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「大ゴッホ展」の予習はここで。     宇都宮美術館へ行くべき理由【ゴッホの跳ね橋と印象派の画家展】

補足情報(6月6日)

宇都宮には市立の宇都宮美術館と県立の栃木県立美術館があります。
【ゴッホの跳ね橋と印象派の画家展】は宇都宮美術館です。

会期終了が近づき、多くの方が訪れているようです。
6/13(土)・14(日)・20(土)・21(日)は入場制限が予定されています。
当日券の購入に時間が掛かると思いますが、観覧環境は維持されると思います。

マツガミネコーヒービルディング待ち時間が長くなっています。

混雑の東京を離れて。宇都宮で“静かに観るゴッホ”という贅沢

「大ゴッホ展」の陰に隠れているとはいえ、この展覧会が驚くほど空いているのは、正直、少し不思議なくらいです。

宇都宮美術館で6月21日まで開催中の『ゴッホの跳ね橋と印象派の画家たち』展。

これは“地方開催”という言葉では片付けられない密度です。
ドイツの名門、ヴァルラフ=リヒャルツ美術館 コルブー財団コレクションが物語る、フランス近代絵画の“地層”を歩く濃密な体験です。

美術館エントランスと内庭


本展の面白さは、その構成にあります。
印象派を「美しい風景画」というゴールとしてではなく、あえて近代へ向かうための“通過点”として配置する視点。

ポスト印象派、点描派、そして20世紀の色彩画家たちへ。
「何かが始まり、変化していく熱気」の中に、印象派も、ゴッホも置かれているのです。


空の誕生、そして絵画の「遊び心」へ

旅は「空」から始まります。

「空の王者」ウジェーヌ・ブーディン。

雲はただの背景ではなく、刻々と変わる“時間”そのもの。
若き日のモネに戸外制作を薦めたブーディン。
モネが何に目覚めたのか——その理由が、腑に落ちる瞬間です。

そして、思わず口元が緩む一作。

エドゥアール・マネ《アスパラガスの束》

対になる《一本のアスパラガス》がオルセー美術館にあることは有名ですが、本来の「本体」が今、目の前にある贅沢。

出来栄えを気に入った依頼主から多めに渡された代金。
「束から一本、こぼれていましたよ」と小さな絵を追加で送る。
巨匠の遊び心に触れたあと、不思議と作品との距離が縮まる。

——こういう瞬間があるから、美術館はやめられない。


ゴッホが渡った「心の橋」

そして、旅は展覧会の核へ。

フィンセント・ファン・ゴッホの初期作《ニューネンの農家》の、重く、暗い土の色。

ジャガイモを食べる人々と同時期の作品
実物はもっと暗いです。
当時評価されなかった理由が、嫌でも伝わってくる。

そこから色彩の実験を経て、一転して現れるのが《アルルの跳ね橋》。

絵の具の厚みが、もはや“物質”としてそこにある。

光は「描かれたもの」ではなく、重なり合う色彩から「放たれている」。

南仏の陽光が、新緑に包まれた宇都宮の森に差し込む瞬間。
“人越しに観るゴッホ”ではなく、
自分の距離で向き合える時間があります。
息がかかるほどの距離で、ほとんど人に遮られることなく対峙できます。
そんな時間は、ただの鑑賞では終わりません。
——作品の中に入り込むような体験になります。
黒い馬車の影、日傘の女性。思わず、その動きを目で追ってしまうはずです。

大ゴッホ展アルルの跳ね橋展の予習

来年、クレラー=ミュラー美術館コレクションの《跳ね橋》が来日します。ヴァルラフ=リヒャルツ美術館 コルブー財団コレクションの作品と見比べる——そんな贅沢な“予習”ができるのも、この展覧会の密かな醍醐味です。

作家とともにセーヌの岸辺に立つ

カタログの序文 マルクス・デギルート館長は
「ゴッホとともにアルルの跳ね橋を渡り、(中略)モネ、カイユボット、(中略)と共にセーヌ川の岸辺に立ち(後略)」と寄せています。

右上から時計回りにゴーガン、カイユボット、モリゾ、モネ、モネ、シニャック

作家たちの観察力、想像力を見比べる素晴らしい体験。


森のカフェで、色彩を反芻する

展示を見終えたあとも、この場所は裏切りません。

5月1日、館内にマツガミネコーヒービルヂングがオープン。
新緑を望む窓辺で、自家焙煎のコーヒーとパンケーキを。

開店準備が進む松が峰コーヒービルディング
4月29日撮影

図録をめくりながら、さっきまで見ていた色彩をゆっくりと心に馴染ませる。この余韻まで含めて、ひとつの体験です。

オーディオガイドは用意されていませんが、図録が素晴らしい出来栄えです。 
おすすめします。


帰り道までが、この旅の完成

帰路は、少しだけ街を歩いてみてください。
宇都宮は、決して「餃子だけの街」ではありません。

松が峰教会

もしタイミングが合えば、駅で九尾すしを手に入れて、湘南新宿ラインのグリーン車へ。少し贅沢なシートに身を預け、今日出会った色彩を思い返す。

その時間をもって、この旅は完成します。


この展覧会、東京には行きません。

大阪・名古屋へ巡回しますが、関東では宇都宮だけ。
入館料1,200円、そしてこの静かな鑑賞環境。

混雑を抜けた先にある、自分だけの「跳ね橋」。
わざわざ足を運ぶ理由は、もう十分にあるはずです。
——この距離感でゴッホを観られる機会は、そう多くありません。

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