AI文章が「気持ち悪い」のは、語尾のせいではない—反復・段落の役割・根拠と結論の範囲を公開前に点検する
最近、noteやブログ、SNSで、AIを利用した文章を目にする機会が大幅に増えたと感じています。これは調査によって確認した数字ではなく、私個人の体感です。
私自身もAIを使用した勉強法を提案したり、などむしろ、AI使用を推奨しております。資料の整理や、構成案の比較、説明の抜けや文章の重複を探す作業などにおき、非常に便利です。そのため、AIを利用して書かれた文章を一律に否定するつもりはありません。
それでも、特に長文に多いのですが、読んでいる途中で身体が拒否しているのではないか、と思うほど先へ進めなくなる文章が多々あります。誤字が多かったり、文法が破綻しているわけでもありません。見出しも整っていますが、何段落読んでも最初に示された内容から話がほとんど進んでいません。
例えば、一段落目で述べた内容が次の段落では少し違う表現で繰り返されます。見出しが変わっても、各段落は似た一般論を説明しています。本文には限定された材料しか置かれていないにもかかわらず、最後には対象範囲の広い結論が自然な文体で現れることが多々あります。
AI文章を改善する方法として、語尾を崩す、一人称を加える、接続詞を減らす、体験談を入れるといった提案があります。このような修正により表面的な印象は変わるかもしれません。しかし、文章の中で情報が増えていなければ、読みにくさの原因は残ります。
本記事では、文章を書いたのが人間かAIかを判定するのではなく、文法的には成立している文章が、なぜ読みにくくなるのかを整理していきたいと思います。公開前に確認するのは、情報が増えない反復、段落の役割の均一化、本文の根拠を越えた結論の三点です。
AI生成の判定と、文章品質の評価は分けて考える
日本語の公共コメントと複数の大規模言語モデルによる文章を比較した研究では、文章の特徴を用いた分類で高い精度が得られた一方、一般の人による判定能力は限定的でした。参加者が判断の手掛かりとして挙げた内容には、言い回し、語尾、接続詞、句読点など、文章表面の特徴が多く含まれていました(Zaitsu et al., 2025)。
自己紹介文を対象とした別の研究でも、人間による判定はほぼ偶然に近い水準でした。一人称や個人的な内容が含まれていると、人間が書いたように感じられる傾向はありましたが、そのような特徴は生成する側でも再現できます(Jakesch et al., 2023)。
また、人間が書いた文章をAIで整えただけでも、検出器がAI生成と判定しやすくなり、AIがどの程度関与したのかを区別しにくくなるという報告があります(Saha & Feizi, 2025)。
これらの研究から、特定の語尾や接続詞だけを手掛かりに、AI生成かどうかを安定して判定するのは難しいことが分かります。
一人称や俗語を加えれば、人が書いたような印象には近づくかもしれません。しかし、同じ内容を繰り返している状態や、根拠より大きな結論が置かれている状態は、それだけでは改善しません。
AIが書いたかどうかを当てることと、その文章を修正することは別の作業です。公開前の原稿では、著者を推測するより、各段落で情報がどのように増え、どのように結論へ進んでいるかを見る方が役に立ちます。
以下で紹介する研究は、対象言語、文章ジャンル、使用モデル、実験条件がそれぞれ異なります。日本語のAI記事全体へそのまま一般化するのではなく、個別の原稿を点検する際の手掛かりとして扱います。
段落が増えても、判断材料が増えていない
文章の中で同じ主張が複数回登場しても、それだけで問題になるわけではありません。
最初に結論を示し、次の段落で根拠を提示し、その後に条件や具体例を加える文章では、中心となる主張が同じでも、読者が判断するための材料は増えています。
一方、最初の主張を別の言葉で言い換え、さらに少し抽象的な表現へ変え、最後に同じ結論へ戻る文章では、文字数だけが増えています。表現は変わっていますが、読者が新しく得た材料はほとんどありません。
英語の論証文を対象とした研究では、AI生成文は、すでに提示した情報を再び示す表現や、同じ主題を維持する展開を多く使い、単純な内容を並べた冗長な文章になりやすいと報告されています(Yang et al., 2024)。
英語ニュースの段落を対象に生成文の問題を分類した研究でも、冗長さ、非一貫性、自己矛盾などが品質上の問題として挙げられています(Dou et al., 2022)。
自分の原稿を確認するときは、隣り合う二つの段落を読み比べ、後ろの段落で何が追加されたのかを書き出します。新しい根拠、条件、具体例、比較、反例、限界のいずれかが加わっていれば、文章は前へ進んでいます。
何も追加されておらず、表現だけが変わっている場合は、前後の段落を統合できる可能性があります。
この箇所では、後ろの段落で増えた判断材料を具体的に挙げられるかを確認します。何も挙げられなければ、その段落は同じ話の二周目かもしれません。
見出しが変わっても、段落の役割が同じなら平坦になる
以前、私はAIへ渡す指示を三段階に変え、「磯の生き物」という同じ題材で文章を生成しました。そのうち、記事の中心となる説明順を指定せず、品質に関する条件だけを加えた文章には、次のような段落が並びました。
まず注目したいのは、乾燥という問題です。
次に重要なのが、波の力への対応です。
さらに、磯の生き物同士の関係にも目を向けてみましょう。
また、潮だまりも、磯を理解するうえで欠かせない存在です。
乾燥、波、生物間関係、潮だまりは、いずれも磯の生物を説明する材料です。しかし、四項目が同じ重さで並び、前の内容が次の説明の前提になっていません。話題は変わっていますが、段落の役割は、関連事項を一つずつ紹介する一般説明のままです。
文章が平坦に感じられる原因は、語尾や文の長さが似ていることだけではなく、段落が果たしている役割まで同じ場合があります。
生成文章では、人間の文章よりも定型的な構文テンプレートが高い割合で使われるという報告があります(Shaib et al., 2024)。談話構造を比較した研究でも、人間の文章は分野によって構造の変動が大きい一方、生成文章は変動が小さい傾向を示しました(Kim et al., 2024)。
文章の段落には、それぞれ異なる役割があります。主張を提示する段落、その根拠を説明する段落、具体例を置く段落、別の事例と比較する段落、成立条件を限定する段落、反例や限界を示す段落などです。
しかし、見出しだけが変わり、すべての段落が一般的な説明を続けている場合があります。四つの見出しがあっても、各段落へ役割を付けた結果がすべて「一般説明」であれば、読者は同じ仕事をする段落を続けて読むことになります。
この状態で文の長さを変えたり、接続詞や語尾を入れ替えたりしても、文章の役割は増えません。表面に変化はついても、内容の進み方は平坦なままです。
型があること自体は問題ではありません。論文、報告書、手順書には、それぞれ必要な形式があります。確認したいのは、その型が文章の目的に必要なのか、新しい材料がないまま同じ役割を繰り返しているだけなのかという点です。
公開前には、各段落の横へ「主張」「根拠」「具体例」「比較」「条件」「限界」などの役割を書きます。同じ役割が長く続く場合は、具体例や条件が不足しているか、複数の段落へ分ける必要がなかった可能性があります。
ここでは、各段落の役割を一語で示せるかを見ます。役割を説明できない段落や、前後と同じ仕事しかしていない段落は、材料の追加、順序の変更、統合のいずれかを検討します。
根拠が少ないまま、結論だけが広がることがある
具体性の薄い文章を改善するために、数字や固有名詞を増やせばよいわけではありません。必要なのは、主張の対象と条件を示し、その結論を支える根拠を置くことです。
科学解説文を比較した研究では、人間が書いた文章の方が、固有名詞、略語、数字を多く含み、文の長さにも変動がありました。一方、生成文では、より一般化された名詞表現が多く使われていました(Desaire et al., 2023)。
なお、この研究は、特定誌に掲載された文章とGPT-3.5による生成文を対象としています。科学文章全般へ、そのまま一般化できる結果ではありません。
科学論文の要約を複数のモデルに作成させた研究では、LLMによる要約は、人間による要約より広すぎる一般化を多く含んでいました(Peters & Chin-Yee, 2025)。
ここで分けたいのは、観測された事実、そこから考えられる解釈、最終的な結論です。
たとえば、資料から確認できたのが「特定の条件下で、二つの群の間に差が見られた」という結果だったとします。この結果から、「この条件では、使用した方法が結果に影響した可能性がある」と解釈することはできます。
しかし、別の条件や対象についての根拠がないまま、「この方法はさまざまな対象に広く有効である」と結論づけることはできません。特定条件での観測結果と、一般的な有効性の間には、別の証拠が必要です。
生成された文章では、前後の接続が自然であるため、根拠の範囲を越えた結論も滑らかに読める場合があります。文章として自然であることと、その結論が資料から導けることは別です。
公開前には、結論を直接支えている記述が本文のどこにあるかを探します。根拠を指せない場合は、資料が不足しているか、結論の対象範囲が広すぎる可能性があります。
この箇所では、結論を直接支える記述を本文中から指せるかを確認します。根拠が特定の対象や条件だけを扱っている場合は、結論にも同じ条件を戻します。
文章構造の点検だけでは確認できないこともある
ここまで扱った三項目から、意味の増えない反復、段落の役割の平坦化、根拠より大きな結論を見つけやすくなります。
一方、実際に原稿を公開する前には、文章の流れ以外にも確認が必要です。
固有名詞、数字、日付、制度が正しいかを確かめなければなりません。元の依頼や記事の目的から話が外れていないか、AIが別の話題を勝手に追加していないか、引用や出典を確認できるかも点検する必要があります。一部を修正したことで、別の段落と矛盾していないかも確認します。
問題が見つかったとしても、原稿全体を書き直す必要があるとは限りません。そのまま残せる箇所、局所的に直す箇所、重複として削る箇所、事実確認へ戻す箇所を分けて扱う必要があります。
元の依頼からのずれや未確認情報も含めて原稿を分類し、必要な箇所だけを修正する手順は、「AI原稿・公開前監査キット(仮)」へまとめる予定です。
AIらしさを表面から消すより、文章が段落ごとに一歩ずつ進んでいるかを確認する方が先です。
参考文献
Zaitsu, W., Jin, M., Ishihara, S., Tsuge, S., & Inaba, M. (2025). “Stylometry can reveal artificial intelligence authorship, but humans struggle: A comparison of human and seven large language models in Japanese.” PLOS ONE, 20(10), e0335369. DOI: 10.1371/journal.pone.0335369.
Jakesch, M. et al. (2023). “Human heuristics for AI-generated language are flawed.” Proceedings of the National Academy of Sciences, 120(11), e2208839120. DOI: 10.1073/pnas.2208839120.
Saha, S., & Feizi, S. (2025). “Almost AI, Almost Human: The Challenge of Detecting AI-Polished Writing.” Findings of the Association for Computational Linguistics: ACL 2025, 25414–25431. DOI: 10.18653/v1/2025.findings-acl.1303.
Dou, Y., Forbes, M., Koncel-Kedziorski, R., Smith, N. A., & Choi, Y. (2022). “Is GPT-3 Text Indistinguishable from Human Text? Scarecrow: A Framework for Scrutinizing Machine Text.” Proceedings of the 60th Annual Meeting of the Association for Computational Linguistics, 7250–7274. DOI: 10.18653/v1/2022.acl-long.501.
Yang, S., Chen, S., Zhu, H., Lin, J., & Wang, X. (2024). “A comparative study of thematic choices and thematic progression patterns in human-written and AI-generated texts.” System, 126, 103494. DOI: 10.1016/j.system.2024.103494.
Kim, Z. M., Lee, K., Zhu, P., Raheja, V., & Kang, D. (2024). “Threads of Subtlety: Detecting Machine-Generated Texts Through Discourse Motifs.” Proceedings of the 62nd Annual Meeting of the Association for Computational Linguistics, 5449–5474. DOI: 10.18653/v1/2024.acl-long.298.
Shaib, C., Elazar, Y., Li, J. J., & Wallace, B. C. (2024). “Detection and Measurement of Syntactic Templates in Generated Text.” Proceedings of the 2024 Conference on Empirical Methods in Natural Language Processing, 6416–6431. DOI: 10.18653/v1/2024.emnlp-main.368.
Desaire, H., Chua, A. E., Isom, M., Jarosova, R., & Hua, D. (2023). “Distinguishing academic science writing from humans or ChatGPT with over 99% accuracy using off-the-shelf machine learning tools.” Cell Reports Physical Science, 4(6), 101426. DOI: 10.1016/j.xcrp.2023.101426.
Peters, U. H., & Chin-Yee, B. (2025). “Generalization bias in large language model summarization of scientific research.” Royal Society Open Science, 12(4), 241776. DOI: 10.1098/rsos.241776.
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