【ショートショート】砂時計~原稿用紙二枚分の文芸賞
秋晴れの空は、何故か哀しい。
早朝のゴミ出しに玄関から出た途端、私の首元には、肌寒い風が巻き付き通り過ぎた。
つむじ風にはまだ早いかな。
道すがら、ひぐらしの鳴き声が聞こえていた。
何気ないいつもの日常・・・あの頃の通学途中の田んぼの畦道が思い出させられ、ふと一抹の寂しさを覚える。
秋は収穫の季節。
収穫の際の、早朝からの長時間の苦役と収穫後のほっとした溜息を付きたくなる喜び。それが交互に思い出されて、切ない気持ちにもなる。
子供の私にはサツマイモの甘さより、チョコレートやキャラメルの強烈な甘さの方がよっぽど嬉しかったのを思い出す。
寒くなると甘い飲み物が欲しくなるのはなぜだろう。ホットチョコレートがいいかな。明日の仕事帰りに買ってかえろうか・・・。
通りの向かい側に通学途中の女子高校生の姿が見えた。今は丁度通学の時間。あの制服は商業高校だろうか。
あの頃の私は、一体何を考えていたのだろう。思い出せないな。
家に帰り、ふと1年前にデートで買った砂時計を思い出す。
たしかクローゼットの上の方だったはず。
あ、あった・・・ カラフルな砂時計。
どれにしようかな・・・。私は、散々迷いアクアマリンにした。
砂時計をひっくり返し、時間をリセットする。あの頃には戻れはしないが、カップ麺の戻す時間には使えそう。
お湯を沸かし、手持ち無沙汰に、本を読みながら、時間が経つのを待つ。
スルスルと落ちる砂時計は、キラキラと光りながら有限の時間を私に告げていた。
気付いたら、どのくらい経っていたのだろうか。砂時計の砂は、とっくにすべて下へと落ちていた。
そうだった。砂時計は目を離してはダメだった。
麺は、少し伸びていたが、まだ食べられそうだった。
デートの時間にはまだ早い。
私はもう一度、砂時計をひっくり返した。
了
(759文字)
原稿用紙二枚分の文芸賞に参加させていただきました。
秋は何となく寂しさを感じます。
暑さも和らぎ過ごしやすくなるのに。食べ物も美味しいのに。
移ろいゆく季節に、わびさびを感じます。
この季節は嫌いじゃない、むしろ好きです。
完成するとそこで止まってしまうから、
未完成なものに希望を託しました(*^_^*)
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