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感応交叉

― 追憶のフラグメント #15―

屋台の香り、提灯の灯り、
すれ違う人の声。
通りを歩くだけで、
過去のどこかが静かに目を覚ます。

たこ焼きのソースの匂いに、
幼い頃の笑い声が重なる。
焼きとうもろこしの焦げる音に、
遠い夏の夜が透けて見える。

でも、不思議だ。
同じ道を歩いても、思い出す記憶は毎年違う。
去年は友達と笑い合った夜を思い出したのに、
今年は、ひとりで帰った雨上がりの夜が浮かぶ。

トリガーは、目の前の風景の中にある。
けれど、何が心の扉を開くのかは、
その日の自分にしか分からない。

記憶は「呼び出すもの」ではなく、
「呼び寄せられるもの」なのかもしれない。

屋台の湯気が流れるたびに、
光と音と香りが心の奥をノックする。
けれど応えるかどうかを決めるのは、
いま、この瞬間の“心の温度”だ。

人は、同じ祭りを何度も見ているようで、
実は毎回、違う記憶と再会している。
それは過去が変わるのではなく、
自分が少しずつ変わっているからだ。

――だから祭りは、懐かしさの再演ではなく、
  記憶との“再交差”の場所なのだろう。

風が抜けて、提灯が小さく揺れた。
その揺らぎの中で、
ひとつの記憶が静かに灯る。


後書き

『感応交叉(かんのうこうさ)

祭りの風景は、
毎年同じように見えて、
実は少しずつ違う記憶を呼び起こします。

屋台の香り、
提灯の光、
人の声。

そのひとつひとつが、
心の奥に眠っている時間に
静かに触れていく。

何を思い出すのかは、
その日の自分にしか分からない。

感覚が反応した瞬間、
過去と現在が小さく交差する。

そんな時間の交差点を、
「感応交叉」と名付けました。

〜4410〜

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