患者様は“理論”を聞きに来ているのではない。なぜ専門用語が多いと、患者様は離れていくのか
現場に立っていると、説明の大事さを何度も感じます。
今どういう状態なのか。
なぜ痛みが出ているのか。
この先どうしていけばいいのか。
整骨院において、これは施術と同じくらい大事な仕事です。
でも、現場で長くやっていると、あることを強く思うようになります。
それは、
説明していることと、伝わっていることは全く別だ
ということです。
むしろ、一生懸命説明しているのに、患者様の中には何も残っていない。
そんなことは、珍しくありません。
そしてその原因の一つが、
専門用語の多さ
だと思っています。
患者様は素人。気にしているのは“治るかどうか”
まず前提として、患者様は医療や施術の専門家ではありません。
もちろん、体のことに詳しい方もいます。
熱心に質問してくださる方もいます。
でも大半の患者様は、知識を学びに来ているわけではないです。
患者様が一番気にしているのは、とてもシンプルです。
これって治るのか。
このままで大丈夫なのか。
何回くらいで良くなるのか。
ここに通えば、自分は変われるのか。
ここなんです。
施術者側は、状態を正しく説明しようとします。
骨盤のこと。
筋肉のこと。
関節のこと。
炎症のこと。
神経のこと。
可動域のこと。
でも患者様が本当に知りたいのは、そこを通った先にある
「で、私はどうなるんですか?」
です。
ここに届いていない説明は、どれだけ正しくても弱い。
専門用語を並べても、患者様は納得もイメージもできない
現場でよくあるのが、知識がある人ほど、そのまま説明してしまうことです。
「筋緊張が強くて」
「可動域制限があって」
「骨盤のアライメントが崩れていて」
「神経の滑走性が落ちていて」
言っていることは間違っていない。
むしろ正しい。
でも患者様からすると、こうなりやすいです。
なんか難しい。
すごそうだけど、よく分からない。
で、私はどうすればいいんだろう。
つまり、専門用語が増えるほど理解が深まるわけではなく、
置いていかれる感覚
が強くなることがあるんです。
患者様は専門用語だらけの説明を聞いても、自分の体の状態を頭の中で絵にできません。
納得というのは、難しい言葉を聞いたときに生まれるのではなく、
自分の状態がイメージできたとき
に生まれます。
“すごそう”は作れても、“安心”は作れない
専門用語には、一時的な力があります。
たしかに患者様から見れば、
「詳しそう」
「ちゃんと見てくれていそう」
と思うことはあるでしょう。
でも、その“すごそう”は長続きしません。
なぜなら患者様の中に、理解が残っていないからです。
理解できなかった説明は、安心にはつながりません。
むしろ逆で、不安につながることすらあります。
「そんなに悪いんですか?」
「なんだか自分には難しそう」
「質問しづらいな」
「よく分からないけど、とりあえず返事しておこう」
こうなってしまう。
表面上は「なるほどですね」と言っていても、内心ではついていけていない。
この状態で次回予約の話をしても、継続は弱くなります。
なぜなら患者様の中で、
通う意味が自分の言葉になっていない
からです。
現場では“説明しているのに伝わっていない”が本当に多い
整骨院の流れの中では、説明がひとつの工程になりやすいです。
問診して、評価して、状態説明して、施術して、今後の話をする。
この流れ自体は間違っていません。
でもその中で、説明が
「やるべき工程」
になると危ない。
患者様が理解したかどうかより、
こちらが説明し終えたかどうかで進んでしまうことがあります。
よくあるのは、説明の途中で患者様が
「はい」
「そうなんですね」
「なるほどです」
と返してくれるので、伝わった気になることです。
でも実際は、分からなくても患者様は止めません。
特に遠慮がちな方、まじめな方、年配の方ほど止めない。
分からないまま話が進んで、
分からないまま次回予約の話になって、
分からないまま帰る。
そして家に帰ってから、ふとこうなる。
何を言われたんだっけ。
本当に通ったほうがいいのかな。
そこまで悪いのかな。
ちょっと様子を見てもいいかな。
これが離反の入り口になります。
患者様は“理論”より“見通し”を求めている
患者様が欲しいのは、完璧な解剖学の説明ではありません。
欲しいのは、もっと実際的なものです。
今どういう状態なのか。
なぜ今つらいのか。
このままだとどうなりやすいのか。
どうすれば良くなっていくのか。
どれくらいの見込みなのか。
ここが見えると、患者様は安心します。
たとえば、
「可動域制限があります」
よりも
「ここまで動くと引っかかるので、その先を無理に使って痛みが出ています」
「筋緊張が強いですね」
よりも
「ずっと力が抜けにくくて、軽く踏ん張り続けているような状態です」
「炎症があります」
よりも
「今は刺激に敏感な時期なので、無理するとぶり返しやすいです」
このほうが患者様には入ります。
大事なのは、専門用語をゼロにすることではありません。
患者様が分かる言葉に翻訳することです。
経験の浅いスタッフほど、専門用語に逃げやすい
これは院長をしていると、よく見える部分でもあります。
経験の浅いスタッフほど、説明のときに専門用語が増えやすい。
なぜかというと、不安があるからです。
浅く見られたくない。
ちゃんとしているように見せたい。
知っていることを出したい。
曖昧に話すのが怖い。
その気持ちはすごく分かります。
でも、そこで専門用語に寄ると、患者様との距離は縮まるどころか離れます。
院長目線で見ると、
説明は頑張っている。
言葉数も多い。
知識も出ている。
でも患者様の表情が止まっている。
うなずいてはいるけど、前のめりではない。
最後の提案になると返事が濁る。
次回予約が弱い。
こういう場面、あると思います。
問題は知識不足ではなく、
翻訳不足です。
自分の頭では理解できている。
でも患者様の言葉に置き換えられていない。
ここが育たないと、知識が増えるほど逆に伝わらなくなることがあります。
専門用語は、施術者の安心にはなっても、患者様の安心にはならないことがある
ここは少し耳が痛いですが、大事なところです。
専門用語を使って説明すると、施術者側は少し安心します。
ちゃんと話した。
原因も言った。
方針も伝えた。
必要性も説明した。
でもそれで満たされているのが、患者様ではなく
自分の“説明した感”
になっていることがあります。
本当に見るべきなのはそこではなくて、
患者様の不安が減ったか。
患者様が自分の状態をイメージできたか。
患者様が次の一歩を踏み出せる状態になったか。
ここです。
説明したかどうかではない。
伝わって、動ける状態になったかどうか。
これが大事です。
患者様が離れるのは、技術不足だけじゃない
患者様が離れたとき、つい技術を疑います。
効果が弱かったのか。
見立てが甘かったのか。
施術内容が合っていなかったのか。
もちろんそれもあります。
でも実際は、それだけじゃないです。
患者様は、
意味が見えないものを続けにくい。
何を目指して通っているのか分からない。
どこまで通う必要があるのか分からない。
今がどの段階なのか分からない。
やめたらどうなるのか分からない。
この状態だと、少し楽になった時点で離れやすいし、少し忙しくなっただけでも通院は切れます。
逆に、まだ症状が残っていても
「今はここまで来ています」
「次はここを目指しています」
「ここを越えるためにあと少し必要です」
と見通しがある患者様は継続しやすい。
つまり説明は、ただの親切ではありません。
継続率に直結する運営の土台です。
院長として現場で徹底したいこと
院長として現場を見るなら、スタッフに求めたいのは“説明量”ではないと思っています。
知識量でもない。
難しい言葉を使えることでもない。
見たいのは、
患者様が分かる言葉に変えられるか。
患者様の表情が変わるか。
患者様の不安が減っているか。
患者様が自分の状態を家族に説明できるか。
ここです。
「専門的に説明して」ではなく、
「患者様が家に帰って説明できる言い方にして」
と伝えたほうが、本質に近いと思います。
知識を増やすことも大事。
でもそれ以上に大事なのは、
相手に届く形で渡せることです。
難しいことを知っている人は多い。
でも難しいことを、相手に伝わる形で話せる人は強い。
現場では、そこに差が出ると思います。
最後に
患者様は、理論を聞きに来ているのではありません。
もちろん専門性は必要です。
正しい見立ても必要です。
知識も技術も必要です。
でも患者様が本当に求めているのは、
良くなる見通し
自分の状態への納得
この先どうすればいいかの理解
です。
だからこそ、専門用語を並べるだけでは足りない。
患者様は素人です。
だからこそ不安になります。
だからこそ分かる言葉が必要です。
だからこそ安心できる説明が必要です。
難しいことを難しく話すのは、実はそんなに難しくない。
でも難しいことを、患者様が分かる形で伝えるのは簡単ではない。
だからこそ、そこに本当の技術が出るのだと思います。
患者様は、専門用語を聞きに来ているのではない。
“治るのか”“どうすれば良くなるのか”を知りに来ている。
この前提を忘れないことが、
信頼にも、継続にも、結果にもつながると思っています。
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