あの時、伝えきれなかった感謝を。AI翻訳時代に、私が「自分の言葉」で英語を話したい理由。
私が人生で一番、「英語が話せたらなぁ」と心から思ったのは、大学生の頃にヨーロッパを一人旅していた時のことだった。
いよいよ日本へ帰国する、というその日。
チェコ・プラハの空港で、突然、爆発物騒ぎが起きた。
空港内は一瞬にしてものものしい空気に包まれ、利用客は全員外へ避難。
あたりは騒然としていて、現地のアナウンスが響き渡るけれど、何を言っているのかさっぱり分からない。
掲示板もよく分からない。
携帯の電波も不安定で、日本の家族や友人に連絡を取ることもできなかった。
異国の地で、たった一人。
「私は無事に日本へ帰れるんだろうか」
「もし本当に爆発が起きたらどうしよう」
じわじわと恐怖が押し寄せてきて、今にも泣き出しそうだった。
そんな時、近くにいた韓国人の方が優しく声をかけてくれた。
英語と身振り手振りで、今何が起きているのか、これからどうすればいいのかを一生懸命教えてくれたのだ。
その温かい眼差しと言葉に、張り詰めていた心がどれほど救われたか分からない。
結局、飛行機は飛ばず、航空会社が手配してくれたホテルに1泊することになった。
タクシーで移動するのだが、お金がもうない。
正確には日本円はあるが、チェコ・コルナがなかった。
韓国人の方が、タクシーに一緒に乗って行こうと声をかけてくれた。
そして、お金もいらないよと言ってくれた。
翌朝も、たまたま会えて、空港への行き方決まってるの?と聞いてくれて、No!と言うと、一緒にタクシー乗って行こうと言ってくれた。
そして、無事に飛行機へ乗って帰った。
乗り継ぎ場所で別れたとき、
私はその人に何度も頭を下げた。
でも、あの時の私が振り絞って言えたのは、
"Thank you very much."
それだけだった。
本当はもっと言いたかった。
一人ぼっちで、ものすごく怖かったこと。
声をかけてもらえて、涙が出るほど安心したこと。
あなたのおかげで心が救われたこと。
全部伝えたかった。
でも、私の拙い英語の引き出しから出てきたのは、たった一言だった。
それが悔しくて、切なかった。
最近はAIの進化がすごい。
スマホ一つあれば、一瞬で高精度な翻訳ができる時代になった。
それでも私は思う。
機械が代わりに話してくれる翻訳と、自分の言葉で相手に届ける感覚は、やっぱり少し違う。
あの時、プラハの空港で私を助けてくれた人の目を見て。
私の声で。
私の温度のままで。
感謝を伝えたかった。
私が「英語を話したい」と思う瞬間。
それはスマートにビジネス会話をしたい時なんかじゃない。
たぶん、大切な人を前にして、自分の感情が大きく動いた瞬間だ。
感謝や安心や、誰かを大事に思う気持ち。
そういうものを、自分の言葉で届けたくなる時なのだと思う。
そして最近、noteの記事は自動で英語翻訳されているらしい。
どのくらいの精度なのか。
どのくらい世界へ届くのか。
正直、よく分からない。
でも、もしも。
もしも偶然、あの時の彼の目に触れることがあったなら。
あの時伝えきれなかった感謝が、少しでも届いたらいいなと思う。
プラハの空港で、不安でいっぱいだった私に声をかけてくれたこと。
タクシーに一緒に乗せてくれたこと。
出身は韓国だからお隣だね!なんて話してくれたこと。
翌朝も気にかけてくれたこと。
あなたのおかげで、私は無事に日本へ帰ることができました。
本当にありがとうございました。
(状況にドキドキしながら、ドラマみたいな恋の始まりがあったりして~とか呑気なことを考えていた私も心の隅にいたのは秘密♪)
