼らにとって気候変動への適応は、もはや政治的な選択ではなく、ワインづくりをサステナブルにして生き延びる努力そのものと言っても過言ではないでしょう。

ただし除草剤はブドウ畑でも使われてます

ついでに言うと、グリホサートはカリフォルニアのブドウ畑でも使われています。いつの調査なのかはわかりませんが、ナパやソノマといった高級産地でも、約50%前後の面積でグリホサート(ラウンドアップ等)が使用されているという話が流布しています。

「手放しにくい道具」になっている除草剤

特に、人件費が高騰しているカリフォルニアでは、手作業や機械での除草に比べて圧倒的にコストが安いため、経営を圧迫されている中規模以下の農家にとっては「手放しにくい道具」となっていることは否定できないでしょう。ただし、使用量は年々減少傾向にあるとさえています。特にプレミアムなワイナリーほど、後述する土壌への影響を懸念して、羊を放牧したり、最新の自動除草ロボットを導入したりして「脱・グリホサート」を加速させています。

除草剤のワインの味への影響は?

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