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真夏の夜のちょっと怖いお話 雨戸をゆらすのだあれ? 27

みなさま、こんにちは。

浅間のナツです。

暑いですね。

夏、真っ盛り。夏といえば。海と花火。それともうひとつ。

怪談。

今日は、本当にあったちょっぴり怖いお話です。ワタシが子供の頃のお話。確か小学校の4年生か、5年生の夏の話。どっちだったのかは忘れてしまった。ただ、3年生ではなかった。もうちょっと大きかった気がする。


そして、絶対に6年生ではない。というのも、ワタシが5歳から小学校6年生のゴールデンウィークまでのおよそ6年間、とんでもなくボロい家に住んでいた。そして、このボロ屋での、ある夏の夜の体験だからである。


このボロ屋に引っ越したのは、ワタシが5歳の時だ。ワタシの人生最初の引っ越し。期待と不安でドキドキだった。でも、このボロ屋を見た時ガッカリした。


父親は庭の広さに感動していたが、庭というよりも汚ならしい空き地にしか見えない。古ぼけた木造平屋。玄関は格子付きのガラスの引戸。子供ながらに、防犯面で不安が残る作りだ。


バラの生垣が、道路に面した箇所を壁のように遮っている。道路からは、このボロ屋の全体像がよく見えない。庭が見えるだけだ。うまい作りだと思う。


玄関から入ると右手にトイレ。ボロ屋のわりにトイレはキレイだった。洋式で水洗。左手に6畳間が1つ。子供部屋だ。ワタシと弟が使っていた。

正面は廊下でそのまま進むと、妙に広い台所とお風呂場があった。今思うと奇妙な造りだと思う。台所に風呂場があるのだ。脱衣所も何もない。ガラス戸を開けるとそのまま風呂場なのだ。

ワタシや弟は子供だったから、部屋で裸になり、そのまま台所の横の風呂場に行った。両親がどうやってお風呂に入っていたのか記憶にない。子供が裸で台所をうろうろする家だった。子供だったから良かったけどさ。今、この家に住んでたら、悪夢よ。50近いオッサンが、台所を裸でうろうろするんだもん。


さて、続けよう。玄関から台所まで廊下がある。それはさっき書いた。子供部屋と同じ並びに、6畳間の部屋がある。台所と繋がっている。この部屋には縁側があって、庭に降りることができる。ここが両親の寝室。ただ、縁側があって気軽に庭に出れるので、寝室という感じはしない。夜、この部屋で寝ているだけで、昼間は家族が行き来する空間と化す。


この寝室に隣接して居間がある。道路側から見ると、子供部屋、寝室、居間と並んでいる。居間は、寝室と台所両方と接している。この3部屋は双方行き来ができる。台所から居間と寝室。寝室からは居間と台所。居間も庭に面していて、大きな履き出し窓がある。天井から地面近くまである窓のこと。この居間からも庭に出れるが、基本的にこの窓は使わない。


子供部屋は、道路側と庭に窓が2つある。庭側は履き出し窓だ。庭に出ることは可能。ただ、基本的にここから庭には出ない。道路側の窓は、すぐ外がバラの生垣なので、あってもなくても外は見えない。


道路側と縁側から庭に行ける。道路側には門はなかった。ただ、入り口が駐車スペースになっていて、車で蓋をする感じだ。この車の脇を通り抜けて庭に出入りする。また、庭の入り口付近に、当時飼っていたラブラドールレトリバーのロズちゃんが、番犬よろしくいた。このロズちゃんの小屋がある場所は、子供部屋の直ぐ外だった。


我が家は毎年夏休みになると、群馬県嬬恋村の別荘で2、3週間過ごすのが、恒例行事であった。8月の頭に行き、夏休みの最終日前日に父親の車で帰ってくる。家に帰る時はたいてい夜であった。ワタシも弟も、車の中で爆睡しているので、まったく眠れない。目がバッキバッキだ。


子供部屋で、川の字になり寝転んでいた。扇風機がブウンブウンと唸って、部屋の温い空気をかき混ぜる。扇風機の前で、ワタシは弟と取り留めもない話をしていた。ワタシが道路側に寝て、弟は両親の寝室側だ。我々の枕側に庭がある。足は廊下側だ。弟は5歳年下だ。ワタシが小学校5年生だった場合、保育園の年長さんになる。


ふと弟が周囲を気にしだした。

「お兄ちゃん。お兄ちゃん。何か音しない?」

ワタシは、扇風機のスイッチを切った。


ガサガサ。ギシギシ。

ガサガサ。ギシギシ。


何かが揺れて、擦れる音。


「ひぃ! お兄ちゃん見て!」


弟は小さい声でワタシに言うと、ワタシの背後を指差さした。その声は震えている。ワタシは、弟の指差す方向に目を向けた。道路側の、あのバラの生垣の近くの窓だ。


その窓の雨戸が、ギシギシと音を立てて揺れている。

ワタシたちからは、窓全体が揺れているように見えた。


誰かが揺らしている。間違いなく誰かがいる。ヤバい。ワタシはとっさに庭側の窓の雨戸の鍵をかけた。鍵というか、留め具というか。そして、弟に指示を出した。


「お父さんたちの部屋の雨戸の鍵を確認してきてくれ」

弟は何も言わずに隣の両親の寝室に行った。この時のワタシの判断力はメチャクチャ冴えていたと思う。家に帰ってきた時、雨戸をいったん開けて空気の入れ換えをしたのだ。その後、再度雨戸を閉めたのだが、鍵をかけた記憶がなかった。鍵をかけた記憶がないことを、あの瞬間思い出したのだ。


この雨戸を揺すっている何者かは、泥棒だと思った。だから、次に庭側の雨戸を開けようとするだろう、と思った。

案の定、庭側の雨戸が揺れ出した。

ガサガサ、ギシギシ。

ガサガサ、ギシギシ。


雨戸が揺れる音しか聞こえてこない。人の声はしない。無言。はっきり言って怖い。弟と2人で震え上がった。


あとあと思うことなのだが、ワタシの判断力は全然冴えていなかった。ワタシは、大きな判断ミスを2つした。1つは両親を叩き起こすべきだった。あと、もう1つは、居間の雨戸の確認をしていない。居間の窓からは庭に出たことがないから、居間と庭が結び付かなかった。


目の前の庭側の雨戸の揺れが止んだ。相変わらず、何の音もしない。耳が痛くなるような静けさ。

だが、その後、隣の寝室の方から

ガシャ、ギシャ、ガシャ、ギシャ。

ガシャ、ギシャ、ガシャ、ギシャ。

と金属が擦れる盛大な音が聞こえてきた。


子供部屋の雨戸は木製だが、両親の寝室の雨戸は金属製だ。その金属製の雨戸が揺れている。こんなに盛大な音なのに、両親は起きて来ない。そのうち静かになった。


終わったと思う間もなく、また、

ガシャ、ギシャ、ガシャ、ギシャ。

ガシャ、ギシャ、ガシャ、ギシャ。

と金属音が、暗い子供部屋に響いた。さっきよりは遠い音。居間の雨戸だと思った。弟と顔を見合わせた。お互いに居間の雨戸のことを忘れていた。鍵がかかっていますように。心の中で念じた。


そのうち音が止んだ。あとは静寂が続く。恐怖と緊張でガチガチになった夜だが、いつのまにか寝ていた。


朝になった。

ワタシは、朝早くから庭に出て検証作業をした。あれは単なる泥棒なのか。この庭には犬がいる。ロズちゃんだ。ロズちゃんが何の反応もしないなど、ありえるだろうか。ロズちゃんがちょっとでも動けば、首の鎖がこすれて何かしらの金属的な音が出る。その音さえしなかった。


本当に単なる泥棒なのか?


ワタシは、子供部屋の道路側の窓を調べようとして、そこでやめた。やめたというか、途方にくれた。この道路側の窓と、バラの生垣の間には、大人が入れるほどのスペースはない。ここに誰かが立って、雨戸を揺するのは無理がある。無理があるのよ。じゃあ、誰がこの雨戸を揺すった?

あれは、なんだったんだ。だが、雨戸は揺れた。それは間違いない。ワタシと弟は、この目で見たし、揺れる音も聞いた。

では。

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