残火
-追憶のフラグメント #39 -
日差しが強くなりはじめる頃、
決まって首の後ろが焼ける。
毎年、同じところ。
最初は気づかなくて、
風呂に入ったときにヒリつく。
ああ、またこの季節か、と思う。
その感覚で、
ふと、昔を思い出す。
子どもの頃も、
同じように首の後ろを焼いていた。
夢中で外にいて、
気づいたら赤くなっている。
触れると痛くて、
シャツの襟が当たるだけで気になった。
でも、
なぜか嫌じゃなかった。
それはきっと、
その日の時間がちゃんと残っている証だった。
一日中外にいたこと、
帰る時間を忘れていたこと、
全部が、あのヒリつきに残っていた。
大人になった今も、
毎年、同じように焼ける。
そして、
少しずつ慣れていって、
気づけば何も感じなくなる。
また冬が来て、
また同じことを繰り返す。
変わらないようで、
少しずつ違う毎日。
それでも、
最初に感じるあのヒリつきだけは、
毎年、ちゃんとあの頃に繋がっている。
後書き
『残火(ざんか)』
肌に残る熱は、
ただの日焼けじゃなくて、
その日をどう過ごしたかの、
小さな証だったのかもしれない。
時間は過ぎていくのに、
なぜか消えずに残るものがある。
それは強い光じゃなくて、
ふとした瞬間に思い出す、
かすかな残り火のようなもの。
あのヒリつきも、
きっとそのひとつだった。
消えていく痛みの中に、
確かにあった時間だけが、
静かに灯り続けている。
〜4410〜
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